田舎の日常と新たな発見
日本の田舎に迷い込んでから、およそ2か月。アリアと仲間たちは、すっかりこの土地の生活に馴染んでいた。言葉はまだ片言だが、身振り手振りや表情で意思を伝え、おばあちゃん(ここまで車で連れて来てくれた警察官の母親)とそのお孫さんとの間に、温かい絆が生まれていた。
毎日、アリアはボリスとレン、ミリアを連れて、スーパーマーケットという名の巨大な食料庫へ買い物に行く。
「アリア、見て!この『おかし』っていうのは、色々な種類があるんだね!」
レンが、お菓子売り場で、目を輝かせている。
「本当だね、レン。この『ポテトチップス』っていうのは、じゃがいもでできているらしいよ!」
ミリアも、ポテトチップスという名の奇妙な食べ物を手に取り、驚きの声を上げる。
アリアは、そんな二人を優しく見守りながら、今日の夕食の材料を探していた。この一か月で、彼女は、この世界の食べ物の美味しさに、すっかり魅了されていた。特に、おばあちゃんが作る、魚を焼いたものや、温かいスープは、故郷の味を思い出させ、彼女の心を癒やしてくれた。
一方、ガレンとリリスは、おばあちゃんの畑仕事を手伝っていた。ガレンは、巨大な戦斧を、農作業の道具に持ち替え、力仕事に励む。
「おい、ガレン!そんなに力を入れなくても、大丈夫だよ!」
おばあちゃんは、ガレンの豪快な農作業を見て、そう言って、笑う。
「へへ。すみません、おばあちゃん。つい、力が入っちまって……」
ガレンは、照れくさそうに、頭を掻く。
リリスは、持ち前の鋭い眼力で、畑に生えている雑草を、次々と、抜き取っていく。その手つきは、まるで、弓矢を放つかのように、正確で、素早かった。
ルナとエリオットは、お孫さんと一緒に、家の中で、テレビという名の魔法の箱を見ていた。
「すごい……!この箱の中では、色々なことが、起こっているわね……」
ルナは、テレビに映し出される、奇妙な映像を見て、驚きの声を上げる。
「うん!この『アニメ』っていうのは、すごく面白いんだよ!」
お孫さんは、ルナに、そう言って、笑顔を見せる。
エリオットは、テレビに映し出される、魔法のような映像に、目を奪われていた。
「やはりいつ見ても素晴らしい……。こんな魔法、僕たちの世界には、ない……」
エリオットは、そう呟き、テレビを、じっと見つめる。
そんなある日、おばあちゃんが、アリアたちに、こう話しかけた。
「もうすぐ、『お盆休み』っていう日だよ。みんなで、お墓参りに行こうか.…あんた達をここまで連れて来てくれた洋一も休暇で帰って来るし…」
「お墓参り……?それは、一体、何ですか?」
アリアは、おばあちゃんに、そう尋ねる。
「それはね、亡くなった、家族や、先祖に、会いに行くことだよ」
おばあちゃんは、そう言って、少しだけ、悲しそうな表情を浮かべた。
おばあちゃんの言葉を聞き、アリアは、故郷にいる、自分の両親や、仲間たちのことを、思い出した。彼女の心に、故郷への、切ない思いが、込み上げてくる。
- 寺での対話 -
お盆休みの日、アリアたちは、おばあちゃん、洋一、お孫さんと一緒に、お寺へと向かった。お寺は、山の中腹にあり、石段を登っていくと、古い木造の建物が見えてきた。
「すごい……。この建物からは、強い魔力を感じる……」
ルナは、そう言って、お寺の建物を見つめる。
「これは、私たちの世界にある、神殿と、似ているわね……」
リリスは、静かにそう呟いた。
お寺の本堂に入ると、おばあちゃんが、住職という、お坊さんに、アリアたちを紹介した。
「住職さん、この子たち、日本語が少しだけ理解出来ます。遠いところから来た子たちなんです」
おばあちゃんは、そう言って、アリアたちを、住職に、そう紹介した。
住職は、アリアたちの顔を、一人ひとり、じっと見つめ、静かに、こう話しかけた。
「おや、…お前たち……。お前たちは、どこから来たのだ?」
住職の言葉は、アリアたちには、理解できなかった。しかし、彼の、深く、優しい眼差しに、アリアは、何か、心を揺さぶられるものを感じた。
その時、洋一が、アリアたちの代わりに、住職に、こう話しかけた。
「住職さん、この子たち、最近、この村に、やって来たばかりなんです。言葉も、まだ、通じないみたいで……」
おば職は、おばあちゃんの言葉に、静かに頷き、アリアたちに、こう話しかけた。
「言葉は、通じなくても、心は、通じ合う。それが、一番、大切なことだ」
住職の言葉は、アリアたちには、理解できなかった。しかし、その言葉に込められた、深い意味は、アリアの心に、強く響いた。
その後、住職は、お盆という、この世界の風習について、アリアたちに、話してくれた。
「お盆とは、亡くなった人たちが、この世界に、帰ってくる期間だ。私たちは、お墓参りをして、彼らを、迎え入れる。そして、彼らが、安心して、天国に帰れるように、お見送りをする」
住職の言葉は、おばあちゃんが、アリアたちに、わかりやすく通訳してくれた。
住職の話を聞き、アリアは、故郷にいる、両親や、仲間たちのことを、思い出した。彼女の心に、故郷への、切ない思いが、込み上げてくる。
その時、アリアは、住職に、こう話しかけた。
「住職さん。私たちは、この世界に、迷い込んでしまいました。私たちは、どうすれば、元の世界に、帰れるのでしょうか?」
アリアの言葉は、おばあちゃんが、住職に、通訳してくれた。
住職は、アリアの言葉に、静かに頷き、こう話しかけた。
「元の世界に、帰る方法は、私にも、分からない。しかし、大切なことは、今を、生きることだ。過去を悔やんだり、未来を案じたりするのではなく、今を、精一杯、生きることが、一番、大切なことだ」
住職の言葉に、アリアは、何も答えることができなかった。彼女の心には、故郷への、強い思いと、この世界で、生きることへの、不安が、渦巻いていた。
「私は……。故郷にいる、両親や、仲間たちのことを、忘れてしまうのでしょうか……?」
アリアは、そう言って、涙を流した。
住職は、アリアの頭を、優しく撫で、こう話しかけた。
「人は、忘れることはない。心の中に、いつまでも、大切な思い出は、残っている。忘れることを、恐れるな。ただ、今を、生きろ。それが、お前が、すべきことだ」
住職の言葉に、アリアは、何も答えることができなかった。しかし、彼女の心に、住職の言葉は、深く刻まれた。
その夜、アリアは、一人、お寺の境内を、歩いていた。空には、満天の星が輝き、故郷の空と、少しだけ、似ているように、感じられた。
アリアは、空を見上げながら、故郷にいる、両親や、仲間たちのことを、思い出す。そして、住職の言葉を、思い返す。
「今を、生きる……」
アリアは、そう呟き、故郷への、切ない思いと、この世界で、生きる覚悟を、胸に刻んだ。
この続きは、次回の物語で描かせていただきます。




