九州へ、海を渡る旅
佐々木さんが手配してくれた日本一周の旅は、驚きの連続だった。新幹線という名の鉄の竜は、一瞬にして広大な大地を駆け抜け、アリアたちを遥か遠くの場所へと連れて行ってくれた。レンとミリアは窓の外を流れる景色に興奮しっぱなしで、ガレンは「俺の足よりも速いとは…」と唸り、ルナは「これは、風の魔法の一種かしら?」と真剣に考察していた。雅彦くんは、みんなのそんな様子を、心から楽しそうに眺めている。
新幹線を降りたアリアたちは、佐々木さんの案内で、また別の乗り物へと乗り換えることになった。それは、まるで街がそのまま海に浮かんでいるかのような、巨大な船だった。
「これは、『フェリー』という乗り物です。これで、九州という島へ渡ります」
佐々木さんの説明に、アリアたちは、その巨大な姿に圧倒される。船は、これまでの旅で見てきたどの乗り物よりも大きく、そして、重厚な雰囲気を纏っていた。
「な、なんだ、この船は……!まるで、移動する街のようだ!」
ガレンは、驚きに目を見開く。故郷の船とは比べ物にならない大きさと、その造りの精巧さに、ただただ圧倒されていた。
「これなら、多少の嵐でも、沈まないだろう」
ボリスが、静かに呟く。彼は航海士だった経験から、この船の構造が、いかに優れているかを理解していた。
「見て、アリア!海が、あんなに広いよ!」
レンが、興奮して、甲板から海を指差す。見渡す限りの青い海が、太陽の光を反射して、キラキラと輝いている。ミリアは、その景色に心を奪われ、言葉を失っていた。
船の中に入ると、そこはまるで、豪華な宮殿のようだった。広々としたロビー、たくさんの部屋、そして、食事をする場所まである。
「これは……!私たちの世界の、船とは、全く違うわ……」
ルナは、その豪華さに、驚きの声を上げる。
「これは、魔法の力なのかしら……?こんなに大きな船を動かすなんて……」
リリスは、その船の構造を、注意深く観察していた。
佐々木さんは、アリアたちを、船内のレストランへと案内してくれた。そこには、美味しそうな料理が、ずらりと並んでいる。
「九州へは、夜通し、このフェリーで移動します。夕食は、こちらでどうぞ」
佐々木さんの言葉に、アリアたちは、目を輝かせた。レンは、もうすでに、ラーメンやお寿司を探している。雅彦くんも、みんなと一緒に、初めてのフェリーでの食事を、心待ちにしているようだった。
夕食後、アリアたちは、再び甲板へと出た。夜空には、満天の星が輝き、船は、静かに、海の上を進んでいく。遠くに、陸の光が、宝石のように、キラキラと光っている。
「アリア、見て。まるで、星が、海に降り注いでいるみたいだ」
ルナが、そう言って、アリアの腕を掴んだ。
「本当に……。この国の夜は、不思議な光に満ちているわね……」
アリアは、そう呟き、故郷の星空を、思い出した。
故郷を離れ、この日本という異世界に迷い込んでから、三ヶ月。アリアたちは、たくさんの驚きと、感動を経験してきた。そして、このフェリーでの旅も、彼らにとって、忘れられない思い出の一つになるだろう。
日本一周の旅は、まだ始まったばかり。九州という新たな土地で、アリアたちを待つのは、一体、どんな出会いと、どんな冒険なのだろうか。




