老戦友との再会、そして解き明かされる謎
集いし希望、そして勇者の真実
東の国エトヴェズスで、ようやく伝説の薬のレシピを手に入れたアリアたち。しかし、その薬を作るためには、珍しい材料が必要で、彼女たちの旅はまだ終わらない。そんなアリアたちに、老騎士オリビエは、かつての仲間たちへの協力を呼びかける。
アリアは、旅の途中で、オリビエが語る悲しい過去と、裏切りの弟子ワーテルとの関係を知る。そして、次に訪れた天才魔術師シャルルとの出会いは、アリア自身の出生と、彼女の旅路の真の意味を明らかにしていく。
これは、過去の傷を癒やし、新たな仲間たちと紡ぐ希望の物語。そして、一人の少女が「勇者」としての宿命を受け入れるまでの物語である。
イザベラの家で、今後の計画を話し合ったアリアたち。
オリビエが、昔の仲間たちに協力を求めてくれることになった。
まず、アリアたちが訪ねたのは、街の中心部にある、古びた書斎に住む、魔術師のシャルルだった。
シャルルは、オリビエの戦友で、かつて、オリビエたちと一緒に、この国の闇と戦っていたという。
「…オリビエさん…シャルルさんって…どんな人なんですか?」
アリアが尋ねると、オリビエは、にこにこと微笑んだ。
「…シャルルは…天才的な魔術師だ。しかし…少し変わっている。いつも…難しい本を読んで、ぶつぶつ言っている…」
オリビエの言葉に、アリアたちは、顔を見合わせた。
イザベラの家から、シャルルの家までは、少し距離があった。
アリアたちは、道中、オリビエから、彼の過去の話を聞いた。
オリビエ、シャルル、そして、ルラ、マリーヌ、ヨハネスの五人は、かつて、この国の希望だった。
邪悪な神が、この国を支配する前、彼らは、人々のために、戦っていた。
しかし、邪悪な神の力が強大になり、彼らは、散り散りになってしまったという。
「…私たちは…負けた…」
オリビエは、悲しそうな顔で、そう言った。
アリアは、オリビエの言葉に、心が痛んだ。
そして、ついに、シャルルの家へとたどり着いた。
家は、たくさんの本で埋め尽くされており、床には、魔法陣が描かれている。
奥から、鼻歌を歌いながら、一人の男が、出てきた。
男は、ハゲており、鷲鼻で、メガネをかけている。
彼の顔には、たくさんのシミがあり、年は、オリビエと同じくらいだろうか。
「…うひょー! シャルル! 久しぶりだぁ!」
イザベラが、シャルルに、抱きついた。
シャルルは、イザベラの抱擁に、戸惑いながらも、嬉しそうな顔をした。
「…イザベラか…相変わらず…うるさいな…」
シャルルは、オリビエの姿を見ると、目を丸くした。
「…オリビエ…! 生きていたのか…!?」
「…ああ…シャルル。久しぶりだな…」
オリビエとシャルルは、固い握手を交わした。
アリアは、その光景に、胸が熱くなった。
アリアは、シャルルに、自分たちの目的を話した。
シャルルは、アリアの話を、黙って聞いていた。
話が終わると、シャルルは、アリアをじっと見つめ、こう言った。
「…君は…勇者だ。その瞳に…強い意志を感じる…」
シャルルの言葉に、アリアは、驚きを隠せない。
なぜ、この人も、自分のことを、勇者だと呼ぶのだろうか。
「…私は…ただの騎士です…」
「…ふむ…そうか…」
シャルルは、アリアの言葉に、にこにこと微笑んだ。
そして、シャルルは、協力を約束してくれた。
「…わかった。君たちに…協力しよう。そして…他の仲間たちにも…連絡しておこう」
シャルルの言葉に、アリアたちは、安堵の表情を浮かべた。
シャルルは、ルラ、マリーヌ、ヨハネスにも、連絡をしてくれた。
ルラは、この国の、情報屋。
マリーヌは、この国の、商人。
ヨハネスは、この国の、元兵士。
彼らもまた、アリアたちの旅に、協力してくれるという。
アリアは、心の中で、感謝の気持ちでいっぱいになった。
自分は、一人ではない。たくさんの仲間が、自分を支えてくれている。
帰り道、アリアたちは、イザベラの家へと、向かっていた。
その時、アリアたちの前に、何人かの男たちが、姿を現した。
男たちは、ワーテルの仲間たちだ。
