孤児の兄妹
- 辺境の村と奇妙な依頼 -
夕暮れの空が、黄金と紫の絵の具を溶かしたように広がる。その壮大な景色とは裏腹に、辺境の村エルハイドは静寂に包まれていた。石畳の道を、一人の女騎士が歩いていく。背丈はすらりと高く、銀の鎧は夕陽を浴びて鈍く輝く。彼女の名はアリア。サンマリノ王国で騎士団副長を務めていたが現在は放浪の旅をしている。
彼女の隣には、黒いローブをまとった青年が歩いている。エリオット。彼はアリアとは正反対の存在だ。死者を操る禁忌の術師、ネクロマンサー。彼女の荷物持ちという事でともにだをしている。
「エリオット、本当にこの村で間違いないのか?」
アリアは、エリオットを横目で見た。彼の視線は、ずっと地面に向けられたままだ。
「ああ。依頼書にはそう書いてあった。この村、エルハイドに、奇妙な病が流行している、と。その原因を突き止めてほしい、とのことだ」
エリオットの声は、抑揚がなく、どこか冷たい。
「奇妙な病…魔物の仕業ではない、と?」
「おそらくは。魔物の瘴気なら、僕の能力で感知できるはずだ。だが、この村には、魔力の痕跡はほとんどない」
アリアは首をかしげた。もし魔物によるものではないとすれば、それは呪いか、あるいは…
「おい、アリア。あれを見ろ」
エリオットが、村の入り口にある掲示板を指さした。そこには、数枚の張り紙が貼られている。そのどれもが、村人の安否を尋ねるものだった。
「レンとミリア…孤児の兄妹か。この村では、孤児は珍しくない」
アリアは、張り紙に書かれた二つの名前に目を留めた。しかし、彼女の視線は、その張り紙の横に貼られた、別の張り紙に引きつけられた。
それは、まるで子供が書いたような、稚拙な文字で書かれている。
「魔女が来た。みんな、気をつけて」
アリアは、その張り紙に書かれた文字を見て、眉をひそめた。
「魔女…か。この村では、魔女は忌み嫌われているのだろうな」
「たしかに。昔から、魔女は災いを呼び込む存在と信じられてきたからな」
エリオットは、アリアの隣で静かに言った。
「しかし、この張り紙は、どこかおかしい。子供が書いたにしては、文字が震えている。まるで、怯えながら書いたようだ」
アリアは、張り紙に手を伸ばした。しかし、その手は、エリオットによって止められた。
「やめておけ、アリア。安易に触れるべきじゃない。この張り紙には、微弱だが、呪いがかけられている」
エリオットの言葉に、アリアは驚き、手を引っ込めた。
「呪い…だと?」
「ああ。おそらくは、魔女を寄せ付けないための、おまじないのようなものだろう。だが、その力の源は、死者の魂だ」
エリオットの言葉に、アリアはゾッとした。死者の魂…それは、ネクロマンサーであるエリオットの得意分野だ。
「この村は、どうやら僕の得意分野のようだ」
エリオットは、不敵な笑みを浮かべた。その表情は、アリアの知っている、冷たいエリオットとは少し違っていた。
- 孤児兄妹との出会い -
二人は、村の宿屋に滞在することにした。宿屋の女将は、二人を警戒しているようだった。アリアの銀の鎧と、エリオットの黒いローブ。どちらも、この辺境の村では異様な存在だった。
「何か、困っていることはありますか?」
アリアは、女将に優しく声をかけた。女将は、アリアの言葉に、一瞬警戒を解いたようだった。
「…あんたたち、旅の人かい?こんなところに、珍しいね」
「はい。私たちは、この村で流行している病の原因を突き止めにきました」
アリアの言葉に、女将は顔を曇らせた。
「あの病…あれは、魔女の呪いだ。ここ数日、村の子供たちが、次々と熱を出しているんだ。そして、高熱が続いた後、まるで魂が抜けたように、意識がなくなってしまうんだよ」
女将の言葉に、アリアは息をのんだ。魂が抜けたように…その言葉が、エリオットの脳裏に、ある可能性を呼び起こした。
