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パーティー結成

「ギルド長、もう一方B級で説明を受けていないという方がいらっしゃいましたー」

 一番最奥の部屋をノックしながら、部屋のドアを開ける。相手の返事を待つ前に開ける辺りが、性格を表している。

「またか……」

 部屋の中には、ややげっそりとしたガタイのよいギルト長と、黒髪に濃い紫の瞳の私と同じくらいの年の男がいた。背にはかなり大きな、黒曜の大剣を背負っている。彼がもう一人のB級なのだろう。ドアを開けて入ってくる私たちにも、その冒険者は眉間にシワを寄せたままで機嫌の悪さを隠そうともしない。

「こちら、B級魔導士のリアさんです。で、リアさん、こちらが同じくB級剣士のコウさんです」

「いや、あんた、私たちお見合いにきたわけじゃないんだから」

「えーやだぁ。そんなつもりじゃないんですよー」

 自信満々に相方にどうだと紹介されても、そういう問題ではないだろう。

「一人では昇級させることが出来ないから、これと組めってことか」

「これ、とは、どういう意味かしら。こんな躾もなってないような猿と、パーティーなんて組めるわけないでしょ」

「てめぇ、今猿って言ったのは、俺の事じゃねーだろうな」

「あらやだ、言葉通じたの」

「んだと」

「何よ」

 机をドンと叩き、コウと呼ばれた男は立ち上がる。私だって十分イライラしているのだ。引き下がる気はない。なんでこんな風に、残り者同士で組まなければいけないのか。

「お前ら、いい加減にしないか」

『は? 元はと言えば、説明不足なギルドが悪い』

 語尾こそ違うものの、見事に声が重なる。

「やだー、もう二人とも息ぴったりじゃないですか」

 この場を和まそうとしているのか、天然なのか。立ち上がったコウは、ため息をついてもう一度ソファーへと腰かける。

「今回のことはギルドのミスだ。代表として謝らせてもらう。すまなかった。二人のためにも、一度コンビを組んでクエストをこなしてもらいたい。謝罪以上のことは、追って考えさえてもらうから」

 ギルド長は深々と私たちに頭を下げた。元A級冒険者で、この街の冒険者ギルドのトップが頭を下げている以上、受け入れないわけにもいかない。

「俺たちの他にも、説明を受けていない奴らがいないか、徹底的に確認してくれ」

「ああ、分かっている。本当にすまなかった」

「……で、どうすんの」

「組むしかないだろ。それがA級への条件なんだ。だが俺の足を引っ張った時点で、ダンジョンに捨てていくからな」

「それは私の台詞よ。他のB級なんかと一緒にしないでちょうだい」

 そう、ここまで一人でやって来たという自負は私にもある。ただの魔導士という、後援職だと思われてたまるもんですか。

「きゃー、コンビ結成の瞬間ですねー。わたし、初めて見ました。そうだ、コンビ名どうします?」

 一人明らかにテンションがおかしい奴に、私たちはため息をついた。

「いるの、コンビ名なんて」

「えーだってS級のパーティーはよく付けてるじゃないですかぁ。それ以外だってうちのギルド所属にも、炎の狼ファイアーウルフとか疾風の風とか、暗黒の冥王騎士団とか」

「うわー、だっさ」

 無理やりのあて文や、なんだか名前倒しになりそうなものとか。そう言われれば、最近は駆け出しのパーティーもこぞってパーティー名を付けているとは思っていたが、ここに勧める奴がいるせいか。名前ばかり先行したところで、実力が伴わなければ意味がないと思うんだけど。

「ダブルA」

「私たちの目標みたいな?」

「んだよ。悪いか」

「ま、いいんじゃない。分かりやすいし、変な名前よりかはいいと思うわよ」

 そうそこが、私にとっても最終目標だから。どうせ、それ以上は進めない。もしかしたらそれは、コウも一緒なのかもしれない。そう考えるとほんの少し、そうほんの少しだけ自分に似たこの剣士のことが気になってきた。

「とりあえず、よろしくね。私はリアよ。レベル50の魔導士」

「コウ、レベル51だ」

 私の差し出した手に、少し考えた後、コウが手を出し握手をする。ゴツゴツとした剣士らしい、傷だらけの手だ。でもだからこそ、安心が出来る。冒険者としての手や傷は、その人が今まで苦労をしてきた証でもあるから。

「ねぇ、B級のクエストを見繕って欲しいんだけど。クエストによって準備が変わって来るし」

「はい、今探しますねー。あのう、それでそろそろわたしの名前も覚えて欲しいんですけど。わたしはアルマですからねー。受付のお姉ちゃんと言っても次からは返事しませんよ?」

「はいはい。分かったから、とっとと探してちょうだい」

「はーい」

 ややスキップするように、嬉しそうにアルマが部屋を出ていく。確かに、ほぼ毎日のように顔を合わせるというのに、お姉ちゃんではさすがに失礼か。彼女になるまでは名前の概念すら失念していたからな。もしかすると、愛想が悪い一因は私たちにもあったのかもしれない。

「今日はクエストを確認して、用意があるから明日出発でいいかしら?」

「ああ、それで構わない。どうせさっき他のクエストから帰ってきたばかりで、換金やら道具の補充が必要だからな」

「じゃ、明日の朝またここで」

「ああ」

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