第二十二話 カチドキ
「皆さん! 我々は勝ちました!」
「うおー!」
「そうだー!」
盛り上がりきった場を更に盛り上げるってのは赤子の手をひねるよりも簡単。そう、火に油を注ぐだけでいいのだ。
「ですがゴッドハンドの戦いはこれで終わりではありません」
「我々は旅に出ます。悪を懲らしめ弱者を救う旅を」
「おぉ」
「さすがミラ様」
ざわつく会場。
「ゴッドハンド伝説はこれから始まるのです! 皆さん、今から旅立つゴッドハンド・ミラに祝福を、思いの丈を!」
「おぉーー! ゴッドハンド! ゴッドハンド!」
「ゴッドハンド・ミラタン!」
「ゴッドハンドレジェンド! ゴッドハンドレジェンド!」
ふぅー、いい仕事をした。
ミラは恥ずかしそうにしている。
「じゃあ帰ろうか」
「はい‥‥」
エマのところへ。
「ただいまー、終わったよ」
「おかえり丁度、夕飯の時間ね。食べる?」
「もちろん!」
ミラはしばらく恥ずかしそうにしていたが徐々にいつもの調子を取り戻し、俺に話しかけてきた。
「さっきの空を走った後に私を打ち上げた技なんですが」
「空中逆星流れのことか?」
「それです。あの技を放った時、タイカンさん、空中に留まりましたよね。あれは一体」
「ふむ、あれは転送魔法陣を下に置いたのさ」
「あー、なるほど。それなら理屈があいます」
「ん~、私的にはまず空中を走ることに疑問を持ってもらいたかったかな‥‥」
食後。のんびりしていると、この国の大臣レディアさんが数人の兵士を引き連れここへ。
「よかった、まだ出発してなかったんですね」
「どうしました?」
「ええ、戦勝式に来ていただきたく」
うーむ、どうすっかな。まあ国が滅びそうになったんだ、内部には喜びを分かち合う、外部へはこの国はまだまだ健在! と知らしめる、いい機会ではあるな。となると主役のゴッドハンドがいたほうがいいだろうな。
(行っとこうか)
ミラに耳打ちをする。
「いきましょう」
「ありがとうございます。二日後の朝10時。街に馬車を用意しておきます。それに乗って王都へ」
「わかりました」
「すまない、エマ。またいってくる」
「気にせずいってらっしゃい」
戦勝式は大盛り上りだった。王様からも色々貰った。
「さーて、今度こそ旅を再開だな」
「そうね」
戦勝式が終わり次の日にはエマのところへ。
「しかし結構有名になったようだな」
何人か、我々の後をつけてきているな。
「他所の国の人かな?」
「まあ、国を救ったり、破獣を軽くひねったりする人間がうろうろしていたらそりゃ気にもなるわ」
「すみません、出過ぎたことを」
「気にしないでいいのよ」
少し気が沈み気味のミラを励ますエマ。
「タイカンがいるしいずれはこうなっていただろうから」
こちらにウインクを飛ばしてきたエマ。ハハハ、彼女は優しいところがあるんだよな、俺にもフォローを入れろってことだな。
「ははは、そうなっている可能性は高いな。その場合、無名で強力な力を持った人間が現れたことになる。一つの国を救ったが逆に言えば一つの国を破壊することも容易いということ、そんな人間が現れたら他の国としては脅威だろうな」
「しかしゴッドハンド、昔からある名誉ある名を持つものが国を救ったのなら話は別。確かに最近現れ誰も知る人ではないから個としては完全に信用できないかもしれないが、666代も続いてきた歴史ある名をそう簡単に傷つけるとは考えられない。そう、その名だけでも俺よりは信用できる」
その後もしばらくミラを励ます俺。
「まあ、長々と話してきたが、俺が言いたいのは気にするなってことさ」
「はい!」
ふむ、元気になったな。
「まあ、もしかしたら変なのもいるかもしれないからそこは注意しないとね」
「そうだな。利用しようとか、騙そうとか。悪巧みを考えているやつも出てくるかもしれないからな」
「そうですね」
3日後、後をつけてきた人達が俺達のキャンプに混じって談笑している。
「いやー、ゴッドハンド様のファンだったんですよ!」
「まさか本物に会えるなんて!」
ミラに尊敬の眼差しを向ける後をつけてきた人達。
(なんだか俺が想像している以上にビッグネームなのかな? ゴッドハンドって)
エマにコッソリ話をした。
(魔族ってあんまり人族の歴史は知らないのよね。後で聞いてみましょ)
「あ、王様がミラ様のサイン欲しいって言ってました!」
「そ、そうですか」
さらさらと名前を布地に書くミラ。
「ありがとうございます! あ、そろそろ仕事に戻らないと。では!」
そう言うとここから少し離れた木の上に登っていった。
「私も失礼します!」
「俺も!」
つけてきた人たち皆元の位置へ。
「ゴッドハンドって相当なビッグネームなのか」
「初代が人族を救った英雄の一人だとか」
「なるほどねぇ」
「まあ敵対してきたり騙してきたりするよりは余程良いかな?」
「そう、だな」




