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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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裁きの村、エルムウッド その2

アリアがルーンの家で三日目の夜を過ごしていた頃、村の様子は急速に不穏さを増していた。村中を不気味な咳が満たし、幾人もの村人が高熱で倒れているという噂が、家々の戸口を叩いていた。それは、ルーンがアリアに話してくれた、かつて村を襲った疫病の再来を思わせるものだった。

「ルーン。村の様子が変だ。何か知っているのか?」

アリアが尋ねると、ルーンは怯えた表情で首を振った。

「…ううん。私、何も…」

その日の夕食後、アリアとルーンが暖炉の火を囲んでいると、突然、家の扉が激しく叩かれた。

「ルーン! 開けろ!」

外から聞こえてくるのは、村長の太く威圧的な声だった。アリアは、ルーンを背中に隠すようにして、ゆっくりと扉を開けた。

「何用ですか、村長さん?」

村長の背後には、松明を掲げた村人たちが集まっていた。彼らの顔には、疫病への恐怖と、怒りが入り混じっていた。

「お前だ! お前のせいだ!」

村長は、アリアを指差して叫んだ。

「よそ者が来てから、村に疫病が流行り始めた。これは、神様が我々に与えた、裁きだ!」

アリアは、村長の言葉に冷静に反論する。

「それは、単なる偶然です。疫病の原因が私だという、何の根拠があるのですか?」

「根拠だと? 我々は、お前の正体を知っている。お前は、この村を滅ぼそうと企む、魔女だ!」

村長の言葉に、村人たちは一斉にざわめいた。アリアは、魔女という言葉に、怒りを覚えた。

「私は、魔女ではありません。サンマリノ王国の騎士です!」

「騎士だと? 証拠があるのか?」

村長は、アリアに、そう言って、嘲笑った。

アリアは、腰に下げた剣を見せようとしたが、村長は、アリアの言葉には耳を貸さなかった。

「いいか、皆の者! 疫病の原因は、この魔女だ! この魔女を、裁きの木に吊るすんだ!」

村長は、そう言って、村人たちに、アリアを捕らえるよう命じた。

「待って! 違うの!」

ルーンが、アリアを庇うように、前に出た。

「お姉さんは、魔女じゃない! とっても優しい人よ!」

「黙れ、ルーン! お前は、この魔女に騙されているんだ!」

村長は、ルーンを力ずくで押しのけようとした。その瞬間、ルーンの足元にいたトットが、村長に向かって威嚇するように吠えた。

「な、なんだ、この魔物は!」

村長は、ゴブリンの姿に驚き、目を丸くした。

「ゴブリンだ! 魔女の使い魔だ! やはり、コイツが魔女だった!」

村長は、ルーンを指差して叫んだ。

「トットは、魔物じゃない! 私の…大切な家族なの!」

ルーンは、涙を流しながら叫んだ。しかし、村人たちは、ルーンの言葉には耳を貸さなかった。彼らの目には、恐怖と憎悪が宿っていた。

「魔物を飼っている…! やはり、コイツが、疫病を操る魔女だったのだ!」

村長は、そう言って、ルーンを力ずくで捕らえようとした。

「やめてください!」

アリアは、ルーンを守るために、村長に立ち向かった。

「邪魔をするな、魔女め!」

村長は、アリアを殴りつけようとしたが、アリアは、村長の攻撃を、素早くかわした。そして、アリアは、村人たちに向かって、言った。

「皆さん! 落ち着いてください! ルーンは、魔女ではありません!」

しかし、村人たちは、アリアの言葉には耳を貸さなかった。彼らは、ルーンを捕らえようと、アリアに襲いかかってきた。

「くっ…!」

アリアは、村人たちに囲まれ、必死に抵抗した。しかし、多勢に無勢。アリアは、村人たちに、捕らえられてしまった。

