邪悪な神の終焉、そして新たな選択
前書き
女騎士アリアと仲間たちは、邪悪な神ヨミを打ち倒し、世界の危機を救うという壮大な最終決戦を終えた。しかし、彼らの旅はまだ終わらない。異世界から来た自称「勇者」たち、タカオ、ヒロシ、ケンジ、コウジ、サクラ、ユイ。彼らの卑劣な行為は、アリアたちの心に深い傷を残した。彼らをどうするか、異世界に帰らせる方法がない中、アリアたちは、彼らを近くの街の役所に突き出すことを決意する。束の間の休息と、街の散策を楽しむアリアたち。しかし、その夜、彼らの前に現れた一人の女性が、再び、彼らの旅の目的を揺るがすことになる。これは、世界の真実と向き合い、新たな使命を胸に、歩み出す者たちの物語である。
邪悪な神ヨミを打ち倒し、影の山に再び光が戻った。アリアと仲間たち、ネクロマンサーのエリオット、獣人の戦士ガレン、エルフの弓使いリリス、ドワーフの僧侶ボリス、そして孤児の兄妹レンとミリア、魔王の娘ルナは、疲労困憊しながらも、互いの無事を喜び合った。
「…やった…! やったぞ…!」
ミリアが、レンの手を握りしめ、歓声を上げた。レンもまた、安堵の表情で、ミリアの頭を優しく撫でた。
「ああ。もう、大丈夫だ」
ガレンは、戦斧を地面に突き立て、大きく息を吐いた。彼の全身は、ヨミとの激戦で傷だらけだったが、その瞳には、勝利の光が宿っていた。
「アリア…! ありがとう…!」
エリオットは、アリアに深々と頭を下げた。彼の顔には、疲労の色が濃く出ていたが、その表情は、師の過ちを正したという、強い達成感に満ちていた。
「みんな…! 大丈夫か…!?」
アリアは、仲間たち一人ひとりの顔を見つめ、その無事を確認した。リリスは静かに頷き、ボリスはレンとミリアを抱きしめ、ルナは不敵な笑みを浮かべていた。
「これで、この世界は…救われたのね…」
リリスが、空を見上げ、そう呟いた。影の山を覆っていた暗闇は消え去り、澄み切った青空が広がっていた。
「ああ。だが、まだ、やるべきことは残っている」
エリオットは、そう言って、縄で縛られたタカオたち偽りの勇者たちに視線を向けた。彼らは、ヨミが消滅したことで、その場にへたり込み、恐怖に震えていた。
「…彼らを…どうする…?」
ボリスが、困惑したように尋ねた。彼らは、異世界から来た者たち。この世界に彼らを裁く法律はない。そして、彼らを元の世界へ帰す方法も、アリアたちには分からなかった。
「異世界に帰らせる方法がない以上、このまま放置するわけにはいかないわ」
アリアは、そう言って、タカオたちを見つめた。彼らの顔には、もはや傲慢な笑みはなく、ただ、絶望と恐怖が浮かんでいた。
「近くの街の役所にでも突き出すしかないだろう。彼らがこの世界で犯した罪を、この世界の法で裁いてもらうしかない」
ガレンが、低い声で言った。彼の言葉には、彼らへの怒りが込められていた。
「そうね。それが、一番妥当な方法だわ」
アリアは、ガレンの提案に同意した。
「くそっ……!俺たちは、勇者なのに……!」
タカオは、そう言って、悔しそうに叫んだ。
「お前たちは、勇者なんかじゃない。ただの、卑怯者だ」
アリアは、そう言って、タカオたちに背を向けた。
こうして、アリアと仲間たちは、タカオたち偽りの勇者を連れて、最寄りの街へと向かうことになった。彼らの旅は、世界の危機を救うという壮大な使命を終え、新たな局面へと突入していた。
街の喧騒と束の間の休息
勇者たちの卑劣な行為から一夜明け、アリアと仲間たちは、再び旅路を歩いていた。彼らの心には、まだあの出来事の余韻が残っていた。特に、リリスとルナ、そしてミリアは、あの時の恐怖が忘れられず、怯えたように周囲を警戒していた。
「ミリア、大丈夫かい?少し休もうか?」
ボリスは、ミリアの顔色を気にかけながら、優しく声をかける。
「うん……。でも、もう大丈夫だよ。ボリスたちが、守ってくれたから……」
