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※ネプォン編───こんな結末望んでねーよ!

俺は封印の鏡の中に潜むと、その時を待った。このタインシュタ・フランが、馬鹿弓使いたちの仲間というわけではないことが、幸運だった。


奴はただ、面白いものを見たいだけ。


だから、俺の存在を馬鹿弓使いたちにばらさないのだ。


目の前で繰り広げられている、魔王と馬鹿弓使いの戦いも、佳境に入る。


馬鹿弓使いは、スキル武装した魔王に、素手で殴りかかり始めた。


これを、初めて見た時には驚いた。

なんて、無駄なことを。こいつは、正真正銘の大馬鹿野郎だと。


だが、魔王は結果的に魔力をすり減らして、無力化されていく。


その間、俺は馬鹿弓使いが背中に装備したままの神弓を見つめていた。


あれを、いただけばいい。


ただし。


奴の足元でシールドを張る、あの白狐、すなわちフィオが邪魔だ。


彼女の鉄壁のシールドは、後ろからの攻撃さえ阻んでしまう。


それならば……。


俺はゆっくり封印の鏡の中から這い出ると、機会を伺った。


「ほう……今から仕留める気か」


タインシュタ・フランが、目を細めて俺の動向を見守る。


まあ、みてろ、て。


馬鹿弓使いも、フィオも、魔王に気持ちが集中しているから、背後に迫る危機に気付かない。


もうすぐ、その時が来る。


魔王は、魔力の根源を失い、中から何か灰のようなものを吐き出し始めた。


異空間のようだった部屋も、元に戻る。


前の時間では、ここから馬鹿弓使いが矢を魔王に射ていくんだよな。


その時、シールドが弱まるのが見えた。


フィオのシールドも、一度の詠唱では、張れる時間が決まっている。


張り直しをするまでの間が、チャンスだ! 俺はこっそり近づき、馬鹿弓使いの背後から神弓を奪い取った。


「……あ!」


振り向いたフィオの、驚いた顔。


傑作だぜ。ザマァ見ろ!!


ついでにお前も、連れ去ってやらあ!!


狐の姿のフィオを抱き上げようとした時、俺は後ろに吹き飛んだ。


「ぐぇ!」


「……触るな!」


馬鹿弓使いが、振り返ることなく俺を後ろに蹴り飛ばしたのだ。


け、蹴りだと? この野郎!!


この真の英雄を、足蹴にするなんて正気か?


俺は神弓を抱えて、起き上がる。

ちくしょう! ま、まあ、でも獲物は手にできた。


これで奴は、魔王にトドメを刺せない。

今度はこっちが蹴り落としてやる! 英雄の座から!!


「はは! 馬鹿弓使い、これでお前は何もできねーだろ?」


高らかに笑って、神弓を馬鹿弓使いに向かって構えた。


自分の神器で殺られる間抜けな英雄。


いや、英雄ですらない偽物が!!


「あんた、それが欲しいのか」


不意に、馬鹿弓使いは魔王の方を向いたまま、話しかけてきた。


……ん? なんだ?

なんで、こいつ、こんなに冷静なんだ?


唯一の武器を、魔王にトドメを刺す武器を奪われたのに。


あ、あれか。もうヤケになってんだな。

なら、遠慮はいらねーな!!


「死ね! 馬鹿弓使い!!」


俺が弓を引いて、矢を射ろうとした瞬間、ボロッと弓が壊れた。


何!?


馬鹿な、これは神弓だろ!?


まさか、持ち主以外が引けば壊れる仕組みか!?


驚く俺の前で、馬鹿弓使いは俺を完全無視したまま、魔王に矢を射ている。


矢は、次から次に魔王の急所に刺さっていった。


は? ……は? は?

どゆこと?


瞬きしながら、戸惑う俺は状況が飲み込めない。


奴の手には、しっかり神弓が握られていたのだ。


じゃ、ここにある弓は偽物?

くっそ! なんだよ、それ!!


そこへ、バーンと音を立てて部屋の扉が開き、魔道士ティトと、聖騎士ギルバートが入ってくる。


「アーチロビン! ……て、あれ? ネプォン王?」


「おや、なぜここにいるんじゃい」


二人とも、驚愕の眼差しで俺を見る。


……ち!

