槍の始まり編 第2話「槍の意味」
◆村の危機
翌日、一行が滞在していた小さな村に、オークの群れが迫った。
「やばい、五匹はいる!」レンが息を呑む。
「村人たちを守るぞ」アリアが短く指示を飛ばす。
ボリスは盾を構え、エリオットは呪文を唱え始める。
レンは槍を強く握りしめた。
(昨日よりも……もっとやれるはずだ!)
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◆初めての壁
オークの一匹が突進してくる。
「うおおっ!」レンは必死に槍を突き出した。
だが力負けし、押し込まれる。
「兄ちゃん!」ミリアが魔法で牽制するが、レンは必死に歯を食いしばる。
「ぐっ……まだ、倒れない!」
「……悪くはない」エリオットが冷ややかに評価する。
「だが、そのままでは死ぬぞ」
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◆見本の一撃
アリアが前へ踏み込み、レンの槍を片手で受け取った。
次の瞬間、流れるような動きでオークの心臓を正確に突き抜く。
「ひっ……!」レンは呆然と見つめた。
アリアは槍を返しながら淡々と告げる。
「槍は力でなく、間合いと速さだ。突きは鋭く、短く。斬る必要はない」
「……間合いと速さ……」レンは唇を噛み、槍を握り直した。
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◆成長の一歩
別のオークが村人に迫る。
「やらせるか!」レンは叫び、槍を突き出す。
今度は短く、鋭く。オークの肩口に深々と突き刺さった。
「ぐあっ!」オークがよろめき、その隙にボリスが盾で叩き伏せる。
「よし!」ミリアが歓声を上げ、
「……やればできるじゃないか」エリオットも口元にかすかな笑みを浮かべた。
レンは息を切らせながらも、槍を離さず立っていた。
「俺……俺だって、戦えるんだ……!」
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◆託された言葉
戦いが終わり、村人たちが安堵の声をあげる。
アリアはレンに近づき、真顔で告げた。
「武器は選ばぬ。だが、選ばれる者には理由がある」
「選ばれる……?」
「槍はお前の力を必要としている。ならば、応えろ」
レンは目を丸くし、そして深く頷いた。
「……分かった! 俺、この槍でみんなを守る!」
ミリアが「お兄ちゃん似合ってる!」と笑い、ボリスが「うむ、良い覚悟じゃ」と頷く。
エリオットは静かに一言。
「……成長を期待しておこう」
夕陽の下、レンは新しい相棒――一本の槍を強く握りしめた。
それが、彼の「槍使い」としての第一歩だった。
(槍の始まり編・完)




