老騎士オリビエとの出会い、そして図書館の戦い
老騎士との出会い
廃墟の街エトヴェズスにたどり着いたアリアと子供たち。剣もお金もない絶望的な状況の中、アリアは「騎士」としての使命を胸に、困難に立ち向かうことを決意する。
そんな彼女たちの前に現れたのは、かつてこの国の英雄だった老騎士オリビエ。
はぐれ者だった子供たちと、騎士としての誇りを失いかけていた老騎士の出会いは、失われた光を再び取り戻す、新たな物語の始まりだった。
この物語は、過去を乗り越え、未来へと歩み出す者たちの小さな冒険譚である。
エトヴェズスの街から抜け出したアリアたちは、まず安全な場所を探すことにした。瓦礫の山を避けながら、アリアたちは、街の奥へと進んでいった。
そして、今後のことを話し合う中で、リマから、この街の片隅に、老騎士オリビエという人物が、一人で住んでいることを教えてもらった。老騎士オリビエは、かつて、この国で一番の騎士だったという。しかし、邪悪な神が、この国を支配するようになってから、姿を消してしまった。
「…その老騎士に…会ってみましょう! きっと…助けてくれるはず!」
アリアの言葉に、みんなは頷いた。
そして、アリアたちは、老騎士オリビエに会うために、早朝、街の片隅へと向かうことにした。
早朝、まだ空が鉛色に染まり、街全体が深い眠りについている時間帯、アリアたちは、オリビエの家へとたどり着いた。家は、他の廃墟とは違い、かろうじて原型を留めており、手入れが行き届いていることが伺えた。アリアは、勇気を出して、扉を叩いた。
「…どなたかね…」
扉の向こうから、かすれた声が聞こえてきた。
アリアは、深呼吸をして、答えた。
「…旅の者です。どうか…お話を聞いていただけませんか…?」
扉が、ゆっくりと開かれた。
そこに立っていたのは、背筋を伸ばし、威厳のある雰囲気を漂わせた、一人の老人だった。
老人は、アリアたちを一瞥し、眉をひそめた。
「…旅の者…? こんな時間に、一体…何用だ…」
アリアは、老人の言葉に、臆することなく、こう言った。
「…私たちは…あなたに、協力をお願いしに、来ました」
アリアの言葉に、老人は、驚きを隠せない。
そして、アリアは、これまでの経緯と、自分たちの目的を、正直に話した。
老人は、アリアの話を、黙って聞いていた。
話が終わると、老人は、アリアをじっと見つめ、こう言った。
「…私は、オリビエだ。騎士を名乗るなら、その証を見せてみろ」
アリアは、自分の身分を証明するものが、何もないことに、焦りを感じた。
しかし、アリアは、諦めなかった。
「…私には、証明するものはありません。しかし…私の剣は…」
アリアは、自分の剣がないことを、思い出した。
「…くっ…」
アリアは、悔しさに顔を歪めた。
その時、ヨーデルが、アリアに、声をかけた。
「…オリビエさん! アリアさんは、本当に騎士なんだ! 俺たち…アリアさんに、助けられたんだ!」
ヨーデルの言葉に、リマ、マキシ、カテリーナも、力強く頷いた。
オリビエは、子供たちの言葉に、静かに微笑んだ。
「…わかった。どうやら…本物のようだ…」
オリビエは、アリアたちを、家の中へと招き入れた。
オリビエの家は、質素だが、とても清潔だった。
オリビエは、アリアたちに、温かいスープを振る舞ってくれた。
アリアたちは、久しぶりの温かい食事に、感動した。
食事が終わると、アリアたちは、オリビエに、今後の計画を話した。
「…まず、ワーテルたちから、剣と、お金を、取り戻したいんです。そして…図書館に、隠されている…伝説の薬の本を…」
アリアの言葉に、オリビエは、険しい顔をした。
「…ワーテルか…奴らは…狡猾で、強い。それに…ボスは…もっと強い…」
オリビエの言葉に、アリアは、眉をひそめた。
その時、オリビエは、アリアに、一つの剣を差し出した。
「…これは…私が、昔、使っていた剣だ。君の剣には及ばないが…これがあれば、戦えるだろう」
アリアは、オリビエの言葉に、涙を流した。
「…オリビエさん…ありがとうございます…!」
アリアは、オリビエから剣を受け取った。
それは、古く、使い込まれた剣だったが、オリビエの騎士としての魂が、宿っているかのように、アリアの手に、馴染んだ。
作戦会議は、綿密に行われた。
アリアは、オリビエから聞いた、ワーテルたちの弱点や、図書館の構造を、頭に叩き込んだ。
そして、アリアたちは、オリビエの家を、後にした。
図書館は、街の中心にあった。
図書館の入り口には、ワーテルたちが、見張りをしている。
アリアは、マキシが教えてくれた、裏口から、図書館の中へと、忍び込んだ。
図書館の中は、静かで、カビ臭い匂いが、充満していた。
アリアたちは、リマが教えてくれた、本が隠されている場所へと、向かった。
しかし、その時、アリアたちの前に、ワーテルが、姿を現した。
「…ははは! 騎士団長の娘さんよ…! まさか、こんなところに、いるとはな!」
ワーテルの言葉に、アリアは、驚きを隠せない。
なぜ、ワーテルが、自分たちのことを知っているのだ?
