第一話
誰もが彼を歓迎し、その登場に歓喜した。街は異常なほどに活気に満ちあふれ、日が暮れてもその熱狂は冷めやらず、大人たちは酒を飲み交わし雄たけびのような歓声を上げ、子供たちは、この時とばかり夜になっても街を駆け回る。
その日町から人々の笑顔と明かりが絶えることは無く、町ではどこもお祭り騒ぎだった。
それは普段は寂れて活気とは無縁な街の中心街から外れたボロイ場末の酒場でも同じだった。
カウンター席ではこの酒場のマスターと客たちが彼の話で盛り上がり、フロア席では、酒を片手に誰もが友人のようにはしゃぎ彼の話題で溢れていたいた。
そんな大盛り上がりの雰囲気の中に場にふさわしくなく落ち込んだ青年がいた。席には大量の空ジョッキが積んである。
それに気付いたのか筋骨隆々の髭面のおっさん達がはしゃぎながら青年に話しかけた。
「よう。どうした兄ちゃん覇気のねぇ顔してよ」
「女にでも振られたか」
酒場にどっ笑いが巻き起こる。
「どいつも……俺を……にしやがって……」
絡まれている青年からぼそりと聞こえるか聞こえないか程度の小さな声が声が漏れる。
それと同時に何とも言えない陰気な空気がその青年をを包み込む
そんな空気を察してどこからか陽気な声が飛んでくる
「何があったか知らないが元気だしな。若いんだしこれからまだまだ沢山良い事もあるぜ。」
隣の机に座っていたやつからも励まされている
「そうだ。今日みたいな皆が幸せになれる最高の日が来るんだ。兄さんにもそんな日が来るって」
「……は俺が……だったのに。」
ぼそぼそと何か言っている青年の呟いたある単語を耳ざとく聞きつけた男が言った
「そうそう、何たって今日は勇者さまが現れなさった日なんだからよ」
その時それまでぼそぼそと何か呟きただ陰気な空気を出していた青年の態度と包んでいた空気が一変した。
バンっと机を叩き勢いよく上に飛び乗り、怒りからか酒からか兎に角赤らめた顔から色んなものを垂れ流しながら大声で叫ぶ
「うるせー!!何が勇者だ。ホントは俺がなるはずだったのに後から出てきたぽっと出がくぁwせdrftgyふじこlp」
和やかだった場がその青年の一言で剣呑な空気に変わる。
「うわっ。こいつゲロ吐き散らしながらキレやがった」
「何を血迷ったようなこと言ってやがる。酔っ払ってるからって勇者様のことを悪く言う奴ぁ許せねぁ」
「おい!こいつつまみ出すぞ。引きずりおろせ!」
酒と高揚感から大勢の男がその一言で向かっていく。
片や青年の方も両拳を構えて男たちを挑発した。
「オッシャー!かかって来いやー!」
叫んだ瞬間にイキナリ飛びかかってきた大男の勢いをそのまま背負い投げの要領で壁の方に投げ飛ばす。
そして、机の上から飛び降りざまに近くにいた男の顔面に蹴りを叩き込み勢いを殺して着地する。
着地した瞬間狙ったかのように飛んできた大振りの拳を屈んでやり過ごしそいつに水平蹴りを繰り出し脚を刈り取る。
水平蹴りの回転の勢いをそのままに伸びながら後ろにいる掴みかかろうとする相手の顎を叩き砕くがごとき裏拳を放つ。男がどんもりうって倒れる。
先ほど水平蹴りを放った相手の方を振り向き倒れた相手の顔面に情け容赦のない一撃フットスタンプをお見舞いする。グシャリと足から確かな手ごたえを感じる。
しかし、一方的で華麗な戦いはそこまでだった。元々、複数対一で不利な上酔ったままでは普段の力など出せはしない。
複数ある手に服をつかまれ一瞬体が固まった所を顔面に一撃を叩き込まれる。
白目を剥き一瞬遠退きそうになる意識を歯を食いしばらこらえる
続けざまに飛んでくる拳はなんとかやり過ごしながらも拳を繰り出す。
そこからはただ拳をやり取りする無様な乱打戦になる。
鼻血を吹き出しながら相手を大振りの一撃のもとに殴り倒す。
振り抜き際にできた隙を突かれビールがたっぷり貯まった腹を殴られる。こみ上げる吐き気を必死に堪えながらまた殴り返す。
それに近いやり取りが何度か行われ、明らかに殴られる回数が増え痛みと吐き気から動きも鈍ってくる。
殴られ続け意識が霞んでいく中、なぜこんな事になってしまったのか?と言う問答を頭の中で繰り返しつつ、こんな事になった原因を思い出していた。
そう、あの野郎さえ現れなければ。
あのくそ野郎が今頃になって現れさえしなければこの世界で一番有名な男になることができたのだ。
俺こそが勇者になれるはずだった、はずだったのだ。
初めての作品になるのでかなり稚拙になってます。
なので、意見・感想を激しく募集してます。
後書くのははかなり遅いと思います。