第二十話 ナレーション「目覚めろ、戦士達!」
「わかりました」
後ろを振り返りマントを見せるミラ。男達からオーっと声が漏れ出た。
スマイはマントに近づき、じっくり見たり、触ったりしている。
「これは本物だな」
「そのようだ」
「そうか、しかしタイミングが悪かった」
「何かあったんですか?」
「つい先程偽物が現れてな」
「あぁー、それは‥‥」
有名になると偽物が現れることがよくあるらしい。
ウチの場合、母さんの偽物、語る者が多数出現し色々と頭を悩ませた、と聞いたことがある。
「それにのせられて軍を動かしてしまってな。男は即逃亡、作戦が一気に崩れ、結構な被害を出しちまったんだ」
相当数の怪我した兵士達ととすれ違ったのはそういうことか。
「んで1番の問題がゴッドハンドの偽物がやっちまったってとこでな」
なんとなくわかる。先程騙されたばかり、「今度こそ本物だぞ!」と言われても心のどこかで疑ったり怪しんだりと信用しきれない部分が出てくるだろう。些細なことではあるが、命をかけた戦いにおいてはそこは非常に重要。疑わしい者のために命を捧げるバカは居ない。
通常ならばこういう時は時間が立つのを待つ。騙された傷が癒えるのは案外早いもの。だが一分一秒を争う現段階ではそんなのんびりと待っている余裕はない。となると後は。
「それは参りましたね」
「とりあえず現状だけでも説明しよう、お二人共座ってくれ」
「元々のこちらの総数が2000、兵士、冒険者等を合わせた数だ。それに対し魔獣軍250、破獣一匹。そこから現状はこちらの総数1000、向こうは150、もちろん破獣はピンピンしている」
「このまま続けても負ける可能性が高いですね」
「そうだ。もはや撤退を考えていたところでな。ゴッドハンド殿が来てくれたわけなんだが偽物がな」
「ふぅー、それさえなければもしかしたらいけたかもしれないのに」
ここはまず士気を上げる必要があるか。
「俺とミラで魔獣の群れに突っ込みます」
「い、いや、さすがにそれは。自殺行為というもの」
「少々荒療治ですが、こうなってしまったら後は行動で示すしかありません。つまり魔獣を倒し続ける姿を見せ、彼女が真のゴッドハンドであると彼らの心に訴えかけるのです」
「確かに、有効ではあるが、しかし‥‥」
「それでいきましょう」
「ゴッドハンド殿」
「私に任せてください」
「了解した。では二人に特攻してもらおう。それを我々が追う形で」
その後兵士たちの前へ。
「今度は本物のゴッドハンド殿だ」
「おぉ?」
やはり反応が悪い。
「彼らに特攻してもらう。その後を我々が追撃する」
「行くぞ野郎ども!」
「おー!」
一応声は出ているがどこか抜けている感じの声。やはり精神的ダメージが大きいか。
「皆さん元気ないですね」
「仕方がない、命がかかった場面で騙されたんだ」
話をしながら先行する俺達。
「来たな」
「とりあえず30ほどですかね」
前にも魔獣の大群と戦ったことがあるがそのときとは魔獣の個々の強さがまるで違う。30でも前回の数倍のきつさはあるかな。
「とりあえず我々だけで行く。皆さんはそこで待機していてくれ」
「了解した」
「いくか」
「ゴッドハンド・ミラ、参る!」
兵達は止めて俺達だけで突っ込んだ。
とは言え余裕。ミラも前より明らかに強くなっている。
「す、すごい」
「これがゴッドハンド」
ある程度片付けたところで後ろからボソボソと声が聞こえてきた。
今がチャンスかな。俺は一旦魔獣から離れ兵士たちの前に立った。
「アルゴート国の戦士たちよ!」
大きな声で彼らに口上を述べる。
「心の傷はわかる。騙されたのだからな。だが今は彼女を、ゴッドハンドの戦いを見ろ。戦いは優勢、力は本物、そして国のため、君達のため」
「どうだ戦士たちよ! この戦いを見ていつまでも下を向いていられるか?」
「う、うう」
「おお」
「騙されたことなんて忘れちまえ! そして今こそ国のため、俺達のため。ゴッドハンド・ミラの名のもとに集え、戦士たちよ!」
「うおーー!」
「おぉーーー!」
「ゴッドハンド!」
「ゴッドハンド!」
なんとか兵達の士気をあげることに成功したかな。即興ではあるがうまくいったようだ。
やられ役とは盛り上げ役として似たようなものだとして、ナレーションの達人から色々と教えてもらっていた。その人が携わったCMは売上が10倍になる等、とにかく凄まじい盛り上げ名人。「魂を揺らせ」が口癖だったな。元気でやってるかなぁ、先生。
おっと、ひたっている場合ではない。奥から更に魔獣が現れた。
が、もう心配無用な状態かな。兵士達が俺達の前に立った。
「魔獣は俺達に任せてください! お二人は破獣を!」
「わかりました。お任せします」




