第二十四話 一杯のカツ丼
血を振り払ってこちらへゆっくり飛び込んできた。
「ん? こ、これは」
ポウをモミモミすると水風船? いやそんな甘い物じゃない、とにかく素晴らしい触り心地、弾力を感じた。
フォースの毛、ジェムのかわいさ、ポウの触り心地、弾力。
幸せ。
「この子も触れます」
ツンツンとつつくミラ。されるがままのポウ。彼女も聖獣と仲良くなる素質が? いやしかしフォースとの最初の頃は。まあ、いっか!
それから数日後。
「街の方へ行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
「キュイ!」
「ポゥ!」
小さなナイト達を従えエマは街へ。そして何事もなく帰ってきた。
「おつかれさま」
「特に問題なし」
「街に入る時ポウは内ポケットに、ジェムもポケットに?」
「さすがにソレだとばれるから町の外で見張りをしてもらっていたわ」
「なるほど」
食事をしてぐっすり眠る。
それからまた一週間、何事もなく過ぎ去った。
「それじゃ街に行ってくる」
「私は修行しておきます」
「わかった」
いつものように街へ。
今回は街というよりも村に近いだろうか。ギルドは特殊で宿屋、雑貨屋、居酒屋も兼ねているとのこと。
「ハハハ、ここは規模が小さいからね。ギルドだけじゃやっていけないのさ」
「いってーな」
「大人しくついてこい」
衛兵さんがガラの悪い若者をギルドへ連れてきた。
「どうしたんで? 衛兵さん」
「‥‥ついにやっちまったんですよ。コイツが盗みを」
「ドナル、お前‥‥」
「俺じゃねーつってんだろ!」
「シュマノさん、奥のテーブル借ります」
「わかった」
青年を連れ奥のテーブルへつく衛兵さん。何やら聞いている。取り調べを始めたのかな。
「すまねえな、ここで色々やったりするのよ。なんせ小さい町だからな」
まさにチンピラって感じの子だな。テーブルに足をのせ、顔は空を仰いでいる。
「知り合いの子なんですか?」
「ああ、街の若者なんだ」
料理を作り始めるシュマノさん。しばらくして出来上がった料理はカツ丼のようなもの。
この世界にもトンカツのようなものはあるが米は主食じゃない。トンカツの下には麺が敷いてある。ここでの正式名称は揚げ肉卵とじパスタと言うらしいが長いからカツ麺と呼んでいる。
出来上がった料理をドナルのところへ持っていった。
「おう、好きだろう」
「‥‥いらねーよ」
山盛り、ビックボリューム。うまく食べないと崩れてしまいそうだ。
料理を置くとこちらへ戻ってきた。
「昔は可愛かったんだがな」
ため息をつくシュマノさん。
「アイツの家は母子家庭でな。貧乏だったけど街で結構助けたところがあったかな。ウチも週イチだけどアレを無料で作ってやってた」
「それが1年ほど前に母親が死んじまってな。そこからグレちまって気付いたらあんな感じさ」
「ちらっと聞いたところだと今回が初犯ですかね?」
「そうなるな」
更正できるかどうかは今回がラストチャンスかもな。その後は犯罪者へ一直線。そうなってしまうと普通の生活は送れなくなる。
「俺がもっとうまく動いてあげればアイツはあっちの方向へいかなかったかもしれない。俺は不器用でね」
「そんなことないとおもいますよ」
「しばらくそこに座っていろ!」
衛兵さんがこちらへ。
「アイツがやったってのは間違いないのか?」
「それは間違いありません。なんせその家の人がタンスに隠れてその現場を見ていたんですからね」
「そうか」
「ちょっと書物を取りに行ってきます」
「わかった」
よし、ちょっと動いてみるか。
「お、おいアンタ」
ドナルのところへ。
ヤフさんインストール。今回は涙の人情話し。
そして話している最中は常に演歌が心の中で流れる。
「あぁ? なんだてめえ」
(なんか聞いたことがない曲が聞こえる気がする)
スッと向かいの椅子に座る。
「俺の友達でな、子供の頃貧乏だったけど月に一回外へ食べに行っていたんだと。行く店はいつも同じ」
「‥‥」
「欲のせいか、その料理はカツ丼っていうんだが、必ずカツ丼大盛りを頼むんだが毎回残していたんだと。それを母親が食べていたらしい」
「ソイツが大きくなる前に母親が死んじまってな。その時は荒れてたって話だ」
「ある日、子供の頃月一で行っていた店の出前が来た。頼んでないと言うソイツに対して「俺のおごりだ」と料理を置いて店長は去っていってしまったらしい」
料理を見ながら言う。
「置いてあった料理はいつも頼んでいたカツ丼の大盛り。ソイツはそれをきれいに食べきったんだと」
「ところでその料理うまそうだな。食べきれないなら少しくれよ」
「‥‥俺が全部食べる」
んー、こんなところか。落とすってのは難しい。ヤフさんなら見ただけで落としていただろう。
その後は帰ってきた衛兵さんの質問にも素直に答えているようだった。
「ありがとう」
少し赤い顔をしているシュマノさん。
「いえいえ。ところで俺にもアレを作ってもらえませんか」
「いいとも」




