エスカレート
両親の仕事が順調だったみたいで
住んでいた家の裏の田んぼに新しく家を建て
その横に大きな工場を建てることになった。
新しい家はかなり広くて
美容師免許を持っている母が
知り合いを呼んで趣味程度に美容サロンが出来る部屋や
父の趣味である麻雀部屋や人が来た時にもてなす用のリビング
家族で過ごせる大きいリビングや
両親の寝室にはシャワールームがあるなど
見てわかる程の豪邸だった。
家の中ではかなりの大型の犬を飼ったり
学校の友達もみんな羨む良い家、良い家族。
しかし私はリビングの片隅でしか
食事をさせてもらえなかった。
どんなに広い家に住んでも
私の居場所なんてどこにもなかったのだった。
時には犬のゲージの中で寝かされたり
皆が寝静まるまで部屋の隅で正座させられたり
弟がコソッと食べ物をくれたが
ご飯抜きなんてよくあることだった。
新しい家に住み始めてから
私への虐待はエスカレートした。
父が背中をかくための竹やプラスチックでてきた
孫の手でお尻を叩かれ蚯蚓脹れのように腫れたり
丸めた雑誌で顔を叩かれたり
口の中に一味唐辛子を大量に入れられたり
お風呂に沈められたりもした。
これらのことは私が空腹に耐えられずに
家のものを隠れて食べたからである。
そして今でも消えない傷となって残っているのが
隠れて物を食べたときに母が私に向かって
「人のものを勝手に食べるなんて泥棒!!!!」
「泥棒の手なんか無くしてやる!!!」
そう言いながら私の腕を
ハサミで切り始めたのだ。
誰も私を助けてくれない...