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ヴォルディバを撃退

みんなが拍手する中、暗黒騎士ヴォルディバが、グラスを床に叩きつけた。


「ふざけんな! てめぇらぁ!! 英雄っつったら、魔王を倒した勇者ネプォン一行のことだろぉがぁ!?」


「ネプォンだべか? ガルズンアース国王のごどか?」


「おうよ! どこの馬の骨か知らん無名の弓使いなんぞ、目じゃねぇ。英雄はネプォンと、この俺様、暗黒騎士のヴォルディバ様だ!」


暗黒騎士ヴォルディバは、机の上に片足を乗せて、腰に両手をあてるとそっくり返って笑った。


「ガハハ! 英雄はちまちまと、下っ端の魔物討伐やら、庶民の安全なんか相手にしねーもんよ。倒すのは魔王! 相手にするのは王族どもだ! あとは金だ! 綺麗なねーちゃんだ!!」


周りが白い目で見ているのを、暗黒騎士ヴォルディバは気づかない。


ヴォルディバの肩にもたれていた女性も、いつのまにかいなくなっていた。


「ちぃ! ねーちゃんがいねぇじゃねぇか!! おい、歌い手さんよ。くだらねぇしょぼい英雄より、俺たちのことを歌えよ」


「できません。私はネプォン王を、真の英雄だと思ってはおりませんので」


「あんだと!? こらぁ!」


酔った勢いもあるのか、暗黒騎士ヴォルディバは、ズカズカと舞台に近づいて行った。


止めようとした周りの人を、ヴォルディバは振り払っていく。


流石に酔っていても、一般人には負けない。


イキがるだけの強さがあるから、こいつの態度は改まらない。


だから、こいつはいつまでも変わらない。


みんな床に倒れされて、恨めしそうに暗黒騎士ヴォルディバを睨む。


「け! 庶民どもが! 逃げ隠れしか能がねぇくせに、でしゃばるんじゃねぇ!!」


彼はそんな捨て台詞を吐くと、吟遊詩人のそばまで行って、彼の胸ぐらを掴んだ。


吟遊詩人の竪琴が、床に落ちて酒場に響き渡る。


「うぅ……!」


「ほら、歌え。英雄ネプォン一行の歌を。この世の真の英雄だと」


「い、嫌です」


「ふざけんな。喉を潰すぞ!? 生業を失えば、てめぇみたいなのは、すぐに生活苦に落ちる……くくく」


「うぐぐ……!!」


吟遊詩人が、首を絞められて苦悶の声をあげる。


いい加減にしろよ!? あいつ!!


「ケルヴィン殿下」


「あぁ、行くといい、アーチロビン」


俺はケルヴィン殿下に、一言断りを入れると、素早く舞台にあがった。


おそらく、話すだけでは手を引かないだろうな。


暗黒騎士ヴォルディバの背中に、矢の鏃をピタッとあてる。


「彼を離せ」


「あぁ!?」


「離せと言った」


暗黒騎士ヴォルディバは、チラリと俺を見て、挑発するようにさらに手に力を加える。


変装しているから、俺とはわからないようだ。


「ひひひ、やるならやれよ。下手に俺が気を失えば、こいつの首もポッキリ折れるぜ?」


「飲んだ勢いとはいえ、やり過ぎだ」


「うるせぇんだよ! あんだぁ? お前も弓使いか? 肩に変なオウムまでのっけやがって、あの馬鹿弓使いを思い出すぜ」


「御託はいいから、彼を離せ。俺が相手になる」


「あーん? お前だぁ?」


「怖いのか? あんた。庶民いじめしか能のない、偽の英雄か?」


「野郎、もういっぺん、言ってみろ!?」


暗黒騎士ヴォルディバが、吟遊詩人を離して、俺に向き直る。


上手く引き剥がせたな。

彼は大丈夫だろうか。


「ゴホ! ゴホゴホ!!」


床に倒れた吟遊詩人は、喉を抑えて咳き込んだ。


俺はチラリと目線でフィオを見ると、フィオが微かに頷くのが見える。


彼を頼む、フィオ。


俺は、暗黒騎士ヴォルディバに視線を戻す。

かなり酔っているようだ。


でもこいつも、魔王討伐メンバーの一人。


嫌な奴だが、腕は確か。

おまけに耐久力が、異常に高い。


だが……。


「後悔するからな! 弓野郎! 遠距離攻撃を得意とするお前らは、近接戦闘が苦手だ! 体力も騎士より低い。俺の勝ちだー!」


叫ぶヴォルディバに、俺はわざとらしくため息をついた。


「はぁ」


「あんだ? その舐めきった態度はぁ!?」


「お前に、俺は倒せない」


「な!? この……!」


トス!


俺は後ろ手に、持っていた矢を床に落として刺した。


奴の敵意は十分。力場が、奴を包んでいく。


地面が淡くサッと光って、準備完了だ。


ヴォルディバは、拳を握って俺を殴ろうとする。


「う!?」


ヴォルディバの拳が、構えたまま動かない。奴はすぐに蹴りに変えて、軸足を踏み込んで来た。


左軸足、右足でローキックとハイキックの連続技。これも変わらない。


前は無理矢理組み手させられて、よく喰らったな……。


その自慢のキックも、今は不発。

足がプルプル震えて、ヴォルディバの顔が歪んでいく。


悔しいんだな。


「もうよせ。三度目はおすすめしない」


俺が忠告すると、奴は顔を真っ赤にして剣を抜く。


暗黒剣を使う気か。


相手の体力を吸い取って、自身のモノにする得意技。


この場合どうなるんだろうか。


そう思っていると、奴は暗黒剣術の構えをとった。


「暗黒の禍つ力よ、我が剣に宿り、敵の血を吸い尽くせ! ブンゼ・ゲアイス!!」


体力全吸収技か……。

ヤケクソになってやがる。


奴の剣が黒く光って、奴自身の体力を吸い上げた。


「あぁ!?」


暗黒騎士ヴォルディバは、目を見開いて自分の剣を見つめている。


「な……なぜ、これは……どうし……」


吸い上げられたヴォルディバの体力は、俺の中に入って来た。


奴の体力数値は、おそらく1だろう。


そのまま、暗黒騎士ヴォルディバは、泡を拭きながら倒れる。


しばらく寝てろよ。


「わぁー!」


「ひゅー! 最高だぜ!!」


客席から歓声があがって、スタンディングオベーションが起こる。


ヴォルディバに薙ぎ倒された人々の溜飲が、少しでも下がったならそれでいい。


俺は、吟遊詩人を抱えて、舞台袖に入った。


楽屋の前に、フィオたちが来ている。


「入ろう」


俺たちは中に入り、フィオが回復魔法を唱えて、吟遊詩人はようやく顔色が元に戻る。


「ありがとうございます」


彼は深々と頭を下げた。


よかった、喉も損傷が回復してるみたいで。



「あの、俺たちは……」


と、言いかけると、彼はにっこり笑って顔を上げる。


「知っています。あなたの足音」


「え」


「あなただ。私の英雄」


読んでくださってありがとうございます。

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