第十七話 お主たちは悪だのう
とある日。
「またせたなフォース」
「フォス」
フォースモフリ。始めの頃は朝から晩まで触っていた。流石にこれではいけないと思い制限をもうけた。1日5回、1回5分のお触りタイム。
「ファサファサ」
「フォースフォス」
「ホホォーー!」
今日も絶好調な毛並みだ。この俺の体も心もすべて包み込むこの毛。最高。
「ファサァ、ズボォ」
「おおう!?」
何だ!? フォースの毛がドバっと抜けた!?
「どうしたの?」
「毛、毛が」
抜けた毛を掴みながらうろたえる俺。
「ああ、生え変わりかしら?」
「フォスス」
毛を少し掴み引っ張るエマ。スポンと根本から毛が抜ける。
「のようね」
それから一週間、少しづつ抜け、だいたい毛が生え変わった。抜けた分少々ほっそりした感じになった。いやそれよりも。
「エマ、柔らかめの布を買ってきてくれ。その中にフォースの毛を入れる」
「わかった」
今日は街へ情報収集に