第三十四話 油断しすぎ
(それはわかる。だが、やつはどうする?)
(一緒に殺してしまえばいいのです)
(なんだって!?)
(我々は覇道を目指す身。いずれゴッドハンドともやりあうことになるでしょう。それが早くなるか遅くなるかだけのこと)
(それは、そうだが)
(それに今ならそこにいるゴッドハンドの部下を確実に倒せます。我々の目を欺いたその手腕は見事なもの。だから、尚更ここで逃す手はない)
(ふむ)
長男ニングは俺に向かって言い放つ。
「問答無用!」
全員再度武器を持ち直した。
「タイカン、早く逃げて! ここにいたら死ぬよ!」
「大丈夫だ。任せな。ちょっと耳をふさいでて」
「? 一体何を」
「射掛けよ!」
「クッ、もうだめか‥‥」
『ぐぅぅーー! も、もうだめだぁーー!!』
心の底から声を出すと同時に、こりゃダメだ、絶体絶命だ感を周囲に撒き散らした。
「なんだ、今の奇声は?」
「兄さん、飛び道具部隊が‥‥」
「ん? たしかになかなか攻撃せんな」
「い、いや。部隊が一列になって」
「な、なにをやってるんだ!?」
左右にいる飛び道具部隊が列をなし、俺に向かって武器を構えながら近づいてきた。
「何が起きて‥‥」
「『絶対優位』発動」
ドラマや映画等で撃ち合っている最中、急に現れ主人公に銃を突き立て「残念だったな!」と早く撃てばいいのに陰謀について解説したり、その場で待機しておけばいいのにぞろぞろと主人公の前に集まりだしたりと、奇妙な行動をとっているのをたまに見ると思う。
その行動をさせるために編み出した技がこの「絶対優位」だ。どんな人間でも勝ったと思ったら油断してしまう。そこがこの技の肝。こちらがどう見ても負けたと言う演技をして相手の優位を際立たせる。そうすることで気持ちよくなってこのような奇妙な行動をとってしまうのだ。
「残念だったな!」
「なにっ!」
飛び道具部隊一人目が到着。
「いいことを教えてやろう」
適当に話を聞いてやりその後は殴り倒した。まず一人。倒したと同時に後ろにいた弓矢使いが矢を俺の背中に撃つ態勢をとる。
「そこまでだ!」
「なっ!」
「冥土の土産に教えてやろう」
これまた適当に話を聞いてぶん殴って倒す。えーっと、これを後98回か。
「あ、あいつらは一体何をやっているんだ?」
「ユニーク魔法でしょうか。それにしても異様。‥‥こうなったら突撃して倒すしか」
「そうだ。いかな達人とは言えこの200人の精鋭を相手では」
「一人で破獣を倒すことが出来る者も数人居ます。まさに最強の軍団」
「くくく、少し驚いたがこちらの勝ちは揺るがぬな」
「そのとおりかと」
ニングは剣を掲げ兵たちに号令を出した。
「全員、突撃!」
「ココは私が少しでも」
俺と敵200人の間に入り戦闘態勢をとるファーン。あーっと、その場所は。
「すまんファーン。説明する暇は流石に無くてな」
「?」
「『殺陣』」
「!」
「なんだぁーー!」
今回は全範囲ではなく200人の兵がいる方向に範囲を絞って殺気を放った。でなければ「絶対優位」が解けてしまうからだ。
(これは!? 体が動かない!)
そのためファーンにも技がかかってしまった。
(声が出せないぃ!)
全員かかったかな。後は順番に倒していくだけだ。
順調に倒していき残りは飛び道具部隊の一人と兄弟二人の計三人。
「あと一歩と言ったところだったが、ここまでだ」
「しまった!」
(破獣だぞ! 破獣を倒せるやつもいたんだぞ! それがこんな、こんなわけのわからないことで全滅なんて!)
(最強の、軍団が‥‥)
弓使いを殴り倒した後、二人の殺気を解き、峰打ちで倒した。
(動きを見ればわかる。彼は強すぎる。得体が知れない。しかし)
「おや?」
まだファーンの殺気を解いていないハズだが彼女の手が震えている。
(血がたぎる!)
「バキーン!」
金属を叩いたような音と同時に彼女は動き出した。
「これは。俺の殺気を吹き飛ばしたか」
「やっぱり強いね。良かったら一戦、お手合わせどうかな」
「いいぜ。俺はまだまだ元気だ。一戦と言わずそちらが満足するまでな」
一時間後、ファーンは戦場で大の字になって横たわっていた。
「あー、参った。降参だ。もう動けない」
「じゃここまで」
「ありがとう。助けてくれて」
「いや、いいさ」
「どうだ? 俺達と旅をしないか?」
「そう、しようかな」
ファーンが泣き始めた。
「この街にはもう私の居場所はないし」
俺は彼女にハンカチを渡す。
「それなら旅をしてみつければいいさ」
「うん」