「魂を抜く…まさか、魂食いか?」
エリオットは、小声で呟いた。その言葉に、女将は驚き、彼を睨みつけた。
「あんた、まさか…魔女の仲間かい!?」
女将の言葉に、アリアは慌てて否定した。
「違います!彼は、王国の…」
「やめておけ、アリア。僕の正体を明かせば、余計に面倒なことになる」
エリオットは、アリアを制した。その言葉に、アリアは口を閉じた。
女将は、二人を警戒しながらも、話を聞いてくれた。彼女の話によると、この村には、レンとミリアという孤児の兄妹が住んでいるという。彼らの両親は、数年前に流行した病で亡くなったそうだ。
「レンは、しっかり者の兄で、ミリアは、少し体が弱い妹だ。二人は、いつも一緒だった。しかし、二日前の夜から、二人の姿が見えなくなったんだ」
女将の言葉に、アリアは、掲示板に貼られていた張り紙を思い出した。
「レンとミリア…やはり、二人がこの病の原因を知っているのかもしれない」
アリアは、エリオットに言った。エリオットは、何も答えず、ただ静かに頷いた。
「二人の家は、村の東の端にある。しかし、あの家は、魔女の棲み家だと、村人からは忌み嫌われているんだ」
女将の言葉に、アリアは眉をひそめた。魔女の棲み家…しかし、それは、子供が住んでいる家だ。
「僕が行こう、アリア。君はここにいろ」
エリオットは、立ち上がった。
「ダメだ、エリオット一人で、危険な場所に行くなんて」
「これは、僕の得意分野だ。魂の痕跡を追うのは、僕の仕事だ。君は、ここで情報収集をしてくれ」
エリオットは、そう言って、宿屋を出ていった。アリアは、彼の背中を見送るしかなかった。
- 魂の痕跡を追って -
エリオットは、女将が教えてくれた、レンとミリアの家に向かった。村の東の端にあるその家は、確かに古びていて、不気味な雰囲気を漂わせている。家の周りには、村人が投げつけたと思われる石が転がっていた。
「ここか…」
エリオットは、家の前に立ち、目を閉じた。彼の能力、死者の魂との交信が、家の中に残された、微弱な魂の痕跡を捉えた。
「レンとミリア…二人の魂の痕跡が、かすかに残っている。そして…もう一つ、別の魂の痕跡がある。それは、邪悪な存在の痕跡だ」
エリオットは、慎重に家の中に入った。家の中は、埃っぽく、物が散らかっている。まるで、慌てて出ていったかのようだ。
「ミリアの魂の痕跡は、レンの痕跡よりも弱い。やはり、彼女は病に侵されているようだ」
エリオットは、家の中を歩き回った。そして、一つの部屋の前に立ち止まった。そこは、ミリアの部屋のようだった。部屋の壁には、子供が描いた、稚拙な絵が貼られている。その絵には、二人の子供と、一人の女性が描かれていた。女性は、黒いローブをまとっている。
「やはり、魔女…か?」
エリオットは、絵をじっと見つめた。そして、彼は、絵の隅に描かれた、一つの印に気がついた。それは、ネクロマンサーの間で、魂食いの魔術師が使う、特別な印だった。
「間違いない…魂食いだ。しかし、なぜ、こんな辺境の村に?」
エリオットは、考え込んだ。魂食いは、通常、強大な魔力を持つ者を狙う。こんな辺境の村に、魂食いが来る理由がない。
「まさか、彼らが…」
エリオットは、ある可能性にたどり着いた。そして、彼は、再び目を閉じた。今度は、ミリアの魂の痕跡を、より深く、探るために。
ミリアの魂の痕跡は、レンの痕跡に比べて、明らかに弱っていた。しかし、その魂の中には、まだ、かすかな希望の光が残っている。
「まだ間に合う…」
エリオットは、そう呟くと、再び家の中を歩き回った。そして、彼は、家の裏庭にある、小さな小屋の前に立ち止まった。
「ここだ…」
小屋の中には、レンとミリアが隠れているようだ。エリオットは、慎重に小屋の扉を開けた。
- 兄妹の秘密 -