「お姉さん…!」

ルーンは、アリアの名を叫んだ。

「ルーン…! 逃げて…!」

アリアは、ルーンに、そう言って、叫んだ。しかし、ルーンは、アリアのもとを、離れようとしなかった。

「やめて! 彼女は何も悪くない!」

ルーンは、アリアを助けようと、村長に立ち向かった。しかし、村長は、ルーンの言葉を無視し、ルーンを、力ずくで捕らえた。

「トット…! 逃げて…!」

ルーンは、トットに、そう言って、叫んだ。トットは、ルーンの言葉に、悲しそうな顔をした。しかし、トットは、ルーンの言葉に従い、森の中へと、逃げていった。

「さあ、この魔女と、その使い魔を、裁きの木に連れて行け!」

村長は、そう言って、アリアとルーンを、裁きの木へと、連れて行った。

偽りの裁きと隠された真実

裁きの木の下には、既に多くの村人たちが集まっていた。その中には、少年の父親の姿もあった。彼は、縄で木に縛り付けられ、今にも吊るされそうな状態だった。

「お父さん…!」

少年は、父親の名を叫んだ。父親は、少年の無事を喜ぶ一方で、アリアとルーンが捕らえられたことに心を痛めていた。

「どうしてだ…! 彼女たちは何も悪くない!」

「黙れ! お前は掟を破ったんだ! そして、この女たちもだ!」

宿屋の主人が、怒鳴りつけた。

「さあ、この三人全員を、裁きの木に吊るせ!」

村人たちが、アリア、ルーン、そして少年の父親を縄で縛り付けようとした、その時。

「待ってください」

アリアは、静かに言った。

「あなたたちは、この村の掟を守るために、人を吊るしている。しかし、それは本当に、神様の裁きなのでしょうか?」

アリアの言葉に、村人たちは沈黙した。

「裁きの木に吊るされるのは、掟を破った人だけだ。しかし、この掟は、誰が作ったのですか?」

アリアは、村長に問いかけた。村長は、言葉に詰まった。

「…それは…代々、この村に伝わる掟だ」

「では、その掟は、誰が、何のために作ったのですか?」

アリアは、村長を鋭い眼差しで見つめた。村長は、アリアの言葉に、顔を青くした。

「…それは…」

「真実を話してください。さもなければ…」

アリアは、そう言って、村長の背後にある、裁きの木の幹に、そっと手を触れた。すると、木が、淡い光を放ち始めた。

「な、なんだ…!?」

村人たちは、驚きに目を見開いた。

「この木は、記憶の木です。触れた者の記憶を、読み取ることができる」

アリアは、そう言って、村長の方を見た。

「あなたたちが、この木に吊るした人たちは、本当に、掟を破ったのですか? それとも…」

アリアの言葉に、村長は、観念したように、うなだれた。

「…わかった。すべて話そう…」

村長は、アリアたちに、この村に隠された、恐ろしい真実を話した。

この村の掟は、村長が、村の財産を独り占めするために、作ったものだった。村に繁栄をもたらす優秀な職人や、外部と交流を持とうとする者を、「掟を破った」とでっち上げて吊るし、その財産を奪っていたのだ。そして、裁きの木に吊るされた人たちは、皆、冤罪だった。

「…なんて、ひどい…」

アリアは、村長の話を聞き、胸を痛めた。

「そして…裁きの木に吊るされた人たちは、まだ、生きているんですよ…」

裁きの村の真実、そして疫病の謎

アリアは、村長の話を聞き、地下牢に閉じ込められた人たちを救い出すことを決意した。

「村長。地下牢は、どこにありますか?」

アリアが、そう尋ねると、村長は、観念したように、指をさした。

「…この裁きの木の、真下だ…」

村長は、そう言って、アリアたちを、地下牢へと、案内した。

地下牢の扉を開けると、そこには、多くの村人たちが、閉じ込められていた。彼らは、皆、痩せ細り、憔悴しきっていた。その中には、先日、アリアに冷たくあたった宿屋の主人の姿もあった。

