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※ネプォン編───面倒くさくて、時をかける

「は!」


俺は野営地で目を覚ました。

ここはどこだ!? 今はいつだ?


「もう、お昼ねぇ、ネプォン」


隣で眠るイルハートが、目を閉じたまま言う。


おっと、こいつと楽しんだ日の翌日か。

……て、それだけじゃわかんねー!!


「おい、馬鹿弓使いはどこだ?」


俺はイルハートを起こして、確認する。


彼女は、目をこすりながら起き上がった。


「誰それぇ」


「は?」


「うちのパーティーに弓使いはいないわ。寝ぼけてるのぉ?」


「雑用係の馬鹿弓使いのことだぜ?」


「雑用係。それをスカウトするために、ここへ来たじゃなぁい」


「!!」


そうか、思い出した! 雑用係がいないから、俺たちの旅は、とにかく金がかかってしかたなかった。


だから、ただで使えそうな、人のいいあの馬鹿弓使いをこの森でスカウトしたんだ。


なら、まだ、出会う前だな!


「おい、それなら、もうやめよう」


「はぁ?」


「雑用係なんかいらない。な?」


「えー、でもぉ」


「でもじゃない!」


「急にどうしたのぉ?」


そんなやりとりをしていると、暗黒騎士ヴォルディバが、シャーリーと一緒に戻ってきた。


「ネプォン、起きてる?」


テントの外からシャーリーの声がする。

こいつら、どこに行ってた?


ええっと、確か……。


「おーい、ネプォン。雑用係連れてきたぜぇ」


ヴォルディバの声に、俺は慌てて外に飛び出した。


そこには、二人に挟まれるようにしてやってきた、あの馬鹿弓使いがいる。


「嘘だろー! なぜ連れてきた!?」


俺の大声に、二人は驚いて目を丸くする。

これじゃ、計画が台無しだろ?


「何言ってんだよ、ネプォン。お前が欲しいというから、わざわざ出向いて見つけてきたんじゃねーか」


「彼はね、お爺さんと二人暮らしで、家事も雑用もできるの。私の治療魔法で彼のお爺さんの持病を治してあげたから、そのお礼も兼ねて二つ返事でついてきたのよ」


「それは、いいんだよ! 問題はこいつがこの後に……!」


「雑用係ぃ? やだ、早速お願いしなくちゃあ」


俺の後ろからイルハートが出てきて、馬鹿弓使いにあれこれ指示を出し始めた。


奴め、テキパキ動いて、真面目にやるものだから、みんな重宝がって、追放しにくくなってしまう。


三人とも雑用嫌いの怠け者ばかりだから、理由をつけて追い出そうとしても、連れ戻してきやがるし。


隙をみて、殺るか……!


だが、こいつがいれば確かに旅が楽だ。無賃労働させても、文句も言わない。


要は、だ。


こいつに、大帝神龍王の力を渡さなければいいんだ。


そして、神器もちゃんとしたものを手に入れる。


俺は、神剣だと思い込んでいた剣を見つめた。イルハートに正解を聞いてきてるからな、今度こそ俺の神剣を手に入れてやる。


俺は時間を遡る前に聞いていたやり方で、カラクリを解こうとした。


……。


ん? なんだ?

動かねぇ。


聞いた通りにしているのに、仕掛けはびくとも動かない。


こんなの、おかしいだろ!?


キィィィー。


剣が哭き始める。あー!

うるさい、うるさーい!!


あまりの喧しさに、剣を地面に投げ捨てると、近くの岩に当たって跳ね返ってきた。


バチん!!


「いってー! 鼻が、鼻がぁ!!」


また、鼻血がでやがった!


苦しみながら、俺は剣を踏みつける。この野郎! 仕掛けが解けねーじゃんよ!!


「くっそー! 面倒くせぇ! 時間を進めろ!」


やけっぱちで俺が大声で叫ぶと、また目の前が白くなる。

気がつくと、馬鹿弓使いを大帝神龍王の生贄にしようとした、あの場面になっていた。


時間を飛んだのか!?


便利だな、楽でいいじゃん。


「おい、シャーリー! 俺がやる!」


と、俺は名乗りをあげた。

そうだよな、俺が大帝神龍王を取り込めばいいんだ。


そう思って、シャーリーから三叉のクリタルを奪い取る。


これを胸に埋めてから、大帝神龍王の前に行けばいいんだったな?


