闘技場と獣人
スケベ門番と再会の屋台
太陽が西に傾き、空が燃えるようなオレンジ色に染まる頃、アリアとエリオット、レンとミリア、そしてボリスは、旅の次の目的地である商業都市「エルドラード」の門の前に立っていた。石造りの巨大な門は、旅人を迎え入れるというよりは、威圧するようにそびえ立っている。
「ようやく着いたわね……」
アリアが疲労を滲ませた声で呟くと、レンとミリアは門を見上げ、少し怯えたような表情を浮かべた。彼の顔は、長旅の疲れと、大都市特有の喧騒に対する不安で少し青ざめている。
「すごい……まるで城みたいだね。アイルスも、もうすぐ美味しいご飯だよ」
エリオットが小さな声で骸骨鳥のアイルスに話しかける。アイルスは、エリオットの肩に乗って、警戒するように周囲をキョロキョロと見回している。
門番は、いかにも職務に不真面目そうな顔をした中年男性だった。だらしなく開いた襟元からは、胸毛がのぞいている。彼は、アリアの姿を認めると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、わざとらしい咳払いを繰り返した。
「おや、これはお美しいお嬢さん。一人かい?もしよかったら、この俺が街の中を案内してあげようか?」
男は、アリアの鎧の隙間から覗く肌を品定めするように見つめ、下品な言葉を投げかける。アリアは、冷たい視線を男に向け、無言で腰の剣に手をかけた。その殺気に満ちた眼差しに、男は一瞬たじろぎ、慌てて咳払いをする。
「いや、冗談だよ、冗談。通行料は銀貨一枚だ」
アリアは無言で銀貨を投げ渡すと、さっさと門をくぐった。エリオットも、嫌悪感を露わにしながら、足早にアリアの後を追う。アイルスは、門番の頭の上から、白い舌をペロリと出し、嫌がらせをするように見つめていた。
「あの門番、本当に気持ち悪かったね……」
ミリアが、震える声で呟く。アリアは、何も言わずに頷き、街の喧騒の中へと足を進めた。
エルドラードの街は、活気に満ち溢れていた。様々な種族の人々が行き交い、露店からは香ばしい匂いが漂ってくる。色とりどりの旗が風になびき、人々の賑やかな声が響き渡っている。
「わあ……すごい!アリア、見て!」
レンとミリアは、目を輝かせながら周囲を見回す。彼の好奇心は、先ほどの不快感を忘れさせてくれるほどだった。
「まず、宿を探しましょう。それから、街の情報を集めるわ」
アリアは、落ち着いた声でエリオットに告げる。二人は、人ごみをかき分けるようにして、大通りを進んでいった。
その時、エリオットの鼻を、たまらなく美味しそうな匂いがくすぐった。視線の先には、湯気を立てる大きな鍋を囲んだ屋台がある。
「アリア、あの匂い……なんだか、すごく美味しそうだよ!」
エリオットは、屋台に引き寄せられるように歩き出した。アリアも、その匂いに誘われるように、エリオットの後を追う。
屋台の店主は、丸々と太った陽気なおばちゃんだった。彼女は、大きな木べらで鍋の中身をかき混ぜながら、豪快に笑っている。
「いらっしゃい!兄ちゃん、ねえちゃん、うちの『黄金シチュー』はどうだい?一口食べたら、やみつきになるよ!」
おばちゃんは、二人に声をかける。アリアは、戸惑いながらも、屋台の前に立ち止まった。
「黄金シチュー……ですか?」
「そうさ!この街の名物でね、鶏肉と野菜をたっぷり煮込んでるんだ。さあさ、遠慮しないで食べてみな!」
おばちゃんは、二人に小さな木の器を差し出した。アリアは、警戒するように器を受け取ったが、エリオットは目を輝かせてシチューを一口食べた。
「美味しい!アリア、これ、すごく美味しいよ!」
エリオットは、感動したように叫ぶ。アリアも、恐る恐る一口食べてみると、その美味しさに驚いた。野菜の甘みと肉の旨みが溶け合い、疲れた身体にじんわりと染み渡る。
「本当に……美味しいね」
アリアが素直に感想を口にすると、おばちゃんは、得意げに胸を張った。