「…皆さん…! 大丈夫ですか…!?」

ルーンは、地下牢に閉じ込められた村人たちを見て、涙を流した。

「…ルーン…! なぜ、ここに…!?」

宿屋の主人は、ルーンの姿を見て、驚きに目を見開いた。

「…ごめんなさい…! 私…何も…知らなくて…」

ルーンは、宿屋の主人に、そう言って、深々と頭を下げた。

「…ルーン…! お前は…何も悪くない…!」

宿屋の主人は、ルーンの言葉に、涙を流した。

アリアは、地下牢に閉じ込められた村人たちを、全員、救い出した。彼らは、アリアに、深々と頭を下げた。

「…ありがとう…! あなたのおかげで…私たちは…救われた…」

「…もう…大丈夫です。さあ、皆で…村に戻りましょう」

アリアは、そう言って、村人たちを、村へと、連れて行った。

村に戻ると、村人たちは、アリアに、深々と頭を下げた。

「…本当に…申し訳ありませんでした…! 私たちは…村長の言葉を…鵜呑みにして…あなたを…魔女だと…決めつけて…」

村人たちは、アリアに、そう言って、謝罪した。

「…もう…大丈夫です。それよりも…疫病のことが…心配です。疫病の原因は、一体…」

アリアが、そう言うと、宿屋の主人が、アリアに、にこやかに言った。

「…それは…大丈夫です。疫病の原因は…村長の嘘でした」

アリアは、宿屋の主人の言葉に、驚きに目を見開いた。

「な、なんですって!?」

「はい。実は、村長は、疫病の原因を、隣の村の井戸に、毒を仕込んだ…と、嘘をついていたのです。そして、その毒は、村長が、自分で作ったものでした」

宿屋の主人は、アリアに、そう言って、にこやかに微笑んだ。

「…どういうことですか…?」

アリアが、尋ねると、宿屋の主人は、アリアに、にこやかに耳打ちした。

「実は、村長は、この村の土地を、高値で、売り払おうと企んでいたのです。そのために、疫病を、自作自演し、村人たちを、村から、追い出そうと、企んでいたのです」

アリアは、宿屋の主人の言葉に、絶句した。

「な、なんですって!?」

どんでん返しの結末、そして新たな旅立ち

アリアたちは、村長を捕まえ、そして、村長が、この村の土地を、高値で、売り払おうと企んでいたことを知った。彼らは、村長を、村から、追放することにした。

「…村長を…追放する…?」

アリアが、そう言うと、村人たちは、力強く頷いた。

「はい。もう…二度と…こんなことが…起こらないように…」

村人たちは、そう言って、村長を、村から、追放した。

村長が、村から、追放されると、村人たちは、アリアに、にこやかに言った。

「…アリアさん…! 本当に…ありがとう…! あなたのおかげで…私たちは…救われた…」

「…もう…大丈夫です。これからは…皆で…力を合わせて…この村を…守ってください」

アリアは、そう言って、村人たちに、にこにこと微笑んだ。

その時、ルーンが、アリアに、にこやかに言った。

「…アリアさん…! 本当に…ありがとう…! 私…アリアさんみたいに…強くなりたい…!」

「…ルーン…! きっと…なれるよ…!」

アリアは、そう言って、ルーンの頭を、優しく撫でた。

その時、ルーンの足元から、トットが、姿を現した。

「…トット…! 無事だったんだね…!」

ルーンは、トットを、力強く抱きしめた。

「…ルーン。もう…大丈夫だよ。トットは…魔物じゃない…!」

アリアは、ルーンに、そう言って、にこにこと微笑んだ。

その時、宿屋の主人が、アリアに、にこやかに言った。

「…アリアさん。一つ…お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「はい。なんでしょうか?」

「…あなた…本当に…サンマリノ王国の騎士なんですよね…?」

宿屋の主人は、アリアに、そう言って、にこやかに微笑んだ。アリアは、宿屋の主人の言葉に、少し戸惑った。

「…はい。そうですが…」

「…でしたら…お願いがあります。この村を…守ってくれませんか…? 私は…この村の…真実の…長老です」

宿屋の主人は、アリアに、そう言って、深々と頭を下げた。

アリアは、宿屋の主人の言葉に、驚きに目を見開いた。

「な、なんですって!?」

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