戦闘準備完了
俺とフィオは、翌日ニャルパンの鍛冶屋を訪れていた。
オベリア様は、朝一番にタインシュタ・フランに送られて帰国したそうだ。
彼女も、地上の防衛を担うからな。
俺たちも、しっかりしないと。
「ニャルパン。装備を取りに来た」
俺が言うと、ニャルパンは人の良い笑顔を浮かべる。
「ニャニャ! ご両人、今日も仲良しニャ」
「か、からかうなよ」
俺が照れくさくなって顔を逸らすと、肩に乗ったオウムのフェイルノが、口を出してきた。
「イツモ、ナカヨシ。チュウ、シテルナカ」
「知ってるニャ。羨ましいニャー」
「やめろって! フェイルノ! お前どうしてそう、ペラペラと……!!」
「フーン、ダ」
「こいつ!」
「はいはい、動物をいじめるのはダメニャ」
「くすくす……そうよ? アーチロビン」
「なんで、俺ばかり」
「スネないニャ。追加注文の分もできてるニャよ」
「あ、ありがとう」
「備えは大事ニャよ」
「あぁ、杞憂だとは思うんだけど、備えたいんだよな」
「いいニャ。はい、どうぞ」
「さすが、仕事が早いな」
「すごいなぁ、ニャルパン。尊敬しちゃう」
俺とフィオが褒めると、ニャルパンは顔を赤くして頭を掻いた。
「いやー、可愛い女の子に褒められると、天に昇りそうになるニャ」
「おいおい、まだ昇天しないでくれ」
「ふふ、魔王の居城には、まだ入れないニャ?」
「ああ、魔王が現世に生まれるまで、堅い結界に守られてる」
「誕生まで守られる。……本当に英雄並みの扱いニャな……」
「守りに徹してるうちは、攻めてもこないしな。その間が、こちらも準備期間だ」
「そうニャね!!」
談笑する俺たちのところに、ケルヴィン殿下たち一行がやってくる。
タインシュタ・フランも一緒か。
彼はニャルパンの鍛冶屋を、興味津々の目で見ていた。
「ほう……あらゆる術具まで製作可能なようだな。私も贔屓にしよう」
「ニャニャ、嬉しいニャ」
ニャルパンは、嬉しそうにしながら、奥から沢山の矢を持ってきた。
「兄さん、これがその神弓用の矢ニャ」
「まるで針金のような細さだな」
「構えてみるニャ」
俺は、極細の矢をつがえた。
キュイィィ……。
弦を引いた途端、矢は光を纏っていつもの太さへと変化する。
「兄さんの気と、神弓の気が合わさって矢に力が注がれるニャ。んー、いい出来ニャ」
「すごい……ありがとう、ニャルパン」
俺が矢を放たずに、構えを解くと、矢は元の極細の矢へと戻る。
これだけ細ければ、矢筒に沢山入って尚且つ軽い。
「兄さんの力も、より強くなったはずニャ。あとは魔王が、どう出てくるか、ニャだ」
「ああ、心配は尽きないけど、ニャルパンの作ってくれたこの防具があれば、凌げるさ」
「ふふ、少々のクリティカル攻撃も防げるニャよ。防具には、『ダメージ90%減』を可能にする素材を使用してるニャ」
「おおー」
「こっちの腕輪は、状態異常を防ぐ効果があるニャ。そして、こっちは『翼の靴』」
「翼の靴?」
「地面から十センチほど、浮遊できるニャよ。足音がたたなくて、いいニャ。それに、異空間の中に取り込まれても、うまく浮遊できるニャ」
「すごい」
「ただし、ニャ」
「ん?」
「普通の世界、つまり、今ここにいる世界では、地面から離れすぎると、普通に落下するニャよ。高いところから、落ちないでくれニャ」
「あ、ああ。覚えとく。ニャルパンは鍛冶屋というより、なんでも屋だな」
「ふふふ、照れるニャ」
俺たちは、それぞれの装備を装着して、軽く体を動かしてみた。
「すごいなぁ、重さを感じないよ」
聖騎士ギルバートが、槍の型の動きを一通りやって、感心している。
「おお、すごい。魔導士はどうしても体力面が低いからの。これは代謝を上げて、疲労を取り去る効果もついておるな」
魔導士ティトも、ロッドを振りながら満足そうだ。
「わあ、ピッタリ。サイズも測ってないのに」
フィオも、自分の姿を鏡にうつして、クルクル回っている。
「そりゃもう、舐めるようにしっかり見て……あ、いやいや、大体の目測でわかるニャよ、このニャルパン様は」
ニャルパンは、ケルヴィン殿下の装備の装着を手伝っていた。
「これは最高だ。王室付きの武器、防具屋より、腕が上だな。うちの専属にしたい。ガルズンアース国に来ないか?」
ケルヴィン殿下が、ニャルパンを振り向いて言う。
「嬉しいニャけど、俺っちはこの炉から離れられないニャ。注文なら受けるニャよ」
「そうか……仕方ない」
「ケルヴィン殿下、みんなの回復薬は揃えたニャ?」
「ああ、もちろん。飛空挺ディアモンドに積み込んでる」
ニャルパンは、頷きながら腰に手を当てる。
「ケルヴィン殿下、素晴らしいニャ。魔法ばかりでは、回復が追いつかない時もあるニャんしね」
「そうだな」
ケルヴィン殿下とニャルパンも、仲良くなれて何よりだな。
その時だ。
ガタン!!
一瞬ふらついたフィオが、胸を押さえて俺を見る。
なんだ? どうした!?
思わず彼女に駆け寄った。
フィオは、俺を見上げて袖を掴んでくる。
「アーチロビン!!」
ゾク!!
彼女の声と同時に、俺は氷のような寒気を感じた。
うなじの毛が逆立つような、この感じ……なんだ!?
少し遅れて、魔導士ティト、聖騎士ギルバートも、表情が硬くなる。
「魔王……」
俺が言うと、みんな頷いた。
「ついに生まれ出でたか」
外に出る魔導士ティトの後を、俺たちも追う。
空一面には、シールドが張られていた。
神官たち、そしてテデュッセアの結界だ……。
空中には、魔王の住む島が浮いている。
真上にきた!?
そう思っていると、強烈な光が落ちてきた。
ガガガ!!
シールドを削るような音がして、振動が伝わってくる。
それを見ていた人々の悲鳴が、あちこちで上がり始めた。
「きゃー!」
「うわぁー!!」
逃げ惑う人々を避けながら、空を見上げる。
「挨拶代わりの一撃か!」
俺たちが、ここにいるとわかっているんだな。
早く来いと、催促されているようだ。
「魔王の居城へは、もう突入可能だろうか」
俺が上を見上げながら言うと、魔導士ティトが、頷いた。
「おう、余程自信があるのじゃ。結界を全て解いて待ち受けておるようじゃな」
……そうか。
かかってこいと、言っているのだな。
「ケルヴィン殿下!!」
俺は、ケルヴィン殿下に声をかけた。いよいよだ。
「飛空挺ディアモンドに乗り込むぞ!!」
ケルヴィン殿下はそう言って、俺たちを飛空挺の中へと誘導した。
一度地上を離れたら、俺たちは魔王を倒すまで戻れない。
「みんな……!」
俺は、乗り込む前のみんなを見回した。
誰一人欠けることなく、ここに戻る。
勝利と共に。
「必ずやり遂げて、凱旋しよう!!」
俺が言うと、みんな頷いた。
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