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魔王ダーデュラ

魔王ダーデュラは、俺たちに向かって指を一本たてた。


俺は、その意味が直感的にわかる。


時間停止!!


「フィオ! 獣形になれ!! タインシュタ・フラン! 対策を!」


フィオは、慌てて白狐の姿に変わる。


白狐は、魂が精霊に近い存在だと、テレクサンドラは言っていた。

真の姿である獣形の方が、影響を受けにくい。


ピン!!


弦を弾いたような音がして、時間が止まった。

俺の懐に逃げ込んでいた、オウムのフェイルノが、ピクリとも動かない。


タインシュタ・フランも動きを止めて、下に沈みかけたけれど、胸元がサッと光って再び動き始める。


「ふぅ、前もって、身代わりの術をしておいてよかった」


彼は安堵のため息をついたあと、ノートに書き込んでいた。どこまでも呑気だよな。


さらに魔王は俺たちに、体力減少や、状態異常誘発、死の呪いまでかけてくる。


行動が早い。

スピードアップのスキルが、既に発動しているな。


それから、魔王自身には、『絶対魔法防御』、『絶対武器防御』など、これでもかと言いたくなるほど、恩恵の多いスキルを発動しまくっていた。


蓄えたスキルを、見せつける気だ。

だけど、俺たちも負けていられない。


フィオは、必死で回復の呪文を詠唱している。


「フィオ、時の停止の影響を受けなくて良かった」


「あなたのおかげ。この姿は時の影響を受けないから」


「フィオ、今は体力回復に集中だ。死の呪いも、浄化を頼む。俺たちを助けてくれ」


「任せて。大丈夫よ」


俺たちは、小声で会話を交わすと、魔王ダーデュラに向かい合った。


魔王の行動スピードが速い以上、フィオは回復と防御に集中してもらわないと。


回復役にフィオがいる限り、俺は戦える。


さあ、こっちの番だ。


俺が構えた神弓は、光をまとって輝き始めた。


魔王ダーデュラは、嘲笑するように体を震わせる。


“やれるものなら、やってみろ”、て、感じだな。


俺は、引いた弓の弦を離す。


ヒュン!


俺が放った矢は、魔王ダーデュラの横を通って亜空間の中に消えていく。


『絶対武器防御』の効果か。

矢の攻撃も避ける仕組みだな。


ヒュン! ヒュン! ヒュン!


続けて放つ。全て亜空間の中に吸い込まれ、どこにも見えなくなった。


ふと、タインシュタ・フランが横から話しかけてくる。


「アーチロビン、力場を作れない場所では、お前の力は不発だ。他の力で戦うのか?」


「他の力はおそらく、全て無効にされる。蒼炎すら、気休め程度にしか効かないだろう」


「なら、どうする気だ。負け戦なんて、記録したくないぞ」


その時だ。


ガ……ガ……ガ。


魔王ダーデュラの首が、横に倒れる。まるで首を傾げているように。


ゆっくりとその顔が俺を見て、タインシュタ・フランの方を見る。


この雰囲気、彼を狙ってる!?


「タインシュタ・フラン!! シールドを張れ!」


俺が叫ぶのと同時に、彼の足元から火が噴き出した。


「むう!?」


タインシュタ・フランは、魔法でシールドを張って耐える。


パキッ、ピシッ!


シールドに、ヒビが入った。

それだけ、大きな火の魔法。


タインシュタ・フランは、焦ったように魔王を見る。


「何をする!! 英雄はあっちだ! 私を巻き込むな!!」


……やれやれ。

この場に来て、傍観者になんてなれるはずがないのに。


魔王ダーデュラは、俺の方に視線を向けると、指先を向けてくる。


シュー……。奴の指先からは、煙があがるばかり。


一回目。

無意識にカウントする。


魔王ダーデュラは、空中から剣を取り出し、振りかぶってきた。


その腕が途中で止まる。


二回目。

効いてる……効いてる!


