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番外編4

お待たせした(待ってない)元彼ざまぁ?編です

今日は休日だけれど、楓が友達と遊びに行っているので、これといってすることが無い。私も出かけようかなと考えていると電話が鳴った。


着信:葵ちゃん


……葵ちゃん? 前に会った時に連絡先は交換したけれど、電話がかかってくるのは初めてだ。

葵ちゃんともう1人の友達と遊びに行くって言っていたから楓も一緒なはずなのに何かあったのかな、と思いつつ電話に出た。


「もしもし?」

「あ、結菜さん、葵です。今大丈夫ですか?」

「大丈夫。何かあった?」


電話に出ると、葵ちゃんは少し慌てた様子だった。何かあったのは確実みたい。


「それが、ファミレスに居たら楓の元彼とその友達が入ってきて。入口近くの席だったのですぐ見つかっちゃって……もう注文もしちゃってるので帰る訳にもいかなくて」

「あー、二股男?」

「そうです。しかもあいつわざわざ隣に座ってきてるんです」

「うわ、どんな神経してるの……」


その光景を思い浮かべてゲンナリした。きっと楓は冷気をまとっていることだろうな、と楓はもちろん、巻き込まれた友達たちが気の毒になった。


「それで、もし結菜さんがお時間あれば迎えに来て貰えないかなと……」

「もちろんいいよ。それなら車で行くから、場所送っておいてくれる?」

「すみません、よろしくお願いします」


電話を切り、楓と友達を迎えに行く準備を始めた。

服装は普段通りでいいかな。どうでもいい相手に説明も面倒だし、男だと勘違いさせておいた方が都合がいい。



---


はー、ほんと最悪。せっかく葵と朱里と楽しく話してたのにまさかこいつに会うなんて。注文前だったら帰ったのに、ほんとタイミングが悪い。


「おい、聞いてる? 久しぶりだなって」


図太くも隣のテーブルを選び、話しかけてくるけどシカトを続ける。こいつと一緒に来ている友達は状況が分かっていないようで困惑していた。


「……隣の子、お前の知り合い?」

「元カノ」

「……は?」


見かねて一緒にいた子が確認しているけれど、返答を聞いて絶句していた。

その間にちょっとごめん、と葵が席を外した。


「この前別れたんだけどさ、何回連絡しても返事ないから会えてよかったわ」

「お前、それ完全に終わってるだろ……」


お友達は常識人みたいで安心した。


「楓、二股かけられて別れたって言ってた人?」

「そう」

「別れて正解だったね」


朱里が呆れたように言うけど、本当にその通りだと思う。ご飯を食べ終わったら速攻店を出ようと決めた。

元彼は私が全く反応しないので諦めてメニューを決めることにしたみたい。


「楓、伊藤さんに連絡してみたら、迎えに来てくれるってさ」

「連絡してくれたんだ。ごめんね、ありがとう」


普段伊藤さんなんて呼ばないのに、あえて呼び方を変えた葵の意図を察して結ちゃんとは呼ばないでおく。こいつに説明するつもりなんてないし。


「なあ、伊藤さんって誰?」

「……あんたに関係ある?」


シカトするつもりがつい答えてしまった……


「やっとこっち向いたな」

「こっちはあんたの顔なんて見たくないけどね」

「そう言っても俺の顔好きだっただろ?」

「顔だけね」


よっぽど自信があるのかニヤリと笑っているのがムカつく……なんでこいつと付き合ってたんだろう? 顔がタイプだったからか。


「なんで二股かけて振られた元カノ相手にこんな自信満々なの……??」

「分からないし理解したくもないよね」


葵と朱里が話しているけど、全く同感……巻き込まれる形になったお友達も、うわーという表情をしている。


「あんたさ、同時に付き合ってたあの子はどうしたの? 私に連絡する暇があるならそっちに連絡すれば? 迷惑なんだけど」

「お前にフラれたあと、向こうにもフラれた」

「はっ、自業自得ね」


思わず鼻で笑ってしまったけれど……ざまぁw


「ってことでさ、より戻さねぇ?」

「……は? 有り得ない。お断り。 もう話しかけてこないで」