「そうだろう、そうだろう!いやあ、それにしても、お嬢ちゃんたち、旅人かい?こんな美人さんを一人で歩かせるなんて、もったいないね!」
おばちゃんは、再びアリアに話しかける。アリアは、少し照れくさそうに微笑んだ。
「はい、まあ……」
「あら、そうかい!そういえば、さっき、あんたたちと同じくらいの歳の、弓使いのねえちゃんが来てたよ。綺麗な金髪で眼鏡をかけていて、ちょっと気難しそうな顔してたけど、うちのシチューは気に入ってくれたみたいでね。何度もおかわりしてたよ」
おばちゃんは、楽しそうに話す。その言葉に、アリアとエリオットは、ハッとした表情を浮かべた。
「金髪まで眼鏡の……弓使い?」
エリオットが、思わず口にする。その瞬間、二人の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「おばちゃん、すまないが、もう一杯頼む」
声のする方を振り返ると、そこに立っていたのは、一人のエルフの少女だった。銀色の髪は、月明かりのように輝き、すらりとした手足と、鋭い眼差しが印象的だ。
「リリス……!」
アリアが、驚きの声を上げる。少女は、アリアたちの顔を見ると、一瞬、驚きに目を見開いた後、すぐにいつものクールな表情に戻った。
「アリア、エリオット……まさか、こんなところで会うとはな」
リリスは、無表情にそう呟くと、再びシチューを口に運んだ。
「リリス!本当にリリスだ!よかった、元気そうで……」
エリオットは、嬉しそうに駆け寄る。リリスは、少し照れくさそうに視線を逸らしたが、その表情は少し柔らかくなっていた。
「久しぶりね、リリス。また会えて嬉しいわ」
アリアも、安堵したように微笑む。リリスは、小さく頷くと、二人に椅子を勧めた。
「私たち、リリスを探してたんだよ。アイルスも、リリスに会いたかったんだ」
エリオットが、肩に乗ったアイルスをリリスに見せる。アイルスは、リリスの顔をじっと見つめ、小さく鳴いた。
「この子は……アイルスか。少し大きくなったな」
リリスは、アイルスの頭を優しく撫でた。
「リリス、どうしてここに?旅の途中だったの?」
アリアが尋ねる。リリスは、シチューを一口飲み込むと、静かに口を開いた。
「ああ。とある依頼で、この街に来ていた。ちょうど、任務が終わったところだ」
「そうなのね……。もしよかったら、私たちと一緒に旅をしないか?また、リリスと旅ができたら、心強いし……」
エリオットが、期待に満ちた眼差しでリリスを見つめる。リリスは、少し考えた後、静かに頷いた。
「いいだろう。お前たちと一緒なら、退屈しなさそうだ」
リリスの言葉に、エリオットは満面の笑みを浮かべた。アリアも、安堵と喜びの表情を浮かべる。
「よかった……!リリス、ありがとう!」
こうして、アリアとエリオット、アイルスの旅に、再びリリスが加わった。
- 闘技場での出会い -
リリスとの再会を喜び、四人は宿を取った。宿の食堂で夕食を済ませた後、アリアたちは、街の探索に出かけることにした。
「リリス、この街には何か面白いものがあるかな?」
エリオットが、好奇心旺盛な眼差しでリリスに尋ねる。
「この街は、闘技場が有名だ。腕自慢の者たちが集まり、日夜、激しい戦いを繰り広げている」
リリスが、淡々とした口調で答える。
「闘技場……面白そうだね!アリア、行ってみようよ!」
エリオットは、目を輝かせながらアリアに話しかける。アリアは、少し躊躇したが、エリオットの熱意に押され、頷いた。
闘技場は、街の中心部にある巨大な円形の建物だった。外壁には、歴戦の英雄たちのレリーフが彫られており、その威容は、訪れる者たちを圧倒する。
中に入ると、観客席は、すでに多くの人々で埋め尽くされていた。熱狂的な歓声が響き渡り、空気が震えるように感じられる。アリーナの中央では、二人の剣士が、激しい戦いを繰り広げていた。
「すごい……!本当にすごい迫力だね!」
エリオットは、興奮したように叫ぶ。アリアも、その迫力に圧倒され、黙って戦いを見つめていた。
