表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

350/666

冬編 第一話 イザベラの家での冬支度

暖かな工房


雪がちらつき始めた晩、アリアたちはイザベラの工房に集まっていた。

窓の外は冷たい風が唸っているが、中は炉の火が赤々と燃え、葡萄酒の香りが漂っている。


「ほらアリアちゃん、こっちに座んなさい!」

イザベラは相変わらずの調子で、アリアの肩をがしっと掴んだ。

「今日は特製の“加熱式酒器”でワインを温めてやるから!」


炉の上に奇妙な器具が乗せられていた。筒から湯気が立ち、葡萄酒の壺をじわじわ温めている。

「爆発しないでしょうね……?」フェルナが眉をひそめる。

「爆発したら面白いでしょ!」イザベラはけろりと笑った。



仲間たちの団らん


バロスはすでに杯を傾け、豪快に笑っている。

「くぅ〜、体に染みる! イザベラ、こりゃ冬の必需品だ!」


マリーヌは笑みを浮かべ、椅子に優雅に腰掛けていた。

「ふふ、アリアったらまだ子供の顔をして飲んでるわね」

「こ、子供じゃありません!」アリアは頬を赤らめて反論するが、杯を持つ手は少しぎこちない。


シルは暖炉のそばで耳を揺らしながらパンをかじり、リマは子どもたちに毛布を掛け直していた。

ヨーデルは「どうして酒を温めると美味しくなるの!?」と質問攻めにし、シャルルは淡々と「香りが立つからだ」と答えて帳面に記録する。



冬の準備の話


オリビエが杯を置き、真剣な声で言った。

「冬は嵐より厳しい。食と火を絶やさぬよう、計画を立てねばならん」


ピピが帳面を抱えて頷く。

「倉庫の備蓄は大丈夫! でも燃料は少し心配だよ!」

「木材は俺が集める!」とマキシが拳を上げ、ハルトも「訓練の合間に運ぶ!」と続いた。


フェルナは窓の外を見て、静かに呟く。

「風が強い……。精霊たちも、冬の試練を告げているのかもしれない」



小さな爆発


その時、イザベラの器具が「ボンッ!」と音を立て、湯気を派手に吹き出した。

「きゃあっ!」子どもたちが驚いて飛び退く。

「大丈夫、大丈夫! ちょっと圧を間違えただけ!」

イザベラは全く動じず、手際よく弁を締め直す。


マリーヌは口元に手を当ててくすくす笑った。

「相変わらず騒がしいわね。でも、この街には必要な賑わいだわ」

アリアは溜息をつきつつも、温まった葡萄酒を口に含んだ。

ほんのり甘く、体の芯まで温まる。



冬の幕開け


外では雪がしんしんと降り積もり、白銀の世界が広がり始めていた。

オリビエが焚き火を見つめ、低く呟く。

「冬は病と飢えと闇をもたらす。だが心を揃えれば、必ず越えられる」


その言葉に皆が頷き、杯を掲げた。

「冬を越えよう。分け合い、支え合って」


焚き火の火がぱちぱちと爆ぜ、工房に笑い声と歌声が広がった。

こうしてアリアンロッドの冬が、温かな団らんの中で幕を開けた。


(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