夏編 第六話 第六階層 ― 氷の回廊
1.凍てつく空気
第五階層を抜けると、冷たい空気が頬を刺した。
目の前には白く輝く回廊。
壁も床も氷で覆われ、天井からはつららが垂れ下がっている。
「……寒い」
シルが肩をすくめ、息を白く吐いた。
フェルナは慎重に足を踏み出し、靴底が滑るのを確認する。
「氷の床……下手に走れば転ぶ。冷静に進むしかないわね」
オリビエは外套を直し、低い声で言った。
「ここでは体力を奪われる。長居は危険だ」
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2.氷の罠
一行が進むと、突然床がきしみ、氷が砕けて落とし穴が現れた。
「危ない!」
アリアがルーンを抱き寄せ、寸前で回避する。
下は凍りついた水面で、鋭い氷柱が森のように突き出ていた。
「落ちたら串刺しか……」
シルが顔をしかめる。
フェルナは矢を射ち、通路の強度を確かめながら進んだ。
「矢が貫通する箇所は脆い氷。印をつけておくわ」
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3.氷の魔物
奥から響いたのは、硬質な音。
氷の巨体を持つゴーレムが現れた。
赤い氷晶の目が光り、腕を振り上げる。
「来たか!」
アリアが剣を構える。
シルは滑る床を利用し、勢いよく飛び込み短剣で切り裂く。
「ダブルスラッシュ!」
だが刃は浅く、氷の装甲を砕けない。
オリビエが前に出て、大剣で渾身の一撃を放つ。
「砕けろ!」
氷片が飛び散るも、まだ立ちはだかる。
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4.ルーンの挑戦
ルーンは震える手で杖を掲げた。
「……この子も、仲間になれるかも」
冷気が周囲を包み、氷晶が光を放つ。
ルーンは深く息を吸い込み、声を響かせた。
「——ティム!」
しかし氷のゴーレムは動きを止めず、拳を振り下ろす。
「無理だ、下がれ!」
アリアが叫ぶ。
だが次の瞬間、足元の氷から小さな影が現れた。
氷でできた小獣——雪ウサギのような精霊だ。
「……君が?」
雪ウサギはルーンの前に立ち、ゴーレムの拳を光で逸らした。
その瞬間、ゴーレムの目の赤が淡く青へと変わる。
やがてその巨体は崩れ、氷片となって散った。
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5.新たな仲間
雪ウサギはルーンの腕に飛び込み、温かな光を放った。
「……ありがとう。これからも一緒に」
ルーンは涙ぐみながら抱きしめた。
フェルナは深く頷き、記録帳に記した。
「ティムは単なる術じゃない。君の心そのものね」
シルが笑いながら肩を叩いた。
「ルーン、もう街の誇りだよ!」
アリアは剣を収め、柔らかく言った。
「お前の勇気が道を切り開いた。……よくやったな」
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6.氷の回廊を抜けて
冷気の中を進み、氷の壁を越えると、再び階段が現れた。
下からは、どこか鉄と火の匂いが漂ってくる。
「次は……炎か?」
オリビエが呟く。
アリアは頷き、仲間を振り返った。
「第六階層、突破。だがここからが本番だ」
雪ウサギが小さく鳴き、仲間たちを照らす光を放った。
その温もりは、氷の冷気を和らげるかのようだった。
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(夏編 第六話・了)




