絆の力と正義の刃(第二部:勇者たちの正体)
「アハハハハ!俺たちに勝てるわけないだろ!俺たちは、この世界の人間よりも、はるかに優れた存在なんだ!」
タカオの嘲笑が、森の静寂を切り裂く。彼の言葉は、アリアたちの絶望を煽るようだった。しかし、その言葉は、アリアの心に火をつけた。レンとミリアの怯えた顔、そしてガレンが背中を刺されて倒れた姿が、彼女の脳裏に焼き付いていた。
「この程度の薬で、この私の心は、折れないわ!」
アリアは、冷たい眼差しで、鈴木 悟を睨みつけた。彼女の騎士としての誇りと、仲間を守るという強い決意が、身体に巡る薬の痺れをねじ伏せる。全身が鉛のように重く、剣を握る指にも力が入らないはずだった。だが、彼女の心は、身体を動かした。
渾身の力で、男の手を振り払い、剣を抜き放つ。アリアの剣は、薬が効いている身体とは思えないほどの、鋭い一撃だった。鈴木 悟は、その剣を、紙一重でかわすのが精一杯だ。
「な、なんだと……!?薬が効いてないのか!?」
男は、驚きに目を見開く。彼の顔には、傲慢な笑みはもうなかった。焦りと恐怖が浮かんでいる。
「ち、ちくしょう!なんで、こんな女に……!」
その時、ガレンが、ゆっくりと立ち上がった。彼の背中からは、鮮血が流れ出ているが、その目は、怒りに燃えている。獣人族の強靭な肉体と、仲間を傷つけられた怒りが、薬の痺れを吹き飛ばしたのだ。
「てめえ……!俺の仲間を、好き勝手にしようとするなんて、絶対に許さねえぞ!」
ガレンは、そう叫ぶと、巨大な戦斧を振り回し、鈴木 悟に襲いかかった。彼の怒りに満ちた一撃は、男を吹き飛ばし、彼は、近くの木に叩きつけられた。
「ぐっ……!この、化け物め……!」
男は、苦しそうにうめき声を上げる。
「俺たちの絆は……お前らなんかに、壊させない!」
ガレンは、そう叫び、男に、さらに一撃を加えようとした。その瞬間、タカオが、ガレンの前に立ちはだかった。
「お前は、俺が相手だ!」
タカオは、そう言って、ガレンに、剣を突きつけた。ガレンとタカオの戦いが始まった。ガレンは、圧倒的なパワーでタカオを追い詰めていくが、タカオは、どこかずる賢い動きで、ガレンの攻撃をかわしていく。彼の剣は、アリアたちの知る剣術とは異なり、無駄な動きの多い、自己流のものだった。
その間、アリアは、残りの勇者たちと戦っていた。彼女は、剣を巧みに操り、彼らを翻弄していく。薬の痺れはまだ完全に消えていないが、アリアの闘志は、それを上回っていた。
「くそっ!この女、強いぞ!」
「こんなはずじゃ……!」
勇者たちは、アリアの強さに、焦りの表情を浮かべる。彼らは、アリアたちを「劣った存在」だと侮っていた。だが、その慢心が、彼らを追い詰めていた。
その時、リリスが、ゆっくりと身体を起こした。彼女は、震える手で、弓を構える。薬のせいで、指先はまだ感覚が鈍い。それでも、彼女の目は、勇者たちを正確に捉えていた。
「アリア……私が、援護する!」
リリスは、そう言って、勇者たちに、矢を放った。リリスの放つ矢は、正確無比で、勇者たちの動きを封じていく。彼らの足元や腕をかすめ、彼らの連携を崩した。
「な、なんだと!?」
勇者たちは、驚きに目を見開く。
そして、ボリスが、レンとミリアに、回復魔法をかけていた。彼の魔法は、薬の毒を徐々に打ち消していく。レンとミリアは、ボリスの言葉に、ゆっくりと意識を取り戻した。
「大丈夫だよ、二人とも!もうすぐ、薬の効果も切れるからな!」
ボリスは、二人に、優しく語りかける。
レンは、震える身体で立ち上がると、アリアたちの戦いを見つめていた。彼の目には、感謝と安堵の涙が流れている。
「アリア……みんな……」
その時、タカオが、ガレンを倒し、ガレンは、その場に倒れ込んだ。タカオは、ガレンの首に、剣を突きつけた。
「動くな、女騎士!動いたら、こいつの命はないぞ!」
タカオは、アリアを脅迫する。アリアは、タカオの言葉に、その場に立ち止まった。
「ふん。お前たちも、所詮は、ただの人間だ。俺たちに勝てるわけないだろ!」
タカオは、高らかに笑う。その時、レンが、タカオに向かって叫んだ。
「お前たちは……勇者なんかじゃない!ただの、卑怯者だ!」
レンの言葉に、タカオは、一瞬、驚きに目を見開いた。
「な、なんだと……!?」
タカオは、怒りに震え、レンに向かって、剣を振り下ろそうとした。しかし、その時、ミリアが、タカオの前に立ちはだかった。
「お兄ちゃんに……手を出さないで!」
ミリアは、震える声で叫ぶ。タカオは、ミリアの姿に、一瞬、戸惑いを覚えた。その隙に、アリアは、タカオに向かって、剣を振り下ろした。
「てめえ!」
タカオは、アリアの剣を、紙一重でかわすが、その剣は、タカオの腕を切り裂いた。
「ぐっ……!」
タカオは、苦しそうにうめき声を上げ、ガレンから剣を離した。その瞬間、ガレンは、渾身の力で、タカオを殴りつけた。タカオは、その一撃に、吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。
「ガレン!大丈夫!?」
アリアは、ガレンに駆け寄る。