小屋の中には、二人の子供がいた。一人は、まだ幼い少年、レン。もう一人は、布団にくるまって、苦しそうに息をしている少女、ミリアだ。
「あんたは…誰だ?」
レンは、エリオットを警戒するように、ミリアをかばった。その目には、恐怖と、怒りが入り混じっている。
「僕は、君たちの味方だ。この病を治すために、ここに来た」
エリオットは、優しく言った。しかし、レンは、エリオットの言葉を信じようとしなかった。
「嘘だ!あんたも、村の人たちと同じだ!僕たちを、魔女の仲間だって、馬鹿にするんだろ!」
レンは、叫んだ。その声は、震えていた。
「違う。僕は、魔女ではない。そして、君たちを助けに来た。信じてくれ」
エリオットは、レンに近づこうとした。しかし、その瞬間、レンは、エリオットに向かって、小さなナイフを突きつけた。
「来るな!ミリアに、近づくんじゃない!」
レンの目は、涙でいっぱいだった。エリオットは、レンの目を見て、彼がミリアをどれだけ愛しているかを知った。
「わかった。僕は、近づかない。だから、そのナイフをしまってくれ」
エリオットは、そう言って、レンから少し距離を置いた。レンは、エリオットの言葉に、少しだけ警戒を解いた。
「…あんた、本当に、僕たちの味方なのか?」
「ああ。僕は、ネクロマンサーだ。死者の魂を操る、禁忌の術師だ。だから、君たちが隠している、この病の原因もわかる」
エリオットの言葉に、レンは驚き、ナイフを落とした。
「ネクロマンサー…あんた、魔女じゃないのか?」
「違う。魔女は、魂を奪う。僕は、魂を操る。似ているようで、全く違う」
エリオットは、ミリアの布団に近づいた。そして、彼女の額に、そっと手をかざした。
「彼女は、魂食いに魂を食われている。だから、意識がなくなってしまうんだ」
エリオットの言葉に、レンは息をのんだ。
「魂食い…?じゃあ、村の人たちも…」
「ああ。君たちの病も、村の人たちの病も、すべて、魂食いの仕業だ」
エリオットは、レンに言った。
「しかし、なぜ、魂食いは、君たちを狙ったんだ?魂食いは、通常、強大な魔力を持つ者を狙うはずだ」
エリオットは、レンに尋ねた。レンは、エリオットの質問に、答えをためらった。
「…僕が、魔女だからだ」
レンは、絞り出すように言った。その言葉に、エリオットは驚いた。
「君が…魔女?」
「違う!違うんだ!僕は、ただ、ミリアを助けたかっただけなんだ!」
レンは、涙を流しながら、叫んだ。
レンの話によると、数ヶ月前、ミリアが病に倒れたそうだ。医者に見せても、原因はわからず、病状は悪化する一方だった。レンは、ミリアを助けるために、必死に方法を探した。そして、彼は、村の図書館で、古びた魔術書を見つけた。その魔術書には、病を治すための、禁忌の魔術が書かれていた。
「僕は…その魔術を使って、ミリアの病を治そうとしたんだ。しかし、魔術は失敗してしまった。そして、その魔術の失敗が、村に、奇妙な病を流行らせてしまったんだ」
レンは、涙を流しながら、言った。
「そして、その魔術の失敗が、魂食いを呼び寄せてしまったんだ。魂食いは、僕の魔力を狙って、村にやってきた。そして、僕だけじゃなく、ミリアの魂も狙ってきたんだ」
レンは、ミリアを抱きしめた。
「僕は、ミリアを助けたい。でも、どうすればいいのか、わからないんだ…」
レンの言葉に、エリオットは、静かに頷いた。
「わかった。君の力は、まだ未熟だ。だから、魔術が失敗してしまった。しかし、君は、ただ、妹を助けたかっただけだ。君は、決して悪ではない」
エリオットは、レンの頭に、そっと手を置いた。
「僕が、君たちの病を治そう。そして、魂食いを倒そう。だから、安心してくれ」
エリオットの言葉に、レンは、初めて、心から安堵した表情を見せた。
「本当に…?本当に、助けてくれるのか?」
「ああ。約束する」