しばらく観戦していると、次の試合が始まった。アナウンサーが、高らかな声で選手たちを紹介する。
「さあ、お待たせしました!次なる戦いは、この街の闘技場に突如現れた、謎の獣人戦士!その圧倒的なパワーで、数々の強敵を打ち破ってきた男、ガレン!」
アナウンサーの声に合わせ、アリーナの扉が開いた。そこに現れたのは、一人の獣人だった。
彼の身体は、鍛え抜かれた筋肉で覆われ、その背中には、巨大な戦斧が背負われている。まるで岩のような頑強な体躯は、ただ立っているだけで、圧倒的な存在感を放っていた。
「そして迎え撃つは、闘技場屈指のベテラン剣士、ゾーグ!」
ゾーグと呼ばれた剣士は、鋭い眼差しでガレンを見つめている。彼の顔には、数々の戦いの傷跡が刻まれており、その歴戦の経験を物語っていた。
試合が始まると、ガレンは、まるで巨木を薙ぎ倒すかのように、軽々と戦斧を振り回した。その一撃一撃は、空気を切り裂くような轟音を立て、ゾーグを追い詰めていく。
「すごい……!あれだけの巨斧を、まるで羽のように扱っている……」
エリオットは、驚嘆の声を上げた。リリスも、その圧倒的なパワーに感心したように頷いている。
しかし、アリアは、どこか違和感を覚えていた。ガレンの眼差しは、戦いの熱狂とはかけ離れ、どこか悲しげで、苦しんでいるように見えたのだ。
試合は、一方的な展開で終わった。ガレンの一撃が、ゾーグの剣を弾き飛ばし、彼の身体をアリーナの外へと吹き飛ばした。
観客席からは、ガレンを称える歓声が巻き起こる。しかし、ガレンは、その歓声に答えることなく、静かにアリーナを後にしようとしていた。
その時、アリーナの入り口から、一人の男が現れた。細身で、いかにもずる賢そうな顔をした男だ。彼は、ガレンの肩に手を置き、耳元で何かを囁いた。ガレンは、男の言葉に、苦しそうに顔を歪ませた。
「今の男、なんだか怪しいね……」
エリオットが、眉をひそめる。
「ええ。それに、あの獣人……なんだか、無理やり戦わされているように見える」
アリアは、ガレンの悲しげな眼差しを思い出し、不安な気持ちになった。
「確かに、闘志を感じない。ただ、言われた通りに戦っているだけ、という感じだ」
リリスも、アリアの言葉に同意した。
試合後、アリアたちは、闘技場の裏口へと回った。ガレンが、あの男と話しているところを目撃したのだ。
「ガレン、次の試合は、明日だ。相手は、もっと強敵を用意してやったぜ。楽しみだろう?」
男は、ニヤニヤと笑いながら話しかける。
「もう……やめてくれ。俺は、これ以上、誰とも戦いたくないんだ」
ガレンが、弱々しい声で懇願する。
「おいおい、何を言ってるんだ?お前には、戦ってもらわないと困るんだよ。お前の村にいる、可愛い妹さんの命がかかってるんだぜ?」
男は、ガレンの弱みを握っているかのように、冷たい言葉を投げつける。
「う……」
ガレンは、男の言葉に絶句し、苦しそうに顔を歪ませた。
「ガレン、お前が大人しく俺の言うことを聞いていれば、妹さんは、病気の治療を受けることができる。いいか、俺の言うことを聞くんだ」
男は、ガレンの肩を叩き、再びニヤニヤと笑うと、その場を去っていった。
アリアたちは、物陰から、そのやり取りを一部始終見ていた。
「ひどい……!なんて卑怯な男なんだ!」
エリオットは、怒りに震える声で呟く。
「リリス、どうする?助けるべきか?」
アリアが、リリスに尋ねる。リリスは、静かに頷いた。
「ああ。あんな男の言いなりになるのは、見ていられない」
アリアは、ガレンが一人になったのを確認すると、物陰から姿を現した。
「あなた、大丈夫?」
アリアが、優しく声をかける。ガレンは、驚いたように顔を上げ、アリアたちを見つめた。
「お前たちは……さっきの観客か?」
ガレンは、警戒するように、一歩後ずさる。
「私たちは、あなたを助けたいんです」
エリオットが、真っ直ぐな眼差しでガレンを見つめる。
