第十八話 『殺陣』
マフラーを深めに巻き準備万端、いくぜ!
「そこまでだ。盗賊共」
「なにもんだ!?」
入り口から堂々と侵入。盗賊共はそれぞれ武器を手にとった。
「魔獣急襲に乗じての乗っ取り計画、見事なものだったがそれ以上はやらせない」
「俺が幕を引いてやろう」
うむ、決め台詞までしっかりと。このあたりは母の血がさせるところだな。
「あぁ!? ふざけんな! ソイツをぶっ殺せ!}
すかさず外へ出る。外は当然見渡す限りの盗賊共。俺は大声で彼らに伝える。
「大人しく投降しろ。そうすればケガをせずにすむぞ」
「コイツ、この状況でなに言ってやがんだ? 頭いかれてんのか?」
うーん、忠告したが皆襲いかかってきそうな状況だな。仕方がない。
「殺陣」
「なっ? ガッ」
周りに殺気を振り撒いた。盗賊たちは皆動きを止めた。状況的には蛇に睨まれた蛙? と言ったところだろうか。
「な、なんだよこれ」
全員の動きを止めることに成功したな。後は一人、もしくは二人づつと殺気を解いてやり順番に片付けるだけだ。
一人の盗賊をにらみつける。もう一度殺気を当てることで元通りにすることが出来る。
「バチン、さあ来い」
「う、うわーー!」
殺気を解かれた瞬間こちらに向かって走りながら、声を上げ攻撃してきた。
「スカン」
「ウグッ」
カウンター気味の峰打ち。
細かいところだが峰打ちというものは実戦には存在しない。打撃攻撃なら鞘を使う。
刀の裏面で固いものを叩くと歪みが生じてしまうため。
そこで刀に負担がいかないように峰打ちを改造。刀は歪まず、相手を失神させられる実戦用の峰打ちを先人たちは開発した。
しかし、母さんのようにうまく出来ないな。母さんなら殺気をうまく調整して敵側の足だけ動くようにして、ゆっくりじっくりとかっこよさを演出していくのだが、俺がやったのはただ人の動きを止めただけ。もう勝ち確の戦いでは面白みが足りないだろう。まだまだ修行が足りないな。
「バキン」
「グェー!」
「て、てめえはいったい」
残るは頭二人だけ。他は地面に転がっている。
「こんだけの人間を」
「安心しな、峰打ちだ」
「?」
ああ、峰打ちって言葉はない世界だった。ついつい出ちゃったな。
一人の殺気を解く。
「ウ、ウオーー!」
「バシン」
残るは一人。殺陣を解いた。
「む、動ける!」
構え方からしてコイツはそこそこの腕前とみえる。
実戦での練習はそうそうできない。悪いが彼に付き合ってもらおうかな。
「魔法か? 世の中にはユニーク魔法つう特殊なやつがあると聞く。へっ、なんだっていいぜ、動けるんならお前をこの剣で殺すだけよ」
どこかで習っていたのかな、なかなかいい動きだ。
「くっくっく、俺はその昔、この国で1,2を争う国務めの剣士だったのよ」
「ほぉ」
「しかしちょっと悪さしただけでアイツラ俺を首にしやがった。まあ復讐てやつだな」
「おっと、もう命乞いしても許してやらねーからな!」
逆恨みから来る復讐、どうしようもない男だな。
「死ねーー!」
迫りくる剣を受け止める。
「スッ」
「な、何だいまのは」
相手の剣がスピードに乗る前に接近、受け止める技を使う。
盗賊の腹部を蹴って距離を離す。
「ゴフッ、て、てめぇ!」
「くたばれやー!」
今度は普通に打たせる。
「必暴流、絡み投げ」
刀で巻き取るように受けながら相手の体ごと投げる。
「ぐひゃー、ドシャ」
この技は相手にある程度の剣の技術がないと成功しない。国で1,2を争うってのは嘘じゃなさそうだ。まあここは小さい国ってギルドの人は言っていたけどね。
「て、てめえ。俺は」
「バキン」
「オグッ」
峰打ちを。そろそろこいつらを縛って次に備えないとな。
2時間後、100人程盗賊の応援が来たがこれを難なく撃破。コイツラも縛っておく。
次に街へ向かう。そこの衛兵に俺が書いた手紙を渡した。
「盗賊たちが全滅してましたよ。ボスらしき男の前にこんな手紙が」
「な、なんだって! とりあえずその手紙をみせてくれ!」
『悪党どもは退治しておいた。後は頼む 赤襟マスク』
「聞いたことのない名前だ。まあいい。とりあえず村へ行くぞ!」
数人の衛兵が村へ。何とか伝えることが出来たな。
本当はそのまま伝えようかと思ったけど目立つと面倒なことになりそうだったので居ない人物をでっち上げてその人がやったことにすることにした。
街を出てエマたちを探す。
「お、いたいた」
「タイカン、どうだった?」
「皆気絶させたよ」
「盗賊300人気絶で済むのね……」
「とんでもない実力差があるんでしょうね。何をやったのか今度見せてください」
「ハッハッハ、確かに本来は見せもの用なんだよなぁ」
「?」