「…ははは! 騎士団長の娘さんよ…! 逃げられるとでも…思ったのか!?」
男たちは、そう叫び、アリアたちに、襲いかかった。
アリアは、オリビエから借りた剣を構え、男たちに立ち向かった。
しかし、男たちの数は、多い。
アリアは、男たちの攻撃を、必死にいなした。
その時、アリアの背後から、イザベラの奇声が、聞こえてきた。
「…うひょー! 私の…最高の実験台だぁ!」
イザベラは、そう叫び、男たちに、フラスコに入った、液体を投げつけた。
液体は、男たちにかかり、煙を上げた。
男たちは、煙に巻かれ、苦しそうな声を上げた。
「…な…なんだ…!? この液体は…!?」
「…ふん…これは…私が作った…最高の爆弾だ! うひょー!」
イザベラは、そう叫び、次のフラスコを、男たちに、投げつけた。
その時、アリアの頭上から、炎の玉が、男たちに、降り注いだ。
「…ファイアーボール!」
シャルルは、そう叫び、男たちに、魔法を放った。
男たちは、イザベラの液体と、シャルルの魔法に、次々と倒れていった。
アリアは、その光景に、驚きを隠せない。
イザベラとシャルルは、アリアたちのために、戦ってくれたのだ。
「…ありがとう…イザベラさん…シャルルさん…!」
「…うひょー! 気にするな! これくらい…朝飯前だ!」
「…ふむ…」
イザベラは、そう言って、にこにこと微笑んだ。
シャルルは、静かに頷いた。
男たちを撃退した後、アリアは、シャルルに、尋ねた。
「…シャルルさん。どうして…私のことを…勇者だと…?」
シャルルは、アリアの問いに、メガネの位置を、直した。
「…それは…君が持っている…剣の力だ」
シャルルの言葉に、アリアは、首を傾げた。
「…この剣は…オリビエさんの…」
「…いや…そうではない。君が持っている剣は…君の心と、呼応する。君の心が…清らかであればあるほど…その力は…増幅される」
シャルルの言葉に、アリアは、驚きを隠せない。
それは…海の女神イケが、聖剣を授けてくれた時に言っていた言葉だ。
「…君の心の中には…この国の闇を…晴らすための…光がある。だから…君は…勇者なのだ」
シャルルの言葉に、アリアは、涙を流した。
「…では…ワーテルも…そのことを…知っていたのですね…?」
「…ああ…そうだろう。ワーテルも…かつて…君と同じ…勇者だった…」
シャルルの言葉に、アリアは、目を丸くした。
ワーテルが…勇者…?
「…どうして…彼が…邪悪な神に…」
アリアの問いに、シャルルは、悲しそうな顔をした。
「…彼は…自分の力を…過信しすぎた。そして…邪悪な神の誘惑に…負けてしまった…」
シャルルの言葉に、アリアは、心が痛んだ。
アリアは、ワーテルのことを、憎むことはできなかった。
ワーテルもまた、かつては、この国の未来を、夢見ていたのだ。
しかし…その心は…闇に染まってしまった。
アリアは、自分の心の中にある、強い決意を、再確認した。
自分は…ワーテルのようにはならない。
自分は…みんなを、守る。そして…この国の闇を、晴らしてみせる。
アリアの旅は、東の国で、新たな真実を知り、さらに加速していくのだった。
集いし希望と、過去の影
廃墟の街エトヴェズスで、アリアは、老騎士オリビエ、そして天才魔術師シャルルという、かつてこの国で光を放っていた英雄たちと出会い、彼らの過去を知ることになりました。
そして、シャルルの口から語られた「勇者」の真実。それは、海の底で女神から聞いた言葉と重なり、アリア自身の使命をより明確なものにしました。しかし、同時に、彼女を襲ったワーテルもまた、かつては「勇者」だったという衝撃的な事実が明らかになります。
英雄から闇に堕ちたワーテルの悲しい過去は、アリアに、力を持つことの危険性と、心のあり方の重要性を深く考えさせました。そして、それは彼女の決意を、より一層強固なものにしたのです。
情報屋、商人、元兵士。これからアリアたちの旅に加わる新たな仲間たち。彼らの力が合わさった時、失われたこの国に、再び光を灯すことができるのでしょうか。
アリアの物語は、未来へと語り継がれていくでしょう。




