洋一が帰ってきた!
玄関の引き戸がガラッと開き、力強い足音が土間に響いた。
「ただいま」
低い声に、居間でくつろいでいた愛菜がぱっと顔を上げた。
「お父さん!」
「洋一!」
おばあちゃんも笑顔で声をかける。
アリアたちは一斉に振り返った。
そこに立っていたのは、背筋の伸びた男。東京から彼女たちを車でここまで連れてきた、警察官・洋一だった。
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■ 久々の再会
洋一は靴を脱ぎ、居間に入ってきてアリアたちをじろりと見回した。
警官らしい厳しい目つきだが、その奥にほっとした色が見える。
「……お前ら、元気にしてたか?」
言葉は通じない。
それでも声音に込められた意味は十分伝わった。
アリアは胸に手を当てて深く礼をし、ルナは静かに頷く。
レンはにかっと笑い、ガレンは「戦士の眼光……!」と呟き、ボリスは「飲めそうな顔だな」とぼやいて愛菜に小突かれた。
洋一は口の端をわずかに上げ、椅子に腰を下ろした。
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■ 外食の提案
麦茶を一口飲んだ後、洋一がふいに切り出す。
「せっかくだ。今夜はみんなでメシでも行くか?」
「えっ!? 外食!?」
愛菜が目を丸くした。
「お父さん、うちのお金大丈夫なの!? ほら、人数だって……」
「たまにはいいだろ」
洋一は腕を組んでそっけなく言う。
おばあちゃんがすぐに口を挟んだ。
「わしは寿司やちゃ。魚が旨いんやから」
「私は焼肉ー! 肉食べたい!」
愛菜が元気に手を挙げる。
「いや、中華屋だな。あそこのラーメンは絶品や」
洋一がきっぱり告げると、家の空気は一気にわいわいし始めた。
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■ アリアたちの反応
話が分からず、アリアたちは首を傾げ合う。
だが、メニューの名前を聞いているうちに、それぞれの胸に火が灯った。
「らーめん……?」
レンが洋一の口の動きをまねて呟き、瞳をきらきらさせる。
「黒い麺!? すごい! 絶対食べてみたい!」
すでに夢中だ。
――ここからレンが“ラーメンマニア”になっていく第一歩だった。
ミリアはおばあちゃんの「寿司やちゃ」という言葉に目を丸くする。
「すし……魚をそのまま……神秘的……。でも今日は違うのね……。なら、いつか必ず食べたい……」
静かな声に未来への伏線が宿る。
ルナは「ブラック……闇の麺……禁呪かも」と真顔。
ガレンは「肉も魚も両方食う!」と収拾不能。
ボリスは「酒が呑めりゃどこでも!」と即答し、リリスは「食の文化も学ぶべき」と冷静にまとめる。
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■ 決断のとき
全員が勝手に盛り上がるのを、洋一はしばらく黙って眺めていた。
そして大きく息を吐き、腕を組み直す。
「……よし。今夜は中華屋に行くぞ」
「えー! 焼肉!」
愛菜が即座に抗議する。
「お寿司は……」とおばあちゃんも控えめに言うが、洋一は笑って手を振った。
「寿司はまた今度の楽しみにとっとけ。焼肉もだ」
「はぁ!? お父さん、強権発動だ!」
愛菜が頭を抱え、アリアたちは状況が分からぬままに楽しげに顔を見合わせる。
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■ 締め
レンは「やったぁ! ラーメン!」と飛び跳ねる。
ミリアは小声で「……必ず、次に寿司を」と未来に願いを込める。
アリアはその光景を眺めながら思った。
「食べ物をめぐる争いも、こうして笑っていられるなら……平和な戦いね」
その夜、彼らは揃って町の中華屋へと出かけることになった。
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◆あとがきメモ
•「洋一が帰ってきた!」で家の空気がガラッと変わる導入。
•外食提案 → 家族+異世界組のワイワイ議論。
•レン=ラーメン派(マニア化伏線)、ミリア=寿司派(次回伏線)。
•最後は洋一がまとめて「今夜は中華屋」決定 → 次回へ続く。




