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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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深淵への決意、夜明けの海



熊本のホテルでの一夜は、アリアたちの心に深い爪痕を残した。しかし、ネクロマンサーのエリオットが、その力を使い、ホテルの『もののけ』の『うらみ』と『かなしみ』を癒やしたことで、彼らは新たな希望を見出していた。エリオットの成長は、アリアたちにとって、何よりも心強いものだった。

翌朝、天草の港町は、穏やかな朝日に包まれていた。しかし、アリアたちの心は、昨夜、老漁師から聞いた『人魚』の伝説、そして、エリオットが感じ取った、海の底に沈む無数の『たましい』の『くるしみ』で、重く沈んでいた。

「エリオット、本当に、大丈夫なのか?海の底へ行くなんて、危険すぎるわ」

アリアは、心配そうに、エリオットの顔を見つめる。

「大丈夫だよ、アリア。僕には、みんなが、ついているから」

エリオットは、そう言って、アリアに、優しく微笑んだ。彼の目は、昨夜の疲労を隠せないでいたが、その瞳には、強い決意が宿っている。

「俺も行くぜ!エリオット一人に、危険な真似はさせねえ!」

ガレンは、そう言って、拳を握りしめる。

「私も、行くわ。この『もののけ』の正体を、この目で、確かめたい」

ルナは、そう言って、静かに、頷いた。

「私も、行きます!エリオットくんを、一人にはさせません!」

ボリスは、そう言って、エリオットの肩に、手を置いた。

「私も、行くわ。エリオットを、守る」

リリスは、短くそう言った。

レンとミリア、雅彦は、不安そうな表情を浮かべていたが、アリアたちの決意に、何も言えなかった。

「レン、ミリア、雅彦くん。あなたたちは、ここに残って。この海は、危険すぎるわ」

アリアは、そう言って、三人の頭を、優しく撫でた。

「でも……!」

レンが、そう言って、反論しようとしたが、アリアの、強い眼差しに、言葉を失った。

「大丈夫。私たちは、必ず、戻ってくるから」

アリアは、そう言って、三人に、優しく微笑んだ。

その時、老漁師が、漁師小屋から、出てきた。彼は、アリアたちの様子を見て、何かを察したようだった。

「お前たち、海の底へ行くつもりか?」

老人の言葉に、アリアは、静かに、頷いた。

「この海には、昔から、たくさんの『たましい』が、沈んでいる。それは、人魚たちの『うらみ』だけじゃない。嵐で、遭難した漁師たちや、争いで、沈められた『ふね』に乗っていた『ひと』たちの、『たましい』だ」

