第三十三話 1対精鋭の300
「二日後早朝、ヴィランの森中央部に決まった」
「ファーン様お考え直しを!」
執事らしき男が声を荒らげファーンに詰め寄る。何か動きがあったようだな。
「アルティメットマスターはもう長男のニング様に決まったのです。もうこれ以上は」
「いいじゃあないか。異議申し立てをして「最後の見極め」をする権利が私にはある」
「力ずくでアルティメットマスターの権利を奪うことが出来る「最後の見極め」という権利を確かに持っています。しかし、歴史上一度も成功したことはないのです。それに」
「ほぼ全ての者がニング様につきました。ファーン様の味方はゼロ、です」
「本来「最後の見極め」は殺し合いではありません。殺傷能力の高い武器は制限されています」
「ですが行けば‥‥殺されるかも。いや、殺されるでしょう、事故死として」
「わかってる。それでも兄さん達の無茶を止め。父さんの無念を晴らしたいんだ」
大きく深呼吸、大きなため息を出した。
「流石に今回はキツイかな。そろそろ後のことを考えといて、リバック」
「ファーン様、やはり死ぬ気で」
「なーに、簡単には死なないよ」
「ファーン様‥‥」
「さあ、出ていって」
肩を落としトボトボと部屋から出ていくリバック。
(二日後早朝か。俺も一旦戻るかな)
キャンプ場へ。
「そんなことが」
拳を強く握りしめるミラ。
「それと、気付いたか?」
「はい、我々を見張っている人の質が変わりましたね」
「そうだ、多分アミマ家の人間だろうな。ゴッドハンドに動かれたらどうなるかわからなくなるからね」
「ということでミラはここで彼らを惹きつける役、まあ、ここでお留守番だな」
「そうですね、私も一発ぶん殴ってやりたかったですけど」
「エマも。二人共留守番頼むよ」
「俺はまた明日から街に行く。ここからヴィランの森へ行くともしかしたら気づかれるかもしれないからね」
「わかった」
「ああそれと、俺がファーンの件で動いていると思われたくない。出かけた後に見張りに「男は女を買いに街へいった」ってことをうまいこと伝えてくれ。もちろん直接話しはしないように」
「やってみます」
次の日、予定通り街へ。
「あー、もうまた!? 私達には手を出さずに街の女なんかに!」
「ですよね! そりゃ旅してるから関係持っちゃうと大変だけど少しくらいかまってくれてもいいと思うんですよ!」
「でしょでしょ!」
(なるほど。男は女を買いに街へいっているのか)
(前回見失ったから少々心配だったが女買って隠れてたんだな。そういうことなら逆に男の方には見張りをつけないほうがいいかもしれない。我々の存在には気付いていそうだし、変に気分を害してこちらへ仕掛けてきたら面倒なことになる)
(了解。話を通しておく)
「オラァ!」
「バカン!」
「ドッセイ!」
「ドグシャァ!」
薪用の原木を派手に叩き割る二人。
(‥‥男さん、もう少しかまってあげたほうがいいかも)
俺は昼ご飯時くらいまで街の中をブラブラと散策した。
(朝いた見張りの人間がゼロになったな。エマたちがうまくやってくれたか)
後はファーンの動きがよく見える場所に張り付いた。
そして翌日。
「いってらっしゃいませ、ファーン様」
ファーンに向かってお辞儀をするリバック。
「うん、いってくる。リバック、今までありがとね」
「‥‥はい」
部屋から出ていくファーン。白髪の執事はそれでもお辞儀の姿勢を崩さなかった。
(昔からここで執事をしていた人かな?)
(ファーンのことは俺に任せてくれ。直接言えないけどな)
姿勢を崩さない執事を背にし、ファーンの後をつける。それにしても軽装だ。刃引き剣にショートランス、布の服。
彼女はそのままヴィランの森は向かう。そして森に到着、その奥で兄達と。
(ふむ、前方に武器を持った者たちが200人といったところか。それよりも飛び道具持ちが左に50、右に50、合計100はいるな。そちらのほうが厄介か)
「ファーン! 考え直さないか。いくら歴代でも屈指の腕前と言われるお前でもこれだけの数を相手では無理だろう」
「‥‥私は私の筋を通す、それだけ」
「残念だ」
お互い武器を構える。さて、出番かな。
『その戦い待った!』
広く通る声で言葉を放つ。そしてすぐさま大きく跳躍、ファーンと兄弟連合の間に降り立った。悪いがゴッドハンドの名前を借りるぜ、ミラ。
「俺はゴッドハンドの随行者をしているものだ。この戦いゴッドハンドが預かる。両者武器を収めよ」
(なんだ、何故ゴッドハンドゆかりの者がここに? 見張りは何をしている!?)
(兄さん、落ち着いてください)
(ん? あ、ああ、すまないトラド。しかしこの状況、どうする?)
(やることは変わりません。ファーンを殺しましょう。予定通り不慮の事故で死んでしまったことに。生きていれば必ず後々足かせとなるでしょうから)