ガレンは、二人の言葉に、戸惑いを隠せないようだった。彼は、俯き、小さな声で呟く。
「俺は……助けてもらっても、どうしようもないんだ。妹が、人質に取られている……」
ガレンの言葉に、アリアたちは、顔を見合わせた。
「その男の名前は?」
アリアが、静かに尋ねる。
「……バルガス。この街で、裏の仕事を仕切っている男だ。俺は、妹の病気の治療費を稼ぐために、闘技場に飛び込んだんだが、あいつに弱みを握られてしまって……」
ガレンは、苦しそうに、これまでの経緯を語った。
「バルガス……。わかったわ。私たちが、その男をなんとかする。だから、心配しないで」
アリアは、力強い眼差しでガレンに告げる。
「しかし……あいつは、とてもずる賢い男だ。正面から戦っても、勝てっこない」
ガレンは、諦めたように首を振る。
「大丈夫。私たちには、アリアがいる。そして、アイルスもいる」
エリオットは、自信に満ちた笑顔でそう言った。
「アイルス……?」
ガレンは、エリオットの肩に乗ったアイルスを不思議そうに見つめる。
「俺は、ネクロマンサーなんだ。死者を操る魔法使いだよ。アイルスは、俺の相棒でね。それに、神官のボリスとリリスもいる。彼女は、弓の名手なんだ」
エリオットは、ボリスとリリスを紹介する。2人は、無表情に頷いた。
ガレンは、アリアたちの言葉に、少し希望を見出したようだった。
「わかった……。もし、本当に俺を助けてくれるなら、力を貸してくれ」
ガレンの言葉に、アリアたちは、強く頷いた。
こうして、アリアたちは、ガレンの抱える問題を解決するため、バルガスという男を追い詰めることを決意した。
- 策略と友情-
翌日、アリアたちは、バルガスが根城にしている賭博場へと向かった。賭博場は、街の裏路地にひっそりと佇む、怪しげな建物だった。
「ここに、バルガスがいるはずよ」
アリアが、リリスに告げる。リリスは、鋭い眼差しで周囲を警戒する。
「しかし、中には、バルガスの子分たちが大勢いるはずだ。正面から乗り込むのは、危険すぎる」
リリスは、慎重な口調でアリアに話す。
「わかっている。だから、作戦を立てたわ
アリアは、不敵な笑みを浮かべた。
「作戦……?」
ボリスが、首を傾げる。
アリアは、みんなに作戦を説明した。
「まず、エリオットとアイルスが、賭博場の裏口から侵入する。そして、バルガスの部屋に忍び込み、妹さんを人質に取っている証拠を探す」
「え?俺が、一人で!?」
エリオットは、驚いて叫ぶ。
「大丈夫よ。アイルスがいるわ。それに、ボリスやリリスも援護してくれる」
アリアは、ボリスとリリスに視線を送る、2人は、無言で頷いた。
「俺は……どうすればいいんだ?」
ガレンが、不安そうに尋ねる。
「ガレンは、いつも通り、闘技場で戦う。そして、試合中に、バルガスを呼び出すの」
アリアは、ガレンに告げる。
「バルガスを……?そんなこと、できるのか?」
ガレンは、戸惑いを隠せない。
「できるわ。あなたは、闘技場で一番の人気者よ。あなたが試合中に何かを訴えれば、観客も、バルガスも、あなたに注目するはずよ」
アリアは、ガレンの背中を優しく叩いた。
「わかった……。やってみる」
ガレンは、決意に満ちた表情で頷いた。
「リリスは、賭博場の屋根に上り、エリオットを援護する。もし、バルガスの子分たちに見つかったら、弓で注意を引いてちょうだい」
「承知した」
リリスは、短く答える。
「そして、私は……」
アリアは、少し考えた後、ニヤリと笑った。
「私は、正面から、バルガスをぶっ飛ばすか!?」
アリアの言葉に、ボリスとガレンは、目を丸くした。
「アリア、それは……さすがに無茶だよ!」
エリオットが、慌てて止める。
「大丈夫。計算ずくだ!」
アリアは、自信満々にそう言った。
アリアたちの作戦は、始まった。エリオットは、アイルスと共に、賭博場の裏口から侵入した。アイルスは、小さな身体を活かし、通気口から、バルガスの部屋へと忍び込んだ。
