第三十五話 命拾い
「ウグッ」
ニングとトラドを起こす。
「済まなかったな。ついでに彼女は貰っていく」
「‥‥好きにしろ」
「はい」
(こいつさえ、こいつさえいなければ。しかし最後の最後で油断をしたな。私にはまだ奥の手がある。兄もファーンも知らないユニーク魔法。それをここで)
ファーンと話をしていると後ろから気配が。
「油断したな、この距離からなら避けられまい! ユニーク魔法「ハンドボウ」」
左手を弓、短剣を矢のかわりにして構えている。そしてその短剣がこちらへ飛んできた。
「グフッ!」
短剣が俺の心臓を貫いた。
「やった!」
「タイカン!」
「ククク、後は疲れ切ったファーンだけだ。それなら」
「ふぅ、危なかった」
「ズシャッ」
短剣を抜き出す。
「なにっ!」
懐から短剣が刺さった物を出す。
「内ポケットに辞書を入れておかなかったら死んでいた」
「そんな大きな辞書が内ポケットに入るわけがないだろ!」
ツッコミ通り、短剣が飛んできたのを見て道具袋に入れてあった本をとりあえず無理矢理、服の中に入れただけ。ホントはもっと自然なものでやりたかったラッキー命拾い。アドリブ力はまだまだだな。
「グエッ!」
トラドに峰打ち。
「俺は反抗する気力すらないよ」
「そうか」
「それなら一応大丈夫だと思うが、ゴッドハンドには手を出さないようにな。随行者の俺の力がこれだけなわけだ。俺が言わんとしていることはわかるな?」
「ああ‥‥」
ゴクリと喉を鳴らすニング。この手のやつには脅しは強めにかけておかないとな。
「いこうか、ファーン」
一旦ファーンの家へ。
「いくつか武器を持っていく」
「ふむ」
武器を荷車に乗せキャンプ場へ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「今日から彼女も一緒に旅をすることになった。みんな、よろしく頼む」
「私はファーン。よろしくね」
「よろしく」
皆挨拶をする。
「聖獣が居るんだ。それも三匹も?」
「フォス」
フォースたちが少し緊張しているな。ミラの時と同じような感じだから大丈夫だと思うけど。
「キュ!」
「ポー!」
「ハハ、よろしくね」
「結局どうなったんですか?」
「喧嘩を止めて終わり」
「止めたっていうか、タイカンが皆殴り倒してたよね」
「さすがタイカンさんです」
「えー? でもそのタイカンよりミラは更に強いんだよね?」
「いえ、タイカンさんのほうが」
「ああ、そう」
「まあそれはいいかな。んで結局兄さんがアルティメットマスター、私は一般人に」
「肩書は正直そこまで大事ではないと思います。無いのならその方が楽でしょう」
「確かにそうかもね」
実際重い肩書を持っているミラの言葉だ。非常に説得力があるな。
「それにしてもすごいユニーク魔法持ってるね。飛び道具部隊と200人の精鋭を無力化しちゃうなんて」
「あれは技だよ」
「魔法じゃないの!?」
「おう」
「私も見たかったです」
「スープが出来上がるわね。皆、お昼にしようか」
「はーい」
「おいしー!」
「ふふ、ありがとう」
「エマさんの料理は最高ですよ」
にぎやかに談笑する。もう仲良くなったか、いいことだ。
食後、これからのことについて話し合う。
「俺達は人族、魔族、獣人族が仲良く暮らすところがあると聞いてノンビリと東に向かって旅を続けてきたんだが、ここから東の領地でなにか知っていることはある?」
ファーンに話を聞く。
「そうだね。多分獣人族領にある街のことかな。いくつかあるって聞いた」
「へぇ、いくつもあるんだ」
「そこへは行ったこと無いけどね。ただ聞いただけ」
「どのあたりかわかる?」
「地図持ってる?」
「あるよ」
道具袋から地図を取り出す。
「この線が獣人族領をあらわしている。その線付近にあるって話だね」
「ふむ、まずは獣人族領を目指せばいいか」
「ここから馬車で三週間、歩きだと一ヶ月以上かかるかな」
「いつものようにのんびり旅かな」
「そうね」
「あー、そう言えば」
「どしたん?」
「この街には特殊な鍛冶施設があるって聞いたな。どんなのがあるんだ?」
「えっとね、溶岩炉に風力式光熱炉、高所超重落とし式鍛錬所、他にも色々あるね」
「そっかぁ」
「まあ溶岩炉以外なら私の頭の中に設計図がはいっているからそれらの施設を作ることは出来るよ。もしかしたら作る機会はあるかもね」
「ギュー」
ジェムがなにか咥えて自分の巣へ。
「あらかわいい」
ふふ、わかってるじゃあないか。
「なるほど、こうやって自分の巣にってええぇーー!」
急に大きな声で驚くファーン。
「どうした、そんなに驚いて」
「こ、これ、オヌバルトじゃない! 超少量だけど」