ミリアは、震える声でそう言うと、ボリスの手を強く握りしめた。
「俺たちがいる限り、もう、あんな卑怯な奴らには、手出しさせないぜ!」
ガレンは、自信満々に胸を張り、リリスとルナの方を振り返る。
「ガレン……」
リリスは、無表情の中に、少しだけ安堵の色を浮かべた。
「あの勇者たち……。いつか、必ず、仕返ししてやるからな……」
ルナは、静かに怒りの炎を燃やしていた。
「ルナ、気持ちは分かるけど、今は、冷静になって。まずは、安全な場所で、ゆっくり休みましょう」
アリアは、ルナの頭を優しく撫でる。
「はい……」
ルナは、アリアの言葉に、素直に頷いた。
しばらく歩くと、一行の目の前に、大きな町が現れた。石造りの城壁が、町全体を囲い、その上には、色とりどりの旗がはためいている。
「わあ……!すごい、大きな町だね!」
レンが、目を輝かせながら叫ぶ。
「うん!早く、町の中に入りたいね!」
ミリアも、元気を取り戻したように、笑顔を見せた。
町の門番は、いかにもずる賢そうな顔をした男だった。彼は、一行の姿を認めると、ニヤニヤと笑みを浮かべ、門の前に立ちはだかった。
「ようこそ、旅の皆さん。この町に入るには、通行料として、一人につき銀貨一枚だ」
男は、そう言って、一行に、手を差し出す。
「通行料……?でも、そんなの、どこにも書いてないじゃないか!」
ガレンが、怒りに震える。
「ふん。ここは、俺の持ち場だ。俺の言うことが、この町のルールだ!」
男は、高圧的な態度で、ガレンに言い放つ。
「この……!」
ガレンは、男に掴みかかろうとした。
「ガレン、やめて。こんなところで、トラブルを起こす必要はないわ」
アリアは、冷静にガレンを制止する。
アリアは、男に、金貨一枚を差し出した。
「銀貨一枚だと言っただろ!金貨なんて、受け取れん!」
男は、金貨を拒否する。
「これは、あなたへのチップよ。あなたのような、素晴らしい門番には、これくらいのチップは、当然でしょう?」
アリアは、わざとらしい笑顔で、男にそう言う。
男は、アリアの言葉に、一瞬、戸惑いの表情を浮かべたが、すぐにニヤニヤと笑い始めた。
「そうか!そうだったのか!いやあ、お嬢ちゃん、分かってるねえ!じゃあ、この金貨は、ありがたく頂いておくぜ!」
男は、アリアから金貨を受け取ると、態度を一変させ、一行を、町の中へと通した。
「アリア、どうして、あんな男に、チップなんか渡すんだい?」
エリオットが、不思議そうにアリアに尋ねる。
「あんな男と、無駄な喧嘩をする必要はないわ。それに、あの男は、きっと、この町の情報を、何か知っているはずよ」
アリアは、不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど!さすが、アリアだね!」
エリオットは、アリアの言葉に、感心したように頷いた。
賑やかな町と楽しい時間。町の中は、活気に満ち溢れていた。様々な種族の人々が行き交い、露店からは、香ばしい匂いが漂ってくる。
「わあ!見て!レン!美味しそうなパン屋さんだよ!」
ミリアが、目を輝かせながら、パン屋さんを指差す。
「うん!本当に美味しそうだね!ボリス、食べたいな!」
レンは、ボリスの顔を見つめる。
「よし!今日は、特別だ!みんなで、美味しいパンを食べよう!」
ボリスは、そう言って、レンとミリアの手を引き、パン屋さんに入っていく。
アリアとガレン、リリスとルナも、それぞれの興味のあるお店を見て回ることにした。
アリアは、防具屋で、新しい鎧を探していた。彼女が着ている鎧は、数々の戦いを経て、ボロボロになっていたのだ。
「いらっしゃい!お嬢さん、何かお探しですか?」
防具屋の店主は、優しそうな顔をした、初老の男性だった。
「はい。新しい鎧を……」
アリアは、そう言って、自分の鎧を見せる。
「なるほど……。この鎧は、相当、使い込まれていますね。お嬢さんは、きっと、強い方なのだろう」
