険しき山道、奇妙な洞窟
孤児院の子供たちを救い、ユカと別れた後、アリアと仲間たちは、再び山岳地帯へと足を踏み入れた。道は険しく、足元は不安定で、一歩間違えれば、奈落の底へと落ちてしまいそうだ。
「うわぁ!怖いよぉ!」
レンが、ミリアの手を握りしめ、怯えた声を上げる。
「大丈夫だよ、レン。お兄ちゃんが守ってあげるから」
ミリアは、震える声で、レンにそう言った。
「心配するな、レン!俺のこの戦斧があれば、どんな岩も、粉々にしてやるからな!」
ガレンが、巨大な戦斧を振り回し、岩を砕く。しかし、その顔は、汗まみれで、少し疲れているようだった。
「ガレン、無理しないで。高山病に、気をつけないと」
ボリスは、ガレンの様子を見て、優しく声をかける。
「もう、大丈夫だよ、ボリス。みんな、僕が守るから!」
エリオットは、ボリスの隣で、自信満々にそう言った。
その時、アリアの頭に、冷たい水滴が、ポタポタと落ちてきた。
「ん?なんだ、この水は?」
アリアは、空を見上げるが、雨は降っていない。
「アリア、この先、洞窟があるみたいだ。もしかしたら、その水は、洞窟の天井から、落ちてきているのかも」
リリスが、鋭い眼差しで、アリアに告げる。
一行は、リリスの言葉に従い、洞窟の中へと進んでいった。洞窟の中は、ひんやりとしており、奥へ進むにつれて、湿気が増していく。
「ヒッヒッヒ……。お客さんか?久しぶりだなぁ、人間様」
洞窟の奥から、不気味な声が聞こえてきた。
「な、なんだ、今の声は……?」
レンが、恐怖で震え上がる。
声のする方を振り返ると、そこには、巨大な大蛇が、一行を待ち構えていた。その目は、血のように赤く、その口からは、毒々しい息が漏れている。
「ぐわぁ!大蛇だ!」
ガレンが、戦斧を構え、大蛇に襲いかかった。
しかし、大蛇は、俊敏な動きで、ガレンの攻撃をかわし、ガレンの身体に、巻き付いていく。
「くそっ……!力が、入らない……!」
ガレンは、大蛇の締め付けに、苦しそうにうめき声を上げる。
「ガレン!大丈夫!?」
アリアは、ガレンに駆け寄ろうとしたが、その時、洞窟の壁から、小さな怪物たちが、飛び出してきた。
「キーッ!人間、食ってやる!」
彼らは、コボルトと呼ばれる、凶暴な怪物だった。
「みんな、落ち着いて!コボルトは、私たちが相手だ!」
アリアは、剣を構え、コボルトたちに襲いかかった。
リリスは、正確無比な弓で、コボルトたちを次々と打ち倒していく。ボリスは、回復魔法で、アリアたちの傷を癒やす。ルナは、魔法で、コボルトたちを、吹き飛ばしていく。
そして、エリオットは、ボリスと共に、レンとミリアを守っていた。
「みんな、頑張って!僕も、みんなを守るから!」
エリオットは、そう叫び、小さな杖を構える。
その時、リリスが、大蛇の弱点を見つけた。
「アリア!大蛇の弱点は、頭にある、赤い宝石よ!」
リリスは、アリアに、そう告げた。
アリアは、リリスの言葉を聞き、大蛇の頭にある、赤い宝石を狙い、剣を振り下ろした。
ガキン!