エリオットは、レンに微笑んだ。その時、エリオットの脳裏に、アリアの顔が浮かんだ。彼女なら、きっと、この状況を、なんとかしてくれるはずだ。
- 銀の騎士、立つ -
宿屋に戻ったエリオットは、アリアに、これまでの経緯をすべて話した。レンが、魔術の失敗で、村に病を流行らせてしまったこと。そして、その魔術の失敗が、魂食いを呼び寄せてしまったこと。
「なるほど…すべて、レンの魔力が原因だったのか」
アリアは、考え込んだ。
「しかし、レンは、ただ、妹を助けようとしただけだ。彼を責めることはできない」
「そうだな。だが、このままでは、村人たちの病は治らない。そして、魂食いは、再び、レンとミリアを狙ってくるだろう」
エリオットは、アリアに言った。
「魂食いは、どこにいる?」
アリアは、剣に手をかけた。その目は、すでに、戦闘態勢に入っていた。
「村の北にある、古い教会だ。魂食いは、そこで、魂を喰らい続けている」
エリオットの言葉に、アリアは頷いた。
「わかった。私が行く」
「待て、アリア。魂食いは、手強い。君一人では危険だ」
エリオットは、アリアを制した。
「でも、お前には、ミリアを治すという、大切な仕事がある。それに、私はこの村の危機を、見過ごすわけにはいかない」
アリアは、そう言って、宿屋を出ていった。エリオットは、アリアの背中を見送るしかなかった。
アリアは、エリオットが教えてくれた、古い教会に向かった。教会は、村の北の丘の上に建っている。夕陽に照らされたその姿は、どこか不気味だった。
教会の扉は、開いていた。アリアは、慎重に中に入った。教会の内部は、埃っぽく、静まり返っている。しかし、その静寂の中に、どこか不穏な気配を感じた。
「誰か、いるのか?」
アリアは、声をかけた。しかし、返事はない。
アリアは、教会の奥に進んだ。そして、祭壇の前に立つ、一つの人影を見つけた。
それは、黒いローブをまとった、背の高い女性だった。彼女は、祭壇の上に置かれた、小さな光の玉を、じっと見つめている。その光の玉は、まるで、魂のように、かすかに輝いている。
「お前は…魂食い?」
アリアは、剣を構えた。女性は、アリアの言葉に、ゆっくりと振り返った。彼女の顔は、ローブの影に隠れて、よく見えない。しかし、その目だけは、赤く、不気味に輝いていた。
「私は、ただ、この村の魂を、救いに来ただけだ」
女性は、静かに言った。その声は、どこか優しく、しかし、どこか冷たかった。
「魂を救う?魂を喰らうの間違いじゃないのか?」
アリアは、女性を睨みつけた。
「お前には、わからないだろう。魂は、死後、苦しみ続ける。私は、その苦しみから、彼らを解放してあげているだけだ」
女性は、アリアに近づいてきた。
「だが、お前のせいで、村の子供たちが苦しんでいる!レンとミリアも…」
「レンとミリア…あの兄妹か。あの少年は、面白い力を持っている。彼は、私と同じ、魂を操る才能を持っている」
女性の言葉に、アリアは驚いた。
「しかし、彼は、その力をうまく使えない。だから、私は、彼の魂を喰らい、その力を、私のものにする。そうすれば、彼は、もう苦しまずに済む」
女性は、そう言って、不気味な笑みを浮かべた。
「そんなことはさせない!」
アリアは、女性に斬りかかった。しかし、女性は、アリアの剣を、指一本で受け止めた。
「無駄だ。お前の力では、私には勝てない」
女性は、そう言って、アリアを吹き飛ばした。アリアは、壁に激突し、苦しそうに呻いた。
「くっ…」
アリアは、なんとか立ち上がろうとした。しかし、全身の力が、抜けていくようだ。
「お前の魂も、なかなか面白い。その銀の鎧の下には、強い魂が宿っている」
女性は、アリアに近づいてきた。そして、アリアの魂を、喰らおうとした、その瞬間…
「アリアに、手を出すな!」
エリオットの声が、教会に響き渡った。
- 二つの魂、一つの誓い -
