次なる港へ
熊本の阿蘇山で、悲しき剣士の『もののけ』を鎮めたアリアと仲間たち。彼らの旅は、単なる観光ではなく、この国の歴史と、人々の心に深く触れるものへと変わっていった。
阿蘇の雄大な自然と、悲しい伝説に触れたアリアたちは、再びミサキさんの車に乗り、次なる目的地へと向かっていた。窓の外には、広大な田園風景が広がり、遠くには、海が見える。
「次は、熊本の西側にある、港町へと向かいます」
ミサキさんの言葉に、アリアたちは、期待に胸を膨らませた。レンとミリアは、初めて見る海に、興奮を隠せない。
「海だ!海だ!」
レンが、窓の外を指差して叫ぶ。ミリアも、笑顔で、レンの手を握りしめている。
ガレンは、海の広大さに、目を丸くしていた。故郷の海も広いが、この国の海は、また違う、雄大な美しさがあった。
「おい、アリア。この海は、故郷の海とは、また違う、不思議な色をしているな」
ガレンの言葉に、アリアは、頷く。この国の海は、どこまでも青く、そして、どこまでも、穏やかだった。
エリオットは、窓の外を流れる景色を見て、静かに呟く。
「この土地には、もう、『もののけ』はいないようだね……。良かった……」
エリオットの言葉に、アリアは、優しく微笑んだ。
車は、やがて、小さな港町へとたどり着いた。そこは、古い石畳の道が続き、異国風の建物が立ち並ぶ、美しい街だった。
「ここは、『天草』という場所です。この場所には、昔、キリスト教が、伝わったとされています」
ミサキさんの言葉に、アリアたちは、驚きに目を見開く。
「キリスト教……?それは、私たちの故郷の『しんこう』に、似ているわ」
ルナは、そう言って、街の中に建つ、小さな教会のような建物を、じっと見つめた。
教会の中に入ると、そこは、静かで、厳かな空気に満ちていた。ステンドグラスから差し込む光が、床に、美しい模様を描いている。
「ここは、昔、『隠れキリシタン』と呼ばれた人々が、密かに『しんこう』を守っていた場所です」
ミサキさんの言葉に、アリアたちは、再び、この国の歴史の、奥深さに触れることになった。
その日の夕方、アリアたちは、ミサキさんの案内で、海辺へと向かった。そこには、小さな漁師小屋があり、中には、一人の老人が、網の手入れをしていた。
「お爺ちゃん!ただいま!」
ミサキさんが、そう言って、老人に駆け寄る。老人は、ミサキさんを見て、優しく微笑んだ。
「おぉ、ミサキ。無事に戻ってきたか。そちらの若い衆は……?」
老人の言葉に、ミサキさんは、アリアたちを、老人に、紹介した。
「この方たちは、旅の途中、私の案内で、天草に来てくださった方たちです」
ミサキさんの言葉に、アリアたちは、老人に、頭を下げた。
「アリアと申します。お邪魔いたします」
老人は、アリアたちを見て、優しく微笑んだ。
「ほう。異国の若者たちか。どうぞ、ゆっくりしていってくれ」
老人は、そう言って、アリアたちを、漁師小屋の中へと招き入れた。
小屋の中には、たくさんの魚が干されており、美味しそうな匂いが、漂っている。
「爺ちゃんは、昔から、漁師をやっていてね。昔は、この天草の海には、『人魚』がいた、と、言われていたんだ」
ミサキさんの言葉に、レンとミリアは、目を輝かせる。
「『人魚』!?」
「ああ。それは、人々の『しんこう』を、守るために、海から現れた、海の『かみさま』だった、と……」
老人は、そう言って、遠い昔を、懐かしむかのように、目を細めた。
「『人魚』……。この国には、本当に、不思議な『いきもの』がたくさんいるのですね」
ルナは、そう言って、静かに、老人の言葉に、耳を傾けた。
こうして、アリアたちは、天草という、美しい港町で、新たな出会いを果たした。
人々の信仰と、海の伝説が交錯する天草の地で、アリアたちは、何を見つけ、何を感じるのだろうか。そして、老人が語る『人魚』の伝説には、一体、どのような秘密が隠されているのだろうか。