俺は壊れた弓を床に投げ捨てた。


「グァァァァー!!」


突如、魔王の断末魔が響いて、その体が崩れ去るのが見える。


馬鹿弓使いめ。自分で、トドメを刺しちまったのか。


くそ! これじゃ前と結果は同じじゃねーか!!


馬鹿弓使いは、俺の方に向かって歩いてくる。


「タインシュタ・フランが俺たちに協力すると申し出た時から、怪しいと思ってたんだ」


奴は開口一番にそう言った。

げ、バレてたのか。


もっとうまくやれよ! おっさん!!


「それに、知らないはずの城の中をスタスタ歩く姿も違和感があった。罠にかかっても、致命傷にもならない。魔王にも怯えない。つまり、先がわかっているからだと、確信した」


馬鹿弓使いは、タインシュタ・フランを睨む。


当のタインシュタ・フランは、涼しそうな顔で、話を聞いていた。


「神弓の偽物を用意するなんて、セコい真似をしたな、アーチロビン」


「……ニャルパンのおかげさ、タインシュタ・フラン。神弓の偽物を作れるのは、この世で彼ただ一人だから」


馬鹿弓使いは、本物の神弓を装備し直す。

くっそ……!!


ズズン! その時、魔王の城が崩壊する音が響いてきた。


「城が……!」


「魔王が死んで魔物どもが、逃げ出し始めたか……!!」


おおっと、やべぇ。

逃げないと。


パリン!


その時、馬鹿弓使いが持っていた封印の鏡がわれて、イルハートが出てきた。


は? なんでここで、お前が出てくる?


「あー! 窮屈だったわ。さあ、逃げましょお」


みんな、タインシュタ・フランの元に集まった。

そ、そうだ。とにかく逃げねーと。


「定員オーバーだ。こいつが増えたせいで、一度に運べない」


タインシュタ・フランが、イルハートを指差した。


はあああ!?


俺はあんぐりと口を開けて、イルハートを見る。


「二人、外れてもらう」


タインシュタ・フランの宣言に、俺はイルハートにしがみついた。


冗談じゃねぇ!!

お、俺は転送されたほうがいい!!


「いや! アーチロビン!!」


人の姿に戻ったフィオが、馬鹿弓使いに抱きついて残ろうとしている。


おお、ちょうどいい。

こいつら二人が外れて、俺は助かる。


と、思ったのに……馬鹿弓使いが急に余計なことを言い出した。


「フィオは戻ってくれ。俺とネプォンが残る」


「ぬわんだと!? お前!!」


「イルハートの監視には、フィオも必要だ。じっちゃんを頼む。俺も後から行く」


「後からだ!? お前、この男女平等の時代に、女の命を優先するなんておかしいだろ!?」


「逃げ惑う魔族に、もみくちゃにされるんだ。頑丈な人間が残るのは、合理的判断だ」


「頑丈というなら、そこの聖騎士の方が……!!」


「彼には、ケルヴィン殿下護衛の責任がある。魔道士ティトにもだ。元々そういう役目で、集まっているのだから。そして……フィオ」


馬鹿弓使いが、優しく彼女にキスをしている。こんのぉぉ!


それは俺がやるっつーの!!


「俺が命懸けで戻る、理由になってくれ」


「アーチロビン……」


「待っていてくれると思ったら、頑張れるから」


そんな会話を聞いて、ムズムズしてくる。

ふざけんな! 格好つけ野郎が!!


助かりたい時には、他人を蹴落として助かる! これが普通だし、もちろん俺は蹴落とす側だ。


「おい、イルハート! こいつらを魔法で……」


『蹴散らせ』と言おうとして彼女を見ると、そこにいない。既に彼女は、タインシュタ・フランの腕にしなだれかかっている。


こいつ……!!


「ネプォン、自分の身は自分で守るものだわぁ」


睨みつける俺に、彼女はそう言い放つ。


「俺の恋人のくせに、お前はぁ!!」


「人は変わるのよ、ネプォン。うふふ、頑張ってねぇ、あ・な・た」


変わる? お前は変わり身が早いだけだ。


生きて戻ったら、死ぬほどお仕置きをしてやる!!


「もう、行くぞ」


タインシュタ・フランは無情にも俺と馬鹿弓使いを残して消えていった。


ちくしょお!!

これじゃ、元のままがマシだ!!


「全部元に戻せ! クソが!!」



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