何がどうしてそうなったの? これ以上話したくなくて、これで話はおしまい、と話を打ち切った。


「葵、朱里、変なことに巻き込んじゃってごめんね」

「大丈夫だけど、色々とヤバいやつね……」

「ほんと。確かにイケメンだけど、中身がね……」


2人と話し始めても、まだしつこく話しかけてきていたけれど、友達に止められて渋々静かになった。このまま帰るまで大人しくしていたらいいけれど。

それぞれ頼んだものが運ばれてきて、食べながら2人と話している間も視線は感じたけれど、気付かないふりをした。


「美味しかった!さ、帰りますか」

「待てって」


食べ終わって直ぐに2人を促して、伝票を持って会計に向かおうとすると腕を掴まれた。


「離して」

「そんなに嫌がることないだろ?」

「嫌に決まってるでしょ」

「なんで?」


なんで嫌じゃないと思うのかこっちが聞きたいわ……2人が心配そうに見ているので、大丈夫、と頷いて仕方なく向きあった。


「あのさ、もう別れてるって分かってる? さっきも言ったけど、こっちはもう顔も見たくないわよ」

「俺が浮気したから妬いてるんだろ?」

「は?」


え、今までの私の対応のどこにそう思う要素があったの……? 通路で話しているから、周りからの視線も集まり始めている。そりゃ近くで修羅場だったら見ちゃうよね。


「やっぱりお前が1番だって気づいたんだよね。ほら、俺ってイケメンだし、お前だって黙ってたら可愛いしお似合いだろ?」

「……」


あまりの発言に私も周りもポカーンとしてしまった。……こいつ大丈夫かな? 付き合ってる時はもっとマシなやつだと思ってたけど。


「浮気なんかして悪かったよ。もうしないからまた付き合ってくれるだろ?」

「嫌。いい加減、手離してくれる? 気持ち悪い」

「……!! こっちが下手に出ればいい気になりやがって」

「……っ」

「楓に触れないで貰えるかな?」


勢いよく手を離されて、叩かれる?! と硬直すると、後ろから1番安心出来る声が聞こえた。

止めようとしていた周りも、当の本人も手を振り上げたまま、第三者に視線が集中した。


「楓、大丈夫?」


そんな視線をものともせず、結ちゃんは私と元彼の間に入り、屈んで視線を合わせてくれた。


「おっと」


勢いよく抱きつくと、ちょっとびっくりしたようだったけれど、しっかり受け止めてくれた。


「遅くなってごめんね。これから会計?」

「うん」


そう言うと、結ちゃんはさりげなく私が持っていた伝票を取り、葵と朱里の方を向いた。


「葵ちゃん、連絡ありがとう。えっと……」

「あ、鈴木 朱里です」

「朱里ちゃんも楓に付いててくれてありがとう」


「なあ、あんた誰?」


私を抱きしめたまま会話を進める結ちゃんに、元彼は明らかにイライラしている。


「見て分からない? 楓の恋人です」

「は……? もう彼氏出来たのかよ? お前の方こそ浮気してたんじゃねえの?」

「楓は君とは違う。君が浮気してくれたおかげで楓と付き合うことが出来たよ。ありがとう」

「なっ……!」

「ここで騒いでも店にも他のお客さんにも迷惑だから、話があるなら外で聞こうか?」


そう結ちゃんに言われて、初めて周りから注目されていることに気づいたみたいだった。元彼に向けられる視線が明らかに冷ややかで急に狼狽え出した。

自分の顔に自信がある元彼でも、結ちゃんを見て戦意喪失したみたい。内面も顔も勝てないというのは、ここにいる全員が分かっているだろう。

いつもは穏やかだけれど、私が叩かれそうになったのもあって表情は険しくて、私のために怒ってくれていると思ったら、こんな時なのに嬉しくなってしまった。


「どうする? この際きちんと話しておいた方がこっちも安心できるんだけど」

「……ちっ」


結ちゃんが再度確認すると、元彼は舌打ちをして席に戻って行った。何も悪くないのにとばっちりで冷ややかな視線を浴びることになったお友達に心底同情するよ……


「お騒がせして申し訳ありません」


元彼が居なくなると、結ちゃんは私を離して他のお客さんに丁寧に謝罪してくれた。私も一緒に頭を下げたけれど、怒る人はいなくて、かっこよかった、何事もなくてよかった、等の暖かい言葉をかけてもらった。