剣は、宝石に当たり、火花を散らす。しかし、宝石は、びくともしない。
「くそっ……!硬すぎる!」
アリアは、苦しそうに叫ぶ。
「アリア!この宝石は、ただの剣では壊せない!もっと、強力な魔法が必要だ!」
ルナが、再びアリアに告げる。
「強力な魔法……?エリオット、何か方法はないか?」
アリアは、エリオットに尋ねる。
エリオットは、少し考えた後、決意に満ちた表情で頷いた。
「あるよ!でも、すごく危険な魔法なんだ……。成功すれば、この大蛇を倒せるけど、失敗すれば……」
エリオットは、言葉を濁す。
「大丈夫よ。私たちを信じて」
アリアは、優しくエリオットに告げる。
エリオットは、アリアの言葉に頷くと、呪文を唱え始めた。彼の身体から、黒い靄が立ち上り、大蛇の周りを渦巻く。
「大蛇よ、お前を、闇の力で、永遠の眠りにつかせてやる!」
エリオットは、そう叫び、大蛇の頭にある、赤い宝石に、黒い魔法を放った。
黒い魔法は、宝石に命中し、宝石は、まるでガラスのように、ヒビが入っていく。そして、最後に、轟音と共に、粉々に砕け散った。
宝石が砕けると、大蛇は、苦しそうにうめき声を上げ、その場に倒れ込んだ。
「やった!エリオット、すごい!」
レンが、嬉しそうに叫ぶ。
「うん!エリオット、ありがとう!」
ミリアも、エリオットに感謝の言葉を述べた。
こうして、一行は、大蛇とコボルトたちを倒し、洞窟を抜けることができた。
呪われた屋敷と不気味な宿主
洞窟を抜けた後、一行は、森の奥へと進んでいった。
「この先、人の気配は、ないな……」
リリスが、警戒したように、静かに呟く。
「こんな森の奥に、人里なんて、ないだろうな……」
ガレンは、疲れた表情で、そう言った。
その時、リリスが、突然、立ち止まった。
「待て!この先に、建物がある」
リリスの言葉に、一行は、驚きに目を見開く。
リリスの指差す方を見ると、そこには、古びた洋風の屋敷が、ひっそりと佇んでいた。屋敷の周りには、雑草が生い茂り、窓ガラスは、ひどく汚れている。
「こんな森の奥に、屋敷なんて……。なんだか、不気味だね……」
レンが、怯えたように、ミリアの手を握る。
「でも、もう、日が暮れてしまう。今日は、あの屋敷で、一晩、泊めてもらおう」
アリアは、そう言って、屋敷に向かって歩き出した。
一行が、屋敷の扉を叩くと、中から、一人の男が出てきた。彼は、痩せ細った顔に、不気味な笑みを浮かべている。
「ようこそ、旅の皆さん。よく、こんな森の奥まで、いらっしゃいました」
男は、そう言って、一行を、屋敷の中へと通した。
屋敷の中は、外観と同じく、ひどく荒廃していた。埃っぽい空気と、カビ臭い匂いが、一行を襲う。
「さあ、皆さん、こちらへ。今夜は、ゆっくり、お休みください」
男は、そう言って、一行を、一つの部屋へと案内した。
部屋の中は、薄暗く、大きなベッドが一つ置かれているだけだった。
「えーっと……。この部屋、一つだけなんですか?」
ボリスが、不安そうに尋ねる。
「ええ。残念ながら、今は、この部屋しか空いていないんですよ。どうか、ご容赦ください」
男は、そう言って、不気味な笑みを浮かべた。
「おい、アリア。この宿の主人、なんかおかしくないか?」
ガレンは、アリアに、小声で話しかける。
「ああ。私も、そう感じていた。あの男の目には、生気が感じられない……」
ルナも、ガレンの言葉に同意した。
「でも、もう、日が暮れてしまう。仕方ないわ。今日は、ここで、一晩、泊めてもらいましょう」
アリアは、そう言って、男に、宿泊料を支払った。
「ありがとうございます。では、ごゆっくりお過ごしください」
男は、そう言って、部屋を後にした。
「なんか、嫌な予感がするな……」
ガレンは、そう言って、警戒するように、部屋の中を見回す。
「大丈夫だよ、ガレン。みんなで一緒なら、どんな敵にも、負けないから!」
エリオットは、ガレンに、そう言って、笑顔を見せた。
「そうだね。私も、そう思うわ」
アリアは、そう言って、部屋の明かりを消した。
一行は、疲れた身体を休めるため、大きなベッドに横になった。
しかし、アリアの心には、どこか、不安な気持ちが残っていた。
「大丈夫かしら……」
アリアは、そう呟き、眠りについた。
そして、アリアたちが、寝静まった夜闇の中から、何かが、這い寄ってきた。
この続きは、次回の物語で描かせていただきます。




