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女騎士の独り旅!  作者: 和泉發仙


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森の小屋編 ― 第6話「小屋突破戦」




◆突入


小屋の窓から屍がなだれ込んだ。

腐った獣の死体、泥にまみれた農夫の亡骸、眼窩が光る骸骨。

「ぎぃぃ……」と呻きながら、爪と牙を剥き出しにして襲いかかる。


「来やがったかッ!」レンが槍を振るい、突き出した一撃で骸骨の胸を砕いた。

「聖なる光よ――!」ボリスの祈祷が広がり、死肉を焼き払う。

だが数が多すぎる。壁や屋根まで軋み、今にも崩れ落ちそうだった。



◆阿鼻叫喚


「ぎゃああああっ!」

ハヤブサの牙のひとりが掴まれ、壁に叩きつけられる。血が飛び散り、仲間が悲鳴を上げた。


「離せ! 離せぇっ!」

もうひとりは死霊に腕を噛み千切られ、床を転げ回った。


「や、やめて! 助けて!」エルナがカイルに縋りつく。

「俺だって無理だ! 俺を巻き込むな!」カイルは彼女を突き放し、扉の方へ逃げようとする。


「卑怯者!」

エルナが叫んだ瞬間、窓から伸びた腐った腕が彼女を引きずり出した。

「きゃああああああっ!」


カイルは蒼白になり、動けなくなった。



◆破邪の剣の混乱


「下がって! 下がれ!」アドリーヌが魔剣を振るう。

だが剣筋は乱れ、死霊に囲まれて悲鳴を上げる。


マルグリットは鎧ごと押し倒され、必死に炎を撒き散らすが、その火は仲間の足元も焼いた。

「熱いっ! 馬鹿、何やってるの!」オリベーラが絶叫し、斥候の短剣を振り回す。


「みっともない……!」セレスティーヌは扇を投げ捨て、震える手で短杖を握った。

だが放たれた魔弾は壁を撃ち抜き、ますます小屋を危うくした。



◆商人と付き人


「う、うわぁっ! 宝が、宝が!」

ハーゼンは荷物を抱え、死霊に引きずられそうになる。


「……っ!」

オットーが躊躇なく飛び出し、主人を突き飛ばした。

その背を爪が裂き、血が飛ぶ。


「オットー!」

だが付き人は声を上げず、ただ必死に短剣を振るい、主を庇い続けた。



◆アリア一行


「ミリア、下がれ!」

レンが妹を背にかばい、突きを連発して屍を押し返す。


「ひぃっ……!」ミリアは涙を浮かべながらも、小石を投げて死霊の注意を逸らした。


ボリスは血まみれになりながらも聖印を掲げ、神の光で死霊を焼く。

「退けぇええっ!」


エリオットは冷静に詠唱し、死者を縛る影を繰り出した。

「立て直せ。まだ崩れるな」


その中心で、アリアが真顔のまま剣を振るい続ける。

「……鐘は鳴らさせない」


彼女の刃が光を反射し、次々と死霊を切り裂いた。



◆夜明けはまだ遠い


死霊の群れは尽きることなく押し寄せ、小屋の壁が崩れかけていた。

外はまだ夜。夜明けまで、まだ長い。


「くっ……!」レンが汗を拭い、槍を構え直す。

「まだ……耐えるんだ!」


呻き声と悲鳴が交じり合い、小屋はまさに地獄の坩堝と化していた。


(つづく)


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