「ああ……。大丈夫だ……」
ガレンは、苦笑いしながら、そう言った。
「くそっ……!覚えてろ!いつか、必ず、この世界の人間を、全員、奴隷にしてやるからな!」
タカオは、そう叫ぶと、残りの勇者たちと共に、森の奥へと逃げ出した。
アリアたちは、勇者たちの姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。
「みんな……。本当に、ごめん。私のせいで……」
アリアは、仲間に謝罪する。
「アリアのせいじゃないよ。あの勇者たちが、悪かったんだ」
リリスは、静かにアリアに告げる。
「そうだぜ!俺たちは、アリアに救われたんだ!感謝してるぜ!」
ガレンは、満面の笑みで、アリアにそう言った。
「それに、レンとミリアも、勇気を出して、私たちを助けてくれたわ」
ボリスは、レンとミリアの頭を優しく撫でる。
「もう……怖くない。みんなで一緒なら、どんな敵にも、負けないから!」
レンは、そう言って、ミリアの手を握りしめた。
ボリスは、レンとミリアの姿に、目を潤ませる。
「本当に……。みんなで、この旅を、乗り越えていこうな!」
ボリスの言葉に、一行は、強く頷いた。
こうして、アリアと仲間たちは、勇者たちの卑劣な行為に屈することなく、互いの絆を再確認し、新たな旅へと出発した。
異世界からの来訪者
アリアたちは、逃げ出したタカオたちを追いかけ、彼らを捕らえた。彼らは、アリアたちの追撃に、必死に抵抗したが、疲労困憊した身体では、アリアたちの敵ではなかった。
「もう、やめてくれ!俺たちを殺さないでくれ!」
タカオは、涙を流しながら、アリアたちに命乞いをする。
「お前たちは、本当に『勇者』なの?」
アリアは、冷たい目でタカオを睨みつけた。
「違う!違うんだ!俺たちは……、ただの、普通の人間だ!」
タカオは、そう言って、泣き崩れた。彼の言葉に、アリアたちは、驚きを隠せない。
タカオは、涙を流しながら、自分たちの正体を明かした。彼らは、異世界から召喚されたのではなく、**『この世界を好き勝手にできる力』**を与えられ、この世界へとやってきたという。
「俺たちは、この世界を救うために来たんじゃない!ただ、この世界で、贅沢な暮らしがしたかったんだ!」
タカオは、そう言って、自分の欲望をぶちまけた。
「俺たちは、この世界の人間を、奴隷にして、俺たちの理想郷を築くつもりだったんだ!」
タカオの言葉に、アリアたちは、怒りを露わにした。
「ふざけるな!そんなことを、許すわけにはいかない!」
ガレンは、そう言って、タカオに殴りかかろうとしたが、アリアが、彼を止めた。
「ガレン、落ち着いて。彼らをどうするかは、これから、みんなで決めましょう」
アリアは、冷静にそう言った。
「この世界を好き勝手にできる力……?いったい、誰が、そんな力を与えたの?」
リリスが、鋭い眼差しでタカオを睨みつける。
「それは……、俺たちをこの世界に送り込んだ、**『神』**だ」
タカオは、そう言って、震える声で答えた。
「その神は、俺たちに言ったんだ。『お前たちは、この世界の人間よりも、はるかに優れた存在だ。この世界を、お前たちの好きにしろ』って……」
タカオの言葉に、アリアたちは、絶句した。彼らは、ただの悪人ではなかった。彼らは、この世界を、自分たちの都合の良いように利用しようとする、**『悪意ある存在』**だったのだ。
「その神は、どこにいるの?」
アリアが、タカオに尋ねる。
「わからない……。俺たちを送り込んだ後、どこかへと消えてしまった……」
タカオは、そう言って、首を横に振った。
「その神は、なぜ、あなたたちに、そんな力を与えたの?目的は、一体、何なの?」
アリアは、タカオに、問い詰める。
「わからない……。ただ、俺たちが、この世界で、好き勝手にすれば、その神は、喜んでくれるって……」
タカオの言葉に、アリアは、この事件の背後にある、巨大な陰謀の存在を感じた。
「このまま、彼らを放っておくわけにはいかないわ。街まで連れて行き、街の役人に引き渡しましょう」
アリアは、そう言って、タカオたちを縄で縛り上げた。
「くそっ……!俺たちは、勇者なのに……!」
タカオは、そう言って、悔しそうに叫んだ。
「お前たちは、勇者なんかじゃない。ただの、卑怯者だ」
アリアは、そう言って、タカオたちに背を向けた。
こうして、アリアと仲間たちは、異世界から来た来訪者たちの卑劣な企みを阻止し、彼らを捕らえた。しかし、彼らの背後には、この世界を弄ぶ、**『邪悪な神』**の存在が浮かび上がった。
アリアたちの旅は、新たな局面へと突入する。
後書き
女騎士アリアたちは、異世界から来た来訪者たちの卑劣な罠を乗り越え、彼らを捕らえることに成功した。しかし、その背後には、この世界を弄ぶ、**『邪悪な神』の存在が浮かび上がる。彼らは、ただの悪人ではなかった。彼らは、この世界を、自分たちの都合の良いように利用しようとする、『悪意ある存在』**だったのだ。
アリアたちの旅は、もはや、魔神を倒すだけの旅ではなくなった。彼らは、この世界の真の危機に、立ち向かうことになる。
物語は、次へと続く




