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番外編1

葵side


最近、親友に恋人ができた。付き合う前から、口を開けばその人のことばっかりで、明らかに好意があるんじゃ? と思っていたけれど、やっと自覚して付き合うことになったらしい。


あれだけ大事にしてくれる人が近くにいたから、彼氏が出来ても無意識に比べていて、長続きしなかったんじゃないのかな……


ずっとお姉ちゃんみたい、って言っていたけど、向こうは妹に対する扱いじゃなかったもんね……


1度だけだけれど、付き合い始める前の2人に会ったことがある。


---

「あれ、葵?」


土曜日にモールで買い物をしていると、聞き覚えのある声に呼ばれた。振り向くと、楓が駆け寄ってくるところだった。既に何か買ったのか、袋を持っている。


「楓も買い物?」

「うん。結ちゃんとご飯食べようって約束してて、暇だから早く来てぶらぶらしてた所」

「なんだデートか」

「違いますー」


楓はなんでデートになるの、と笑っている。


「ねえ、葵はこの後予定あるの?」

「もう少し見て回って、お昼食べて帰ろうと思ってたところ」

「それならさ、一緒にご飯食べない?」

「いや、それは結菜さんに悪いんじゃ……ってもう電話してるし」

「聞いてみるね!」


聞いてみるね、という前にもう電話をかけ始めていた楓に苦笑する。


「是非、だって! よく葵の話してるから会えるのが楽しみって言ってたよ」


向こうは2人が良かったんじゃないのかな、と思ったけれど、もうOKが出てしまったので時間までお店を見て回ることにした。



「葵ちゃんかな?」


待ち合わせ場所に着いたところで、楓がトイレに行ったので飲食店エリアの休憩スペースで座って待っていると、声をかけられた。


「えっと……?」


見上げてみると、雑誌に載っていそうなイケメンが居た。いや、こんな人知らないんだけど……

よほど不審げな顔をしていたのか、向こうも困惑しているみたい。


「楓から聞いてないかな? 伊藤 結菜です」

「え……?! あ、橋本 葵です」

「合ってて良かった。前に楓から写真を送ってもらった事があって」


なんで知ってるんだろう? と顔に出ていたのか、これ、と見せてくれた写真には確かに楓と私が映っていた。成人式の時、撮った写真を送っていい?って聞かれた気がする。

そういえば、話はさんざん聞いているけれど、結菜さんの写真を見せてことは無かったな、と今更ながら気づいた。パッと見男性に見えて、この人が結菜さんだとは思わなかった。

写真を撮らせてくれない、とぼやいていたことがあったから楓もそんなに持っていないのかもしれない。


「お待たせ……って結ちゃんもう着いてたんだ!」


自己紹介を終えたところで、楓が戻ってきた。


「ついさっきね。葵ちゃんと話してた所。何かいいのあった?」


そう言って結菜さんは自然に楓から買い物袋を受け取った。楓も特に疑問に思っていないからいつもの事なんだろう。


「うん。欲しかったものを見つけたから買っちゃった」

「良かったね。さて、2人とも何食べたい?」


喜ぶ楓を見る表情が完全に恋人に向けたものに見えるのは気のせい?


「うーん、和食かラーメンかな~? 葵は食べたいものある?」

「その2つだったら和食かな」


じゃあ和食だね、とスムーズに決まり、店に着くとお昼より少し早めの時間もあってか待たずに入ることが出来た。


楓の隣に私、楓の正面に結菜さんが座り、メニュー表を広げる。

私はすぐに決まったけれど、楓はなかなか決まらなくて悩んでいる。結菜さんはメニューを見ていないけど決まってるのかな?


「葵は決まった?」

「うん。これにする」

「美味しそうだよね。葵がそれにするなら私はこのどっちかにしようかな」


2つまで絞れたみたいだけれど、これはまだかかりそうかな、と思っていたら結菜さんが口を開いた。


「楓、悩んでるのってどれ?」

「この2つ」

「私が片方頼むから半分しようか」


そう言うと店員さんを呼んで、3人分の注文を済ませてくれた。メニューを見てなかったのは、楓が悩むのを分かってたからだったみたい。

料理が来るのを待っている間、私と楓が話をしているのを楽しそうに聞いてくれていた。


「美味しそう!」

「だね。これ、半分にしたやつね」

「ありがとう!」


料理が揃って、結菜さんは取り皿におかずを取り分けて楓に渡している。こういうやり取りも慣れている感じがするな。


「それで、楓が……」

「へー! そんなことがあったんだ」


ご飯を食べながら、結菜さんと共通の話題の楓の事で盛り上がっていると、横から視線を感じた。

え、めっちゃ睨まれてるじゃん……彼氏がいた時に同じような状況になったことがあるけど、こんな風に睨まれたことないよ? 明らかに嫉妬だよね?

これで姉として好きって言うのは説得力ないわー


結菜さんは単純に放ったらかしにされたことが原因だと思っているみたいで、私と楓の様子を伺っている。


「楓? 放ったらかしでごめんね?」


結菜さんが謝ると、チラッと結菜さんの方を見て怒ってます、というように頬を膨らませた。


「かえでー? ごめんって。機嫌直して?」

「……っ」


楓を見つめる視線も声も甘くて、私まで恥ずかしくなった。それを向けられている楓は耳まで赤くしている。


「デザート奢ってくれたら許す」


ぽつりと楓が言うと、結菜さんが嬉しそうに笑った。ねえ、なんでこれで付き合ってないの?


「もちろん! なんでも好きなもの頼んで。もちろん葵ちゃんもね」

「え、私まですみません」

「よし! 高いやつ頼んじゃお! 葵はどれにする?」


ウキウキしながらメニューを見せてくる楓に、いいのかな、と結菜さんを見ると、視線を外さずにじっと楓を見つめていた。なんか色々溢れてません? ブラックコーヒーにしようかな……


結局、デザートだけじゃなくてご飯代も出してもらってしまった。2人はこの後映画を見に行くらしく、誘われたけれど丁重にお断りした。

デートじゃないって言ってたけどデートだよね?

ほんの数時間だったけれど、糖分過剰摂取だったな……


---

当時の2人を思い出し、付き合う前であれなのに、付き合い始めた今はどれだけイチャついているのだろうかと想像してニヤニヤしてしまった。


きっと結菜さんは楓に振り回されて、それでも嬉しそうに笑っているんだろうな。つんつんしている楓も結菜さんの前では甘えられてるのかな?


次に会う時は他の友人たちも巻き込もうと考えて楽しくなってきた。近いうちに2人が一緒にいる時に会えるといいな。


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