店主は、アリアの鎧を見て、感心したように頷く。
「……いえ、そんなことは」
アリアは、少し照れくさそうに笑った。
「もしよかったら、こちらの鎧は、いかがですか?この町の、最高の職人が作った、特注品です」
店主は、アリアに、美しい銀色の鎧を差し出した。
アリアは、その鎧に、目を奪われた。まるで、月明かりのように輝く、美しい鎧だ。
「この鎧は……」
アリアは、その鎧を、そっと撫でる。
「この鎧は、戦いの女神に祝福された、特別な鎧です。お嬢さんのような、美しい戦士に、ぴったりですよ」
店主は、アリアに、にこやかにそう言った。
アリアは、その鎧を、試着してみることにした。
一方、ガレンは、武器屋で、新しい戦斧を探していた。
「いらっしゃい!兄ちゃん、何かお探しですか?」
武器屋の店主は、筋肉隆々とした、屈強な男だった。
「ああ。もっと、デカくて、強え戦斧を……」
ガレンは、そう言って、自分の戦斧を見せる。
「なるほど!こりゃあ、すごい戦斧だ!兄ちゃん、相当な使い手だな!」
店主は、ガレンの戦斧を見て、興奮したように叫ぶ。
「ふん。当たり前だろ!」
ガレンは、得意げに胸を張る。
「もしよかったら、こちらの戦斧は、いかがですか?この町の、最高の職人が作った、特注品です!」
店主は、ガレンに、巨大な黒い戦斧を差し出した。
ガレンは、その戦斧に、目を奪われた。まるで、夜空に輝く星のように、美しい戦斧だ。
「この戦斧は……」
ガレンは、その戦斧を、軽々と持ち上げた。
「この戦斧は、巨人の王に祝福された、特別な戦斧です。兄さんのような、力自慢の戦士に、ぴったりですよ!」
店主は、ガレンに、にこやかにそう言った。
ガレンは、その戦斧を、試してみることにした。
リリスは、薬草屋で、新しい薬草を探していた。彼女は、森の知識に長けており、薬草の知識も豊富だ。
「いらっしゃい、お嬢さん。何かお探しですか?」
薬草屋の店主は、穏やかな顔をした、老年の女性だった。
「はい。珍しい薬草はありますか?」
リリスは、静かな口調で店主に尋ねる。
「ええ。ありますよ。この町には、遠い国から来た、珍しい薬草がたくさんあるんですよ」
店主は、そう言って、リリスに、珍しい薬草を見せる。
リリスは、その薬草に、目を奪われた。どれも、この森では見たことのない、不思議な薬草ばかりだ。
「この薬草は……?」
リリスは、店主に、一つの薬草を指差す。
「ああ。それは、『永遠の眠りの花』という薬草です。どんな病気も治せる、不思議な力を持っているんですよ」
店主は、優しくリリスにそう言った。
リリスは、その薬草を、買うことにした。
ルナは、本屋で、この世界の歴史書を探していた。彼女は、魔王の娘として、この世界の歴史を知る必要があると感じていたのだ。
「いらっしゃい!お嬢ちゃん、何かお探しですか?」
本屋の店主は、優しい顔をした、中年男性だった。
「はい。この町の歴史書を……」
ルナは、静かに店主に尋ねる。
「なるほど。この町の歴史書なら、たくさんありますよ。どれも、この町で、代々、語り継がれてきた、大切な本です」
店主は、そう言って、ルナに、古い歴史書を見せる。
ルナは、その歴史書に、目を奪われた。どれも、この町の、長い歴史を物語る、貴重な本ばかりだ。
「この本を……」
ルナは、一つの歴史書を、手に取った。
「ああ。その本は、この町の、一番古い歴史書です。もしよかったら、お嬢ちゃんに、プレゼントしましょうか?」
店主は、ルナに、にこやかにそう言った。
ルナは、店主の言葉に、少し戸惑ったが、嬉しそうに頷いた。
不思議な女性と異世界転移の真実
夜になり、アリアと仲間たちは、宿屋で、夕食を囲んでいた。それぞれの買い物自慢で、場は、賑わっていた。
「私の鎧、見てくれよ!めちゃくちゃ、カッコイイだろ!」
アリアは、新しい鎧を、嬉しそうに自慢する。