老人は、そう言って、遠い昔を、懐かしむかのように、目を細めた。

「その『たましい』たちは、ずっと、『くるしみ』続けている。もし、お前たちが、彼らを、『やすらぎ』へと、導くことができるのなら……」

老人は、そう言って、アリアたちに、自分の『ふね』を、貸してくれた。

「この『ふね』は、昔から、この天草の海で、漁をしてきた『ふね』だ。きっと、お前たちを、海の底へと、導いてくれるだろう」

老人の言葉に、アリアたちは、感謝の言葉を述べた。

深淵への航海、忍び寄る恐怖

老漁師の『ふね』に乗り込み、アリアたちは、夜明け前の海へと、出発した。空は、まだ、薄暗く、海は、静かに、波打っている。

「みんな、準備はいいか?」

ガレンが、そう言って、アリアたちに、そう尋ねる。

「ああ」

アリアたちは、そう言って、頷いた。

エリオットは、船の先端に立ち、静かに、目を閉じた。彼の身体から、微かに、黒い靄が立ち上る。それは、彼が、海の『き』を、感じ取ろうとしている証拠だった。

「この海の『き』は、とても、強い……。まるで、無数の『たましい』が、僕を、呼んでいるかのようだ……」

エリオットは、そう言って、苦しそうに、うめき声を上げた。

船は、ゆっくりと、沖へと、進んでいく。陸の明かりが、遠ざかり、周囲は、漆黒の闇に包まれていく。

その時、アリアたちの耳に、微かな、歌声が、聞こえてきた。それは、まるで、誰かが、悲しい歌を、歌っているかのような、不気味な歌声だった。

「な、なんだ、この歌声は……!?」

ボリスが、そう言って、身震いする。

「これは、『人魚』の歌声だわ……。でも、どこか、悲しい歌声ね……」

ルナは、そう言って、静かに、耳を傾ける。

歌声は、徐々に、大きくなっていった。それは、まるで、アリアたちを、海の底へと、誘い込もうとしているかのようだ。

「くそっ……!この歌声は、俺たちの『こころ』を、かき乱そうとしている!」

ガレンは、そう言って、耳を塞いだ。

その時、エリオットが、突然、目を開けた。彼の顔は、真っ青で、その目には、恐怖の色が宿っている。

「アリア……!この歌声は、人魚たちの『うらみ』だけじゃない……!海の底に、沈んだ『たましい』たちの、『くるしみ』の歌声だ……!」

エリオットは、そう言って、震える声で、アリアに、そう告げた。

その時、船の周りの海面が、不気味に、光り始めた。光は、まるで、無数の『たましい』が、海の中から、現れたかのようだ。

「な、なんだ、この光は……!?」

リリスが、そう叫び、弓を構える。

光は、アリアたちを、包み込み、船は、ゆっくりと、海の底へと、沈んでいく。

「うわああああああ!」

アリアたちは、悲鳴を上げ、船の中で、身体を、強く抱きしめ合った。

船は、海の底へと、沈んでいく。周囲は、漆黒の闇に包まれ、何も見えない。ただ、水の音が、アリアたちの耳に、響き渡る。

その時、アリアの視界に、奇妙なものが、映り込んだ。それは、海の底に、無数の、奇妙な影が、蠢いているかのようだ。影は、まるで、生きているかのように、海の底を這い回り、アリアたちに、近づいてくる。

「な、なんだ、あれは……!?」

アリアは、そう呟き、恐怖に、顔を青ざめさせた。

影は、アリアたちの乗っている船に、まとわりつき、船を、蝕んでいく。船は、まるで、生きているかのように、軋み始めた。

「くそっ……!このままじゃ、船が、壊れてしまう!」

ガレンは、そう叫び、戦斧で、影を、叩き壊そうとする。しかし、影は、ガレンの攻撃を、すり抜け、ガレンの身体に、まとわりついた。

「ぐっ……!身体が、動かない……!」

ガレンは、苦しそうに、うめき声を上げる。

その時、エリオットが、ゆっくりと、船の先端へと、歩み出た。彼の顔は、まだ、苦痛に歪んでいたが、その目には、強い意志が宿っている。

「みんな……。僕に、任せて……」

エリオットは、そう言って、静かに、目を閉じた。彼の身体から、黒い靄が、激しく立ち上る。それは、まるで、エリオットの『まほう』が、海の底に、満ちていくかのようだ。

ネクロマンサーの鎮魂歌

エリオットの身体から放たれる黒い靄は、海の底に蠢く無数の影を、ゆっくりと包み込んでいった。それは、まるで、闇が闇を飲み込むかのように、静かに、しかし、確実に、広がっていく。

「エリオット……!」

アリアは、そう呟き、エリオットの姿を、じっと見つめる。彼の顔は、苦痛に歪んでいるが、その表情には、どこか、安堵の色が浮かんでいた。

「これは……!エリオットの『まほう』が、あの『もののけ』に、届いているんだわ!」

ルナは、そう言って、目を輝かせる。

エリオットは、海の底に沈む無数の『たましい』と、対話していた。彼は、彼らの『うらみ』や『かなしみ』、そして、『くるしみ』を、全て、受け止めていた。

「……みんな……。もう、大丈夫だよ……。もう、苦しまなくていいんだ……」

エリオットの声が、海の底に、響き渡る。その声は、まるで、優しい子守唄のように、海の『たましい』たちを、包み込んでいく。

エリオットの言葉に、海の底に蠢いていた影が、ゆっくりと、形を変えていく。それは、まるで、無数の『たましい』が、光となって、空へと、昇っていくかのようだ。

「すごい……!『たましい』たちが、光になって、空へ、昇っていく……!」

レンが、そう言って、目を輝かせる。ミリアも、その光景に、感動したように、涙を流していた。

光は、海の底から、ゆっくりと、海面へと、昇っていく。そして、夜空に輝く、満月へと、吸い込まれていった。

光が消え去ると、海の底は、静寂に包まれた。もう、影は、どこにもない。不気味な歌声も、聞こえない。

エリオットは、ゆっくりと、目を開けた。彼の顔は、疲労困憊で、その場に、へたり込んだ。

「エリオット!大丈夫か!?」

アリアは、そう叫び、エリオットの身体を、強く抱きしめた。

「大丈夫……。みんな……。彼らは、もう、苦しんでいないよ……」

エリオットは、そう言って、アリアに、優しく微笑んだ。

ガレンは、エリオットの頭を、優しく撫でた。

「よくやったな、エリオット。お前は、本当に、すごい『まほうつかい』だぜ」

ガレンの言葉に、エリオットは、照れくさそうに、頭を掻いた。

ボリスは、エリオットの身体に、回復魔法をかけた。エリオットの身体は、少しずつ、回復していく。

リリスは、静かに、エリオットの活躍を、見守っていた。彼女の目には、エリオットへの、尊敬の念が、宿っているようだった。

ルナは、エリオットの『まほう』の力に、改めて、驚きを隠せないようだった。

「エリオット……。あなたの『まほう』は、私たちの世界の『まほう』とは、全く違うわ……。本当に、素晴らしいわ……」

ルナは、そう言って、エリオットに、優しく微笑んだ。

こうして、アリアと仲間たちは、天草の海に潜む『もののけ』を、完全に、鎮めることができた。彼らは、再び、老漁師の『ふね』に乗り込み、陸へと、戻っていった。

天草の海での、深く、そして、心震える体験を終えたアリアたち。彼らの旅は、この日本という異世界で、さらに、新たな意味を帯びていく。次回、彼らは、九州での旅を続け、一体、どんな場所へ向かい、どんな出会いを経験するのだろうか。


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