「アイルス、頼むよ。妹さんの手紙か、何か証拠になるものを探してくれ」
エリオットが、小さな声でアイルスに話しかける。アイルスは、エリオットの言葉に、小さく頷いた。
一方、リリスは、賭博場の向かいの建物の屋根に上り、弓を構えた。彼女の眼は、賭博場の窓の一つ一つを、鋭く見つめている。
「よし……。後は、アリアの合図を待つだけだ」
リリスは、静かに呟いた。
そして、ガレンは、闘技場で、次の試合に臨んでいた。今日の相手は、昨日よりもさらに屈強な、巨人族の戦士だった。
ガレンは、いつものように、巨大な戦斧を軽々と操り、巨人族の戦士を圧倒していく。しかし、彼の心は、戦いではなく、アリアたちのことを考えていた。
試合が終盤に差し掛かった頃、ガレンは、突然、戦うのをやめた。
「どうした、ガレン!早く、そいつを倒せ!」
観客席から、バルガスの声が聞こえる。しかし、ガレンは、バルガスの方を向き、大きな声で叫んだ。
「バルガス!俺の妹を返せ!」
ガレンの叫びに、観客席は、一瞬静まり返った。
「なんだと?何を言ってるんだ、この野郎!」
バルガスは、慌てて叫び返すが、ガレンは、さらに声を張り上げる。
「俺は、お前の命令で、無理やり戦わされているんだ!俺の妹は、お前に人質に取られているんだ!」
ガレンの言葉に、観客席は、騒然となった。
その時、アリーナの入り口から、アリアが、鎧をまとったまま、堂々と姿を現した。
「闘技場の観客の皆さん!聞いてください!この男は、卑劣な手段で、ガレンを奴隷のように扱っているのです!」
アリアは、力強い声で叫ぶ。
観客席は、ますますざわめき立つ。バルガスは、顔を真っ青にして、アリアを睨みつけた。
「てめえ!なんだ、その女は!とっととつまみ出せ!」
バルガスは、部下たちに命令する。しかし、その時、賭博場の屋根から、リリスの放った矢が、バルガスの足元に突き刺さった。
「な、なんだ!」
バルガスは、驚きに目を見開く。
その隙に、エリオットは、バルガスの部屋へとたどり着いていた。部屋の中には、ベッドに横たわった、病気の少女がいた。彼女の腕には、バルガスが書いた、ガレンへの手紙が握られている。
「これだ!これが、証拠だ!」
エリオットは、手紙を手に取ると、急いで部屋を飛び出した。
「バルガス!もう終わりだ!」
エリオットは、バルガスの目の前に、手紙を突きつけた。
「この手紙には、あなたがガレンの妹を人質に取っている証拠が書かれている!もう、逃げられないぞ!」
エリオットの言葉に、バルガスは、絶望的な表情を浮かべた。観客席からも、バルガスに対する罵声が飛び交う。
「ちくしょう!こんなはずじゃ……!」
バルガスは、悔しそうに叫ぶと、アリアに襲いかかろうとした。しかし、アリアは、剣を抜き、バルガスの顔の目の前で、ぴたりと止めた。
「もう、あなたの悪行は、みんなが知っている。大人しく、投降なさい」
アリアの冷たい声に、バルガスは、観念したように、項垂れた。
こうして、ガレンは、アリアたちの協力によって、自由の身となった。闘技場の観客たちからも、拍手と歓声が送られる。
「アリア、エリオット、リリス……本当に、ありがとう」
ガレンは、涙を流しながら、三人に感謝の言葉を述べた。
「ガレン、よかった……!妹さん、きっと喜んでくれるよ!」
エリオットは、ガレンの言葉に、満面の笑みを浮かべた。
「ああ……。この恩は、一生忘れない。もし、俺にできることがあれば、なんでも言ってくれ」
ガレンは、そう言って、アリアたちの旅に、加わることを申し出た。
「ガレン、ありがとう。あなたの力は、きっと私たちの助けになるわ」
アリアは、ガレンの申し出を快く受け入れた。
こうして、女騎士アリアと若きネクロマンサーのエリオット、ボリス、そして俊敏なエルフの弓使いリリス、孤児のレンとミリア、心優しき獣人族の戦士ガレンの、新たな旅が始まった。7人の旅は、この先、どんな冒険が待ち受けているのだろうか。