ところが……。


「馬鹿! あんたが封印されたら、誰が魔王にトドメを刺すのよ?」


「そうだぜ? ネプォン。今は馬鹿弓使いを使わねーと、俺たちが危ねぇ」


「そーよぉ。馬鹿なこと言わないでぇ」


と、三人が止めてくる。こ、こいつら、また邪魔を!!


「ふ……わかってねーな。俺は、大帝神龍王と融合して奴の力を手に入れるんだ」


「はあ?」


「何、言ってんのぉ? できるわけないじゃなぁい」


「そうだぜ、ネプォン」


馬鹿どもめ。それができるんだぜ。

なぜなら、俺は天が選んだ英雄だから。


タインシュタ・フランは、常人にはまず無理だと言っていたが、俺は常人じゃない。


俺は、三叉の水晶を自分で胸に押し込む。


ズブズブっと、三叉の水晶は胸に入ってきた。


……気持ち悪い。

お、おぇ……。


苦しい……これ、どこまで入れればいいんだ?


我慢だ……我慢……がま……。

ズブズブ……ズブ……。


「やっぱり無理だぁぁぁ!!」


あまりの気持ち悪さに、俺は馬鹿弓使いの胸に思いっきり三叉の水晶をねじ込み直した。


奴も顔が真っ青になって、吐こうとしたので、慌てて大帝神龍王の前に突き飛ばす。


「吐くんじゃねーぞ! きたねぇ野郎だ!!」


大声で叫んだ。

馬鹿弓使いは、全身を光らせて大帝神龍王と一緒に消えていく。


はぁ、はぁ、気持ち悪かった。

……ん? ……ああ!!


しまった!!


思い直した時は既に遅し。


これじゃ、元のままじゃねーか!!


「くそ! 次だ!」


俺が大声で叫ぶと、最初に魔王にトドメを刺そうとしたあの直前まで進んでしまった。


「く、くそ! 仕掛けを解き終わってないぞ!?」


俺は慌てて、剣の仕掛けを解こうと足掻く。しかし、相変わらず剣の仕掛けは解けない。


おかしいだろ!?

天運の助けは?


カチ!


なんだ?今の音。


よく見ると、仕掛けが少し動いてる。


やった! ついに俺は……!

えっと、どうやって動いたんだっけ?


あ……。


間が悪いことに、いきなり意識が飛ぶ。

くそ、また固まっていたか!!

魔王の思念のせいだ。


「ネプォン、モタモタすんじゃねーよ!!」


ヴォルディバが、俺の背中をバシッと叩く。

いってーな!!


「静かにしてろ! ヴォルディバ!!」


「早くトドメを刺せ! あとは、心臓をひと突きするだけだろーがよ!」


「その前にやることあるんだよ!」


「何を?」


「お前には関係ない!」


「ビビるんじゃねーよ、ネプォン。ほれ、一緒にやってやるから」


ヴォルディバが俺の手首を掴んで、魔王の胸に剣を突き立てる。


あ!!


魔王はニヤリと笑って、消滅していった。

剣は瘴気を吸って錆びたようになる。


ああ……これじゃ、元のまま。


いや、まだまだぁ!!


「次!!」


俺が叫ぶと、タインシュタ・フランに声をかけられて、封印の鏡に潜む話を提案されるところへと跳んだ。


ここ? ここはもう、神器を手に入れることもできない後半じゃねーか。


「……その様子だと、また、何も変えられなかったようだな」


沈黙する俺に、タインシュタ・フランはそう言ってくる。


……ん? 待て。『また』だと?

こいつは、時間を遡る前の記憶があるのか!?


「タインシュタ・フラン。お前……記憶があるのか!? しかも、初めてじゃない?」


「は、今頃気づいたか。その通りだ。お前が近づいた時だけ、私も過去に意識を飛ばせるようにしている」


「俺は……まさか何回も?」


「そうだ。記憶を持って遡ったのは、これが最初だが」


「マジか!?」


「何度やり直しても、お前は何も変えられずにここまでくる。まあ、私は最後の対決を何度も見れるから、面白くていいがな」


「くそ……、このままじゃ、あの馬鹿弓使いに負けちまう!」


「まあ、そうだな」


「なんとかしろよ」


「知るか。自分で考えろ」


「……」


そうだ! 奴の弓を奪ってやろう。神器なしでは魔王を倒せないのは、奴も同じ。


「タインシュタ・フラン。そろそろ違う結末が見たいだろ? 見せてやるよ」


読んでくださってありがとうございます。

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