「さて、それじゃ出ますか」


そう言うなり、結ちゃんはレジに向かい、店員さんにも騒がせたことを謝罪して、3人分の会計を済ませてしまった。


「結菜さん、おいくらでしたか?」

「2人が一緒にいてくれて助かったからご馳走させて?」


葵が聞くも結ちゃんは払わせるつもりは無いらしい。


「結ちゃん、それだと私何もしてないよ?」

「うーん……大変だったねってことで? レシート要らないって言っちゃったから金額分からないな~」


理由を考えるのが面倒になったらしい。レシート、絶対わざと受け取らなかったでしょ……


「すみません、ご馳走様です」

「いいえ。はい、出て~」


葵と朱里がお礼を言うと、これで会計の話はおしまい、と出口のドアを開けて私たちを先に外へ出してくれた。


「この後はどういう予定だった? 車だから送っていくよ」

「ファミレスで決める予定だったから、この後の予定は決まってなくて。車で決めてもいい?」

「私はいいけど、2人は大丈夫? ほぼ初対面の人の車は抵抗あるかな?」


あ、そんなこと全く考えてなかった……


「ごめん、そうだよね。 車じゃない方がいいかな?」

「私は前に会ったことあるし、楓と結菜さんがいいなら全然大丈夫」

「私も。結菜さんは初対面だけど、いつも楓から話は聞かされてて人となりは分かってるから」


それなら大丈夫そうだね、と結ちゃんの車に向かった。ちなみに、結ちゃんは国産のミニバンに乗っている。


「わ、かっこいい!」

「ありがとう。どうぞ乗って。私は車に興味がなくてさ、楓に好きな車聞いたんだ」

「結ちゃん、それだと私が買わせたみたいじゃん?!」


朱里が車を見るなり言うと、結ちゃんが私が選んだ、と言うから慌てて訂正した。

2人は2列目、私は3列目に行こうとしたけれど、助手席に追いやられてしまった。


「去年くらいにカタログをいくつか見せられて、この中で好きな車は?って聞かれて。機能とか凄くて、何気なくこれかな~って言ったら1ヶ月後くらいに納車されたの……おかしくない?」

「どうせなら好きな車に乗った方がいいかなって」

「もう迂闊なこと言えないよ。何買ってくるか分からないし」

「そんなに警戒しなくてもいいのにな……」


なんだか後ろの2人が静かだな、と思って振り返ると、ニヤニヤしてこっちを見ていた。


「……何?」

「いや、愛されてるな~って。 ね?」

「うんうん」

「……っ?! もう私も後ろ行く! ……よし、本題ね。この後どうする?」


ふたりで顔を見合せ頷きあっている。急に恥ずかしくなって私も後ろの席に移動した。最初からこっちに座ればよかった……


「うーん、カラオケか映画あたり?」

「映画は今見たいの無いかな……カラオケ行く? 」


葵は今見たい映画が無いらしい。私も今何が上映されているのか知らないけれど。


「じゃあカラオケにしよう! 結ちゃん、すぐ近くなんだけど、送って貰ってもいい?」

「ん。分かった。車出すよ」

「ありがとう」


徒歩10分位の場所だったので話していたらすぐに到着した。


「良かったら結菜さんもご一緒にどうですか?」

「私は大丈夫。3人で楽しんで。お誘いありがとう。楓、もし飲むなら飲みすぎないようにね?」

「……飲まないもん!」

「ほんとかなぁ……葵ちゃん、朱里ちゃん、楓をよろしくね。」

「はい」


葵が結ちゃんを誘っていたけれど、断って帰っていった。結ちゃんにも言われたし、今日は絶対飲まないようにしよう……お酒は好きだけれど弱い方で、飲むと泣くか寝るかが多いらしい。迷惑はかけていないと思いたい。


「はー、話には聞いてたけど、ほんとイケメンだった……」

「だよね。私初めて会った時男の人だと思ったもん」

「服装もメンズが多いし余計かな? 女の子っぽい服装嫌いなんだって」

「似合いそうなのにね! それにしても、あんな人がそばに居て、よく元彼と付き合おうと思ったね?」


部屋に入って、歌わずに話で盛り上がっていると、朱里が心底不思議そうに聞いてきた。


「あー、顔がタイプだったし、あそこまでじゃないと思ってたんだよね……」

「早々に別れて正解だったね。結菜さんも言ってたけど、元彼と別れたことが1つのきっかけでもあったんだろうし」

「ほんと、その点だけはあいつに感謝だわ」


その後も恋愛トークで盛りあがったり、たまに歌ったり、元彼のことはきれいさっぱり忘れて楽しく過ごした。



ざまぁって難しい……なんか思っていたのと違くなりましたが、お読み下さりありがとうございました。

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