第三十一話 絶無の魔術師
次の日、某所。
「帰ってきたぜ、親方」
「おかえり、ティモー。召喚法はわかった?」
「ああ、バッチリさ。生贄となる魔獣の質が重要のようだ」
ティモーは道具袋から鏡を取り出した。
「ほらよ。ゴールデンゲートを召喚できる、ユニーク魔法を封じ込めた鏡だ」
魔族の男は親方と呼ぶ男にそれを渡す。
「ご苦労さま。リロン、念の為鑑定を頼む。その後すぐ加工しよう」
「はい、ガルド様」
リロンはガルドから鏡を受け取り、台座に乗せて鏡に両手を軽く組んでかざす。すると手が淡く薄青色に発光し左手と右手の隙間から何やら文字のようなものが浮かぼうとしていた。
「少しお待ち下さい」
「ん~、疲れた」
手を組んで腕を伸ばし体をほぐすテイモー。
「最初大変だったぜ。生贄の魔獣が多すぎて国が崩壊しかけたりしたぞ。おかげでゴッドハンドの村にコッソリ連絡するはめになった。後は一応順調だったがな。アルティメットマスター候補呼んで、魔王軍呼んでと」
「条件が色々面倒だったからね」
「ところでアイツを幹部にしなくてよかったのかい? 戦力だけなら上がるだろう」
「ウチは「力」を求める集まりなんだ。人々を支配しようとかそんな考えはまったくない。とにかく強さを追い求める場所でありたい。彼のように野望が強すぎる人間は正直いらないよ」
「そうだな~。「幹部になったら女を好き放題出来るでしょうかん!」とか言ってたから、まあ正解かも」
「そんなこと言っていたのか? クビにしておいてよかった」
「仲間にすらしてないけどな」
「わかりました」
「ゴールデンゲート召喚、で間違いありません」
「相変わらず便利な魔法だな。ユニーク魔法「ユニーク鑑定」、一日一回だけど手をかざすだけでどんなユニーク魔法かわかるってのは。人間も手をかざすだけで知ることができるしな」
「この魔法の場合、真価は対人にある。ユニーク魔法の種類は無限と言われており持っているだけでも脅威だ。知らない相手ってのは怖いからね。しかし彼女なら簡単に見ることが出来る」
「そう考えると結構ヤバい魔法だな」
「ハッハッハ、今頃気づいたのか? さて、マイダ。コイツを指輪に変えてくれ」
「了解した、カルド殿」
リロンは頭がライオンの獣人族の男、マイダに鏡を渡す。
「ユニーク魔法「コンプリートアクセサリ」」
右手を握り締め槌を作り、左手で持った鏡に向かってそれを叩きつけた。
「ガシャン!」
鏡が割れ、それと同時に発光。
「出来たぞ」
ヒョイッとカルドに投げて渡した。
「どんなものでもアクセサリに変える魔法、コレも便利だよな」
「ワッハッハ。ここに来るまでは微妙な魔法だと思っていたが、まさか魔法をアクセサリに加工できるとは思わなかった」
「んで、本来ユニーク魔法を一つしか鏡に封じ込められないんだが、コレによって再度ユニークスティールが使えるようになる。俺の魔法も相手の魔法を封じ込める程度の使いみちだったな。まあ、それでも強いっちゃ強いけど」
「そして後はコレを扱える者」
「絶無の魔術師、か」
「人族で魔法が使えない者は単純に魔力の所持量が少なくて魔法が使えないだけ。つまり多少は魔力を持っている。しかし彼らとは違い「絶無の魔術師」は魔力を持っていない、ゼロだ。」
「見つけ出すのに苦労したよな」
「魔力を一切持たない者。後は私のユニーク魔法「ソウルコネクト」で指輪の魔法を使い放題、理論上最強の魔術師が出来上がるはずだったんだが」
「まさか魔王が自分の娘を手に掛けるとはねぇ」
「彼女が絶無の魔術師と判明したとほぼ同時くらいに暗殺したようだった。ウチから情報が漏れるとは考えられない。偶然かそれとも相当に腕のいい調査員が居るのか」
「そもそも娘を殺すほどのことなのかね?」
「ん~、わからないな。まあいい、他を探せばいいさ」
「そうだな」
「仲間たちが世界中に散らばって探している。いずれ良い情報が入るだろう」
「しっかし、ここくらいだよな。魔族も人族も仲良くやっているところって」
「「力」を追い求めるという目的があるからかな。いや、それでもそもそもそこまでいがみ合っているのかわからないな。過去色々あったが今は今だと思う」
(ココは変わり者ばかりだが基本は良いやつらなんだよなぁ。たまにやりすぎたりするが。まあそれでも良い職場に巡りあえたもんだ)
一週間後、キャンプ場。
「服を受け取りに行ってくる」
「それと新しい荷車ね」
「ああ、ちょっと大きいやつだな」
街で荷車を買い、そのまま防具屋へ。
「出来たよ。着てみてくれ、問題があれば微調整する」
試着室に通され着替えた。
「布の服より軽いですね」
「ああ、硬い上に布の服より軽いという超高級素材だ。何度も言うが運がいいな、お前ら」
他、注文してあったものを受け取りエマのところへ。
古い荷車を街で売ってここから出発した。