エリオットは、レンとミリアを連れて、教会に駆けつけてきた。彼の隣には、レンが立っている。レンの手には、小さな光の玉が握られている。それは、ミリアの魂だ。
「エリオット…なぜ、ここへ…」
アリアは、驚いた。
「君を一人で、危険な場所にやるわけにはいかない」
エリオットは、そう言って、アリアの前に立った。
「そして、僕は、この魂食いを倒す。そして、ミリアの魂を取り戻す」
エリオットは、女性を睨みつけた。
「ネクロマンサー…そして、あの少年も、魔女の卵か。面白い。二人まとめて、喰らってやろう」
女性は、不気味な笑みを浮かべた。
「レン、今だ!」
エリオットは、レンに合図を送った。レンは、エリオットの言葉に、頷いた。
レンは、手に持っていた、ミリアの魂を、祭壇の上に置かれた、小さな光の玉に近づけた。すると、二つの光が、共鳴し始めた。そして、二つの光が、一つの光になった。
「なっ…!?」
女性は、驚き、目を見開いた。
「まさか…そんなことができるなんて…」
エリオットは、女性に言った。
「ミリアの魂は、君の魔力によって、喰われかけていた。しかし、レンの魂が、ミリアの魂と共鳴することで、ミリアの魂を、守ることができたんだ」
「馬鹿な!そんなことは、あり得ない!」
女性は、叫んだ。
「君の魔力は、魂を喰らうことしかできない。だが、僕の魔力は、魂を操ることができる。そして、レンの魔力は、魂を繋ぐことができる」
エリオットは、そう言って、女性に、手をかざした。
「今度は、僕が、君の魂を操る番だ」
エリオットの言葉に、女性は、怯えた表情を見せた。
「やめろ…!私に、何をしようとしている!?」
「君の魔力を、僕の魔力で、封じ込める。そして、君の魂を、元の姿に戻してやる」
エリオットは、そう言って、魔力を放出した。彼の魔力は、女性の体を包み込み、彼女の魔力を、少しずつ、封じ込めていった。
「うわあああああああ…!!」
女性は、苦しそうに叫んだ。そして、彼女の体から、黒い靄が立ち上り、彼女の姿が、少しずつ、変化していった。
そして、黒い靄が消えた後、そこには、一人の少女が立っていた。彼女は、まだ幼く、怯えた表情で、エリオットを見つめている。
「これは…?」
アリアは、驚き、目を見開いた。
「彼女は、魂食いではない。彼女は、ただ、魂を喰らうことに、囚われていた、哀れな少女だ」
エリオットは、そう言って、少女に近づいた。
「君は、もう大丈夫だ。君は、もう、誰も傷つけることはない」
エリオットは、少女に、優しく微笑んだ。少女は、エリオットの言葉に、涙を流した。
- 新たな旅の始まり -
村に戻った二人を、村人たちは、英雄として迎えた。村人たちの病も、エリオットの魔力によって、徐々に回復していった。
レンとミリアも、元気になった。レンは、エリオットに、魔術の使い方を教わることになった。ミリアは、エリオットとアリアに、懐いていた。
「エリオット、ありがとう。お前のおかげで、村は救われた」
アリアは、エリオットに言った。
「礼を言うのは、僕の方だ。君が、魂食いを食い止めてくれたおかげで、僕は、彼女を救うことができた」
エリオットは、アリアに微笑んだ。
「君は、本当に優しいな。禁忌の術師だなんて、嘘みたいだ」
アリアは、そう言って、笑った。エリオットは、アリアの言葉に、少しだけ照れた。
「僕たちは、これから、どうなるんだろうな…」
エリオットは、アリアに言った。
「さあね。でも、私たちは、二人で、どこまでも行ける。どんな困難も、二人で乗り越えていける」
アリアは、エリオットに言った。
その言葉に、エリオットは、心から安堵した。彼は、この旅の中で、アリアという、かけがえのない仲間を得た。そして、レンとミリアという、新しい家族も。
二人の旅は、まだ始まったばかりだ。しかし、彼らの未来は、きっと、明るいものになるだろう。




