森の小鬼(ゴブリン)戦
◆森を行く
昼過ぎの森。
アリアたちの一行は街道を外れ、鬱蒼と茂る獣道を進んでいた。
先頭にはアリア、その後ろにレンとミリア。さらにボリスとエリオットが続く。
「道が細いね……」ミリアが不安そうに呟く。
「こういう場所は伏兵に狙われやすい」エリオットが本を閉じ、冷静に言う。
「要は、ゴブリンの出そうなところってことか」ボリスが鼻を鳴らした。
アリアは無言で頷き、剣の柄に手を添えた。
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◆不意の襲撃
その瞬間、茂みががさりと揺れた。
「ギギッ!」
黄緑色の小鬼――ゴブリンが姿を現す。数は五。粗末な棍棒や刃物を手に、ぎらつく眼を向けてきた。
「来るぞ!」アリアの声に、全員が身構える。
レンは真っ先に飛び出した。
「俺だってやれる!」
剣を振りかざし、ゴブリンへ斬りかかる。
だが。
「うわっ!」
軽く身を翻され、空を切る刃。逆に棍棒が横から飛んできて、脇腹を直撃した。
「ぐっ……!」レンが体勢を崩す。
「兄ちゃん!」ミリアが叫ぶ。
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◆連携の乱れ
ゴブリンが二匹、レンに殺到する。
「下がれ!」ボリスが飛び出し、盾で棍棒を弾き返した。
重い音と共に衝撃が走る。
「むちゃをするなと言ったじゃろ!」
アリアは横合いから滑り込み、剣閃を走らせた。
「はぁっ!」
鮮血が飛び、ゴブリンの一体が絶叫と共に崩れ落ちる。
しかし残りの敵は怯むどころか狂気に駆られ、牙を剥いて迫る。
「所詮は小鬼だが、数で押す気か」エリオットが冷笑を浮かべ、詠唱する。
漆黒の鎖が地面から伸び、二体のゴブリンを絡め取った。
「ギギッ!?」
「今のうちじゃ!」ボリスが叫び、盾で押し込み、ミリアが小さな火の魔法を放つ。火花が弾け、敵が怯む。
アリアは迷わず突撃し、残りを切り伏せた。
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◆戦闘の終わり
やがて森に静寂が戻る。
転がるゴブリンの屍。血の臭いが湿った空気に広がる。
レンは地面に膝をつき、剣を突き立てて息を荒げた。
「はぁ、はぁ……俺、全然刃が当たらなかった……」
悔しげに唇を噛む。
「兄ちゃん!」ミリアが駆け寄り、傷を確かめる。幸い浅い打撲で済んでいた。
「もう少し遅ければ……危なかったんだぞ」
ボリスが盾を背に回し、苦笑した。
「少年、焦りすぎじゃ。武器は体に馴染むものを使え」
「馴染む……?」レンが顔を上げる。
「剣に向かんのなら槍でも棍棒でも、何でもよい。ただ、己に合う道具を選べ」
エリオットが横から冷ややかに付け加える。
「もっとも、半端者ならどの武器を持とうが死ぬがね」
「エリオット!」ミリアが抗議する。
だが、レンは逆に奮い立つように剣を握った。
「……半端者なんかじゃない。証明してみせる」
アリアは静かに剣を下ろし、レンの肩に手を置いた。
「武器は人を選ばない。だが、戦い方は人が選ぶ。
――なら、お前が選べ。剣か、槍か、それとも別の道か」
レンは深く息を吸い込み、答えはまだ見つからぬまま、剣を強く握り直した。
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(第1話・了)