「私の戦斧も、すげえだろ!これで、どんなモンスターも、一撃で倒せるぜ!」
ガレンも、新しい戦斧を、自慢げに振り回す。
「私の薬草も、すごいんだぞ!どんな病気も治せるんだからな!」
リリスは、クールな表情で、そう言った。
「私の歴史書も、すごいんだぞ!この町の、一番古い歴史が書かれてるんだからな!」
ルナも、負けじと、そう言った。
「みんな、よかったね!僕も、レンとミリアと、美味しいパンを食べたんだ!」
ボリスは、レンとミリアの頭を優しく撫でる。
「うん!すごく美味しかったよ!」
レンとミリアは、満面の笑みで、そう言った。
その時、アリアたちの隣の席に、一人の女性が座った。彼女は、この世界では見慣れない、奇妙な服を着ており、その顔には、どこか寂しげな笑みが浮かんでいる。
「あの…もしかして……あなたたちは、異世界から来た彼らを役所へ渡された方々ですかね?」
女性は、アリアたちに、静かに話しかけてきた。
「はい。ん……あなたも……?」
アリアは、警戒しながら、女性に尋ねる。
「ええ。私も、異世界から来たんです。以前は、『高校』という所で、先生をしていました」
女性は、そう言って、自己紹介をした。彼女の名前は、ユカだった。
「高校……?先生……?」
アリアたちは、ユカの言葉に、首を傾げる。
「はい。私たちが住んでいた世界では、子供たちに、色々なことを教える場所です」
ユカは、優しくアリアたちに、そう説明した。
そして、ユカは、自分たちが、この世界に異世界転移させられた経緯を、話し始めた。
「私は、ある日、副担任や生徒たちと共に、この世界に、転移させられたんです。なぜ、私たちが選ばれたのかは、分かりません……」
ユカは、悲しそうに、そう言った。
「でも、勇者パーティーの人たちはこの世界を救うために、来たんでしょ?」
エリオットが、ユカに尋ねる。
「うーん、確かにそのために連れてこられたのですが……。彼らは、この世界を、ゲームもしくは夢の中だと思っているんです」
「ゲーム……?夢……?」
「そこ、もう少し詳しく説明してくれる?」
ルナとリリスが、ユカに視線を向けると、彼女は笑顔で軽く会釈したあと説明を始めた。
その話を聞いたアリアたちは、驚きに目を見開いた。
アリアは、信じられない、という表情を浮かべる。
「ええ。だから、彼らは、この世界の住民を、キャラクターだと思って、好き勝手しているんです。特に、女性たちに対しては……」
ユカは、言葉を濁す。
アリアは、ユカの言葉を聞き、あの勇者たちの、卑劣な行為を思い出した。
「もしかして……。あなたたちは、異世界転移した勇者たちと……?」
ユカは、アリアたちの様子を見て尋ねる。
「はい。会いました。そして、彼らに……」
アリアは、勇者たちに、薬を盛られ、襲われそうになった出来事を、ユカに話した。
ユカは、アリアの話を聞くと、涙を流して、謝罪した。
「ごめんなさい……。本当に、ごめんなさい……。私の教え子たちが、そんなことを……」
ユカは、そう言って、頭を深く下げた。
「頭を上げてください。あなたに、謝る必要はないわ。あなたには、何の責任もない」
アリアは、ユカの手を握り、優しく微笑んだ。
「でも……。まだ別のグループの……彼らは、まだ、この世界で、好き勝手しているんです。このままでは、この世界が、彼らに、めちゃくちゃにされてしまう……」
ユカは、不安な表情を浮かべる。
「大丈夫よ。私たちに、任せて。私たちは、この世界を、彼らから、守るわ」
アリアは、力強い眼差しで、ユカにそう言った。
ユカは、アリアの言葉に、安堵の涙を流した。
「ありがとう……!本当に、ありがとう……!」
ユカは、アリアに、何度も感謝の言葉を述べた。
こうして、アリアと仲間たちは、異世界から来た勇者たちの、卑劣な行為を阻止するため、ユカと協力することを決意した。彼らの旅は、新たな局面を迎えることになった。




