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第九話 ゴッドハンド

 旅に出てから三日目の朝。眠気眼をこすりながら朝食を食べる。


「(NEW WORLD RECORD!)もうじき検問所か」


「ええ」


「王家の剣や服を検問所で見られると面倒なことになるわね」


「うむ」


 知り合いに隠し持っていてもらおうかなと思ったけど下手すると巻き込んでしまう可能性があるためやめておいた。


「お店の預かり所を考えたけど、いつ戻って来るかわからないから半永久預かり。そうなるとかなり高いから現実的ではないわね。適当な場所に隠そう」


「わかった」


 近くにあった森に侵入。ある程度奥まで入って穴を堀り、そこに王家の品を埋めた。


「……いきましょう」


 そこから立ち去る時、エマは少し悲しげな表情をしていた。まあ、そうだよな。王族のエマはここにおいていくことになるわけだ。18年間一緒だったわけだから寂しいものだろう。


「これからは新しいエマになるわけだ。よろしくな」


「ええ、変な気分ね」


「基本変わらないからな」


 精一杯に、自然にエマを励まそうとする俺。こーいうときに良い言葉が見つからない、言葉をかけられないってのは自分が人としてまだまだってことを実感するな。


「そうすると名前も変えないとまずいかな?」


「いえ、それは大丈夫。魔族でエマは多いから」


「なるほど」


「それでは予定通り、俺とフォースは人族側の検問所を。エマは冒険者になってから魔族側の検問所をそれぞれ通ろう」


「わかった」


「じゃあいくわね」


 別れを告げエマは魔族領へ。


「いこうかフォース」


「フォス」


 しばらく歩くき検問所に到着。


「ここは検問所だ」


「冒険者です」


 冒険者カードを見せる。


「了解した。それでは身体検査と荷物の検査をさせてもらうぞ」


「どうぞ」


 身体検査と言っても道具袋の中身を見るくらい、荷物の方も禁制品があるかどうかの確認くらいだった。一般人の場合、もっと厳しい審査、更に膨大な書類が必要となる。


「その獣は聖獣か?」


「そうです。仲間でして」


「一緒に戦う仲間みたいなものかな。ああ失礼。検問の仕事でそれを聞いたわけではなく興味本位で聞いた」


「構いませんよ」


「人と一緒にいるのは珍しくてな」


「ハハハ」


 フォースは少し緊張しているようだ。


「通っていいぞ」


「はい」


 トラブルなく通り抜けられた。一安心だ。フォースのことを厳しく突っ込まれるかなーと思ったが考えすぎだったかな。

 地図を取り出しエマとの待ち合わせの場所を確認。


「ここから一時間ってとこか」


 森の中の道を歩き待ち合わせ場所に到着。


「エマは冒険者になるところからだから明日になる可能性も高いな」


 キャンプの準備をする。フォースは草を食べ始めた。

 昼食を作り食事をする。


「ふむ、普通の料理だな。もうエマの料理が恋しくなるとは。俺は案外寂しがり屋なのかもしれないな」


「フォースッ」


 なんだかフォースが俺をはげましてくれているように見えた。その日は結局エマは来なかった。

 次の日、夕食の支度をしているとエマがひょっこり現れた。


「おまたせ」


「きたか」


 笑顔で迎え入れる。


「特に問題がなかったけど冒険者になるのに時間がかかってね」


「初心者講習やらで半日潰れるからな」


「ささ、丁度ご飯が出来たところだ。食べてくれ」


「いただくわ」


 エマが来ただけで嬉しかった。ホント寂しがり屋なのかもしれないな。




 魔法使い達の村、魔法会館。

 闘技場、そこでは複数の男達が一人の女の子の周りを取り囲んでいた。


「シャー!」


「オリャー!」


 二人の男が女の子に襲いかかる。


「ハッ! セイっ!」


 二人の男の拳をほぼ同時にさばき、蹴りのカウンターを浴びせた。


「面倒です! 皆まとめてかかってきてください!」


「ウオー!」


「テリャー!」


「ウリィヤー!」


 十数人の男が一斉に女の子に襲いかかった。


「魔法拳、炎魔回し蹴り」


 炎に包まれた女の子が男達に回し蹴りを放つ。


「バシュウ!」


「グワー」


「ギャー!」


 数人を一気に蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた男は炎に包まれている。

 残った男達は彼女を恐れるあまり体を震わせながら立ち止まってしまっている。もはや戦意がなくなっていた。


「そこまで!」


「早く治療を」


「ふふふ、我が娘ながら恐ろしい力を持っているものよ」


「ありがとうございます、父上」


「遂に来たか、この時が。儂とやろうか、ミラよ」


「わかりました父上。いえ、ゴッドハンド・ポラッド」


「ポラッド様とミラ様のタイマンマッチだ! こうしちゃおれん、村の人達に知らせないと」


 30分後。


「これより、ポラッド様とミラ様によりゴッドハンドをかけた戦いが始まります!」


「お互い、よろしいですね? GO!」


「いきます父上!」


「来い!」


 力は互角、その戦いは壮絶を極め、村の半分を破壊、地面の形を変えてしまうほどだった。

 そして半日ほど戦い、遂に。


「ゴホォ」


「父上!」


「勝負あり!」


「フゥフゥ、強くなったものだ。おっと休んではいられないな」


「皆の者聞けぃ! 今よりミラをゴッドハンドに、666代目ゴッドハンドを名乗ることを許可する!」


「うおー!」


「ミラ様ー!」


「ゴッドハンド・ミラ様ー!!」


「おめでとう、ミラ」


「夢にまで見たゴッドハンドになれてうれしいです」


 涙を流すミラ。


「しきたりはわかるな。これから諸国を巡り腕試しをしてこい。もしどうやっても敵いそうにない者がいたらそいつをこの村へ連れてこい」


「はい、存じております」


「ならばゆけい。魔法会館の未来はお前にかかっている」


「はい!」

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