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第八話 人を駄目にする獣

「グルルゥ」


 魔獣の鳴き声、それも複数。剣を振り回してヤツラ追っ払った。


「さっきとは違う魔獣か」


 交代で見張りをしていた。


「ファ~ァ、おはよう。交代するわ」


「エマの言う通り見張りをつけて正解だったな。もう三回も魔獣が襲ってきたぞ」


「ハハハ、サバイバル経験があるからね。アイツラも生きるために必死なのよ」


「んじゃ寝る。おやすみ」


「おやすみ」


 テントに入って眠る。

 次の日。


「ふぁ~、おはよう」


「おはよう。昨日は四回も魔獣が襲ってきたわ」


 タラトンさんが言っていた旅は危険という言葉を思い出し納得していた。


「ご飯も出来たよ」


「おぉ、おいしそう!」


 干し肉と野菜をパンで挟んだサンドイッチ。色々具材が入ったスパニッシュオムレツと豆のスープ。


「う、うまい!」


「ふふ、ありがとう」


 食後、移動。


「なにやってんだありゃ」


「キシュァーー!」


「フォスゥフォスゥ!」


 川沿いの道を歩いていると数匹の魔獣達が川岸で暴れているのを見た。


「んー、あれは聖獣ね。一匹の聖獣を数匹の魔獣が襲っている感じかな」


 聖獣。基本的に襲ってくることはない。しかし警戒心が強く、人にはなつかない。


「助けてあげようか」


「OK。真っ白で毛がフカフカな方が聖獣だよな」


「うん、そう」


 牛くらいの大きさで羊以上にモッフモフの毛を装備している、顔の左右にに巨大なくるくるカール。モーツァルトみたいだ。こちらが聖獣だな。

 魔獣の方はワニのようなやつだな、それが5体。


「結構厄介な相手ね。バイトエンペラー、とにかくあの大きな口に噛まれたらおしまいよ」


「ふむ」


 剣を抜き一気に近づく。


「あっ、ちょっと」


「キギャーー!」


 一匹が口を開けこちらに噛みついてきた。俺はそれを避け、首元に斬撃、胴体と頭を切り離した。


「一人で突っ込むのは危ないって言おうと思ったけどそんなことはなかったね。剣の腕も立つのね」


「残りを片付けようか」


「了解」


 残りの四匹も瞬殺。


「大丈夫?」


「フォスッ、フォスッ!」


 エマに近づき腰辺りに頭をこすりつけている。


「怪我もないみたいだな、って警戒心が高くて人には近づかないんじゃなかったっけ?」


「助けてもらったってのもあると思うけど、私は昔から聖獣になつかれる体質? なのよ」


「魔族だからとかじゃなくて?」


「ええ、魔族にも本来なつかないよ」


「へぇ」


「聖獣関係の学者さんに聞いてね、「もしかしたら魔力がないからかも。しかしそれなら魔力がない人族にはなつくはずだ。そしてその魔力のない人族になついたという話は聞いたことがないな」と頭を悩ましていたわ」


「うーん、なんだろうね」


 それにしてもめちゃくちゃなついている。

 ……俺にはどうだろう。そーっと近づき頭をなでた。


「フォススッ」


 気持ちよさそうに撫でられている。


「おお、俺も聖獣になつかれる体質なのかな?」


「そうかもしれないね」


「はっはっは、かわいいやつだ」


 それにしても身体部分はものすごいモッフモフぷりだ。俺はゴクリと喉を鳴らし聖獣のボディを触りにいった。


「ファッサァ」


「!?」


 押したときの絶妙な抵抗感、優しく絡みつく毛、そして深々と入ってしまう腕。この子は人間をダメにする聖獣かもしれない。


「ファッサァ」


「フォッスフォッス!」


「ほぉーー!」


「……」


 エマが引くほど聖獣のモフリにはまる俺。しばらくモフった。


「こほん。なかなかさわり心地がいい聖獣だな」


「そ、そうね」


「フォスッ!」


「はっはっは、助けたお代はモフリでいいよ」


「さて、コイツラを解体しちゃおう」


「肉は美味、皮は頑丈で色々使える」


 解体したものを荷車に乗せ、出発準備を整えた。


「じゃあな、聖獣」


「フォスフォス」


「ん?」


 ここを離れようとしたら、聖獣も一緒についてきた。


「ついてきちゃったな」


「なつかれてついてきちゃうときが何回かあったわね。いつも走って逃げてたわ」


「んー、どうしようかな」


「さっき草を食べていたからエサは大丈夫そうだけど」


「そうだな、急ぐ旅じゃなし、つれていこうか」


「フォッスー!」


「フォスフォス」


「ん? もしかして荷車を弾いてくれるのか?」


「フォース!」


「ちょっとまっててくれ」


 袋から取り出したロープを聖獣に巻きつける。そしてそのロープを荷車の先端に取り付ける。


「よしいいぞ、動いてみてくれ」


「フォスフォス」


 荷車はまっすぐ動いた。


「こんなもんかな。後でもっといいものをつくるよ」


「ふふ、楽でいいわね」


「ありがとな聖獣」


「聖獣ってのは言いにくいわね。名前をつけましょうか」


「そうだなぁ。フォスフォス鳴くからフォースかな?」


「フォスッ!」


「気に入ったようね」


「よろしくな、フォース」


 こうして新たに人を駄目にする毛玉を仲間にした。

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