「…どうして…私のことを…」
アリアの問いに、ワーテルは、嘲笑った。
「…そりゃあ…ボスが…教えてくれたからさ! お前は…騎士団長の娘で…勇者なんだと…!」
ワーテルの言葉に、アリアは、目を丸くした。
勇者…その言葉は、アリアの心に、強く響いた。
そして、ワーテルは、アリアの持っている剣に、目をやった。
「…なんだ…その剣は…? 俺が奪った剣じゃないな…」
ワーテルは、そう言って、アリアに向かって、剣を構えた。
「…さあ、遊んでやろうぜ! 騎士団長の娘さんよ!」
ワーテルは、そう叫び、アリアに、襲いかかった。
アリアは、オリビエから借りた剣を構え、ワーテルに立ち向かった。
ワーテルの剣は、アリアの剣よりも、重く、速い。
アリアは、ワーテルの攻撃を、必死にいなした。
その時、アリアは、ワーテルの動きに、違和感を感じた。
ワーテルは、時折、アリアの剣の動きに、戸惑っているようだ。
「…そうだ…! この剣は…オリビエさんの剣だ!」
アリアは、オリビエから聞いた、ワーテルの弱点を思い出した。
ワーテルは、オリビエの剣の型を、恐れている。
オリビエは、かつて、ワーテルの師匠だった。
しかし、ワーテルは、オリビエを裏切り、邪悪な神の下へと、ついてしまった。
アリアは、オリビエの剣の型を、真似て、ワーテルに、剣を振るった。
ワーテルは、アリアの剣の動きに、恐怖に顔を引きつらせた。
「…な…なんだ…!? その剣は…!?」
ワーテルは、アリアの剣の動きに、完全に、動きを止めてしまった。
アリアは、その隙を見逃さず、ワーテルの腹部に、剣を突き刺した。
ワーテルは、悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。
「…やった…!」
アリアは、安堵の表情を浮かべた。
その時、アリアの背後から、ワーテルの仲間たちが、姿を現した。
「…くそ…! ワーテルが…やられた…!」
ワーテルの仲間たちは、アリアたちに、襲いかかろうとした。
しかし、その時、図書館の入り口から、オリビエが、姿を現した。
「…これ以上…手出しは、させん…!」
オリビエは、そう叫び、ワーテルの仲間たちに、剣を構えた。
ワーテルの仲間たちは、オリビエの威圧感に、後ずさりした。
そして、ワーテルの仲間たちは、逃げ出した。
「…オリビエさん…!」
アリアは、オリビエの姿に、涙を流した。
オリビエは、アリアに、にこにこと微笑んだ。
「…よくやったな、アリア。君は…本当に…騎士だ」
オリビエの言葉に、アリアは、胸が熱くなった。
そして、アリアたちは、ワーテルから、剣と、お金を、取り戻した。
アリアは、自分の剣を手に、喜びを噛みしめた。
そして、アリアたちは、図書館の奥へと、進んでいった。
リマが教えてくれた、本が隠されている場所へと、たどり着いた。
そこには、古びた本が、一冊だけ、置かれていた。
「…これだ…!」
リマは、その本を手に取り、嬉しそうな顔をした。
アリアは、その本を、大事そうに、抱きしめた。
アリアは、ワーテルが、自分のことを知っていたことに、疑問を感じていた。
なぜ、ワーテルは、自分のことを、勇者だと呼んだのだろうか。
そして、なぜ、自分の剣の型を、知っていたのだろうか。
アリアの旅は、東の国で、新たな謎に包まれるのだった。
彼女の物語は、未来へと語り継がれていくだろう。
受け継がれる魂
失われた街で出会った、はぐれ者の子供たちと、過去に囚われた老騎士オリビエ。
アリアは、彼らとの出会いによって、再び立ち上がる力を得ました。
そして、オリビエから受け継いだ剣によって、アリアは、かつての敵を打ち破り、自身の愛剣を取り戻すことに成功します。
この物語は、単なる勝利譚ではありません。
オリビエがアリアに託したのは、剣だけではなく、騎士としての魂そのものでした。
そして、アリアがワーテルの口から聞いた「勇者」という言葉。
その言葉の真意、そして、ワーテルがオリビエの剣の型を知っていた理由。
これらの謎は、アリアの旅路が、単なる個人的な冒険ではないことを示唆しています。
伝説の薬の本を手に入れたアリアたちの旅は、これからさらに深く、そして大きな物語へと繋がっていくことでしょう。
真の闇とは何か、そして、勇者とは一体何なのか。
アリアの物語は、これから、さらに面白くなっていきます。