三回目の攻撃は、召喚魔法だった。

地獄より召喚された怪物が現れたけれど、そいつの攻撃のダメージは、魔王に跳ね返る。


魔王は、自分の召喚魔法のダメージを受けて、驚いていたようだった。


すぐに回復魔法で、体力を全回復している。

回復魔法は『絶対魔法防御』の影響を受けないのだな。


「攻撃抑止と絶対反転が機能しているだと? 床もなく、天井もない。力場を発生させる場所がないのに、どうして……神弓だからか? いや、違うな」


タインシュタ・フランも、驚愕の表情で俺を見る。


「多分、誤解してるんだ、タインシュタ・フラン。そして、魔王も」


俺も横目で彼を見て、静かに言った。


「わからん! アーチロビン、教えろ! なせだ? なぜだ、なぜ? こんな場所でなぜ!? いつもどこかに矢を刺すことで、発動してたろ!?」


「タインシュタ・フラン。別にいいじゃないか。目的は魔王ダーデュラを倒すこと。仕組みの解明なんて、後でいい」


「教えろ! 今度こそ!!」


「今度こそ?」


「い、いや、なんでもない。解明されないと、イライラするからな」


「こっちは、それどころじゃない」


俺は魔王ダーデュラを睨んだ。

もっと体力を削るかと思ったのに、耐え切ったところは流石だな。


ゴォォォ!!


魔王の後ろから強い風が吹いてきて、闇の中のような亜空間から、雲の上の世界に出たような光景に切り替わる。


空間を変えやがったか。


俺は再び矢を連射した。


矢は一発も魔王ダーデュラに当たらず、横をすり抜けて見えなくなる。


それでも。


俺に攻撃を当てようとする魔王ダーデュラは、再び力場に捕まり、何もできずにいた。


魔王ダーデュラの、怒気のような感情が空間内に溢れる。


“何をした……!?”

そう言われてるようだ。

すぐに倒せると、踏んでいたんだろう。


力場の発動を抑えれば、瞬殺して終わりだと。


だが……。


「ダーデュラ。お前の攻撃力の高さこそ、お前の素早さこそ、お前のスキル全てこそ仇になる。お前の力が、己を滅ぼす最大の敵なのだから!」


俺が言うと、魔王ダーデュラは、空気を振動させて叫ぶ。


「ガァァァァァァァ!!」


せつな、魔王の後ろから、使い魔のような二体の魔物が飛び出して来た。


素早く動いて、俺のそばにいるフィオを狙っている。


「フィオ、シールドを!!」


俺が言うと、フィオはすぐに詠唱した。


「慈悲深き我らが神よ、聖霊を遣わし、我らの盾となる力を貸し給え、セイントシールド!!」


俺たちを、鉄壁のシールドが包む。使い魔たちは弾き返されて、フィオを捕えることができない。


俺は素早く矢を連射して、二体の使い魔を俺の力場に捉える。


あとはコカトリスを倒した時の技、『光弾』を放って俺に敵意を向けさせた。


あとはいつも通り、自滅していく様を見送る。


「む!?」


流石に、タインシュタ・フランが気づいたようだ。


顎を撫でて、満足そうに頷く。


「そういうことか……! やっとわかったぞ。早速記録せねば!」


「後にしろ!」


直後、魔王ダーデュラが即死級の大魔法を放った。


来たな!

全体技だ!!


攻撃対象に俺が含まれれば、他者を巻き込む攻撃でも、俺の力は有効だ。


再び三回目の攻撃が跳ね返った魔王は、苦悶の声をあげている。自分の攻撃を、自分が味わうのだからな。


瀕死になるほどの体力を、自分で削ったわけだ。


あと一撃入れれば、倒せる。


けれど、ここで直接手を出せば危ない。

俺の直感はそう告げている。


なぜなら、奴は魔王だから。

勝利は確実だと思った時に、隙ができる。

そこを狙われる気がしてならない。


「チャンスだ……!」


!?

誰の声だ?


ここにいはいないはずの、あいつの声。


「ネプォン?」


思わず俺が言うと、タインシュタ・フランは慌てたように俺を見た。


「違う、違う。今のは私だ。魔王は瀕死だから、チャンスじゃないかと思ったのだ」


「今の声は、確かに……」


「アーチロビン、今は考えるな! モタモタしてたら、魔王が回復してしまうぞ!」


そう話す俺たちの前で、魔王ダーデュラは、体力回復の魔法を発動する。


これでは、事態は膠着したままだ。


「アーチロビン! ほら、みろ!! せっかくのチャンスを逃して、奴はまた回復したじゃないか」


「落ち着いてくれ、タインシュタ・フラン。俺に考えがある」


俺はタインシュタ・フランにそう言うと、弓を構えて、魔王ダーデュラを狙った。

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