異世界旅行〜準備編〜
〜2002年 日本〜
「帰りにレンタルしたいのあるんだが、あるかな?」
「あの作品か? 人気だけどマニアックだから入荷は少ないと思うぞ……」
夕暮れ時、買い物の帰路につきながら友人と話している俺。
ポスターにフィギュア、今日は非常にいい収穫だ。都内にある洋物おもちゃの取り扱い店にはほんとに感謝しかない。
「じゃ、またな。そろそろ寝ないと隈がヤバいぞ。」
「分かってるよ。お前もな。」
寝不足なのは俺が悪い訳では無い。
最近は俺の好みの作品が深夜でテレビでやるくらいになってきた。少し前なら、レンタルビデオ屋の奥に人目を忍んであるような作品達がテレビで見れるのだ。
ほんとに、ほんとに素晴らしい時代になった。
カーンカーンカーン
「今日はもう上がるぞ!」
俺の街も変わり始めている。工事が至る所で始まり、昔なじみの店が少なくなってきた。
変化はとてもいい事だ。当たり前は永遠に続くとは限らない。
だが、少し悲しい気持ちになるのも本音だ。
(さて、明日は見積もり貰って図面書くか)
なんせ、俺はこの変化の動力源でもあるから。
物心ついた時から親父の見ていた画面が気になっていた。
暗い空間に浮かぶ巨大な船、見ただけで嫌悪を覚えるクリーチャー、人なのかも分からない生物、そして星々煌めく世界での戦い。
俺はすぐにSFの世界にハマった。
親父に連れられて沢山の映画を見に行かせてもらった。
腹を食い破る怪物、沢山の触手うごめく人ならざるモノ、光る剣で戦う戦士。
仕事に就く直前、日本ではそれらに影響されたアニメが沢山出てきた。
手のひらで宇宙を作り上げたエスパー、装甲を身にまとい家族と戦う悲しい戦士……
あと海外で人気になったものすごくグロかったアレとかね。
今は仕事をしながら、休日には友人と買い物に行く日々。
そろそろ給料貯めて、DVDレコーダーが欲しいところだ。
今日は帰って見たいのがある。まさかあの作品の前日譚が見れるとは夢にも思わなかった。
こうやって少し不思議な世界を感じられるだけで、オレは幸せだ。1人でも寂しくないと強がっている。
「さて、レンタルされてるかな……マクロ」
「あ、危ない逃げろ!!!!!!!」
変化は突然に、終わりも突然に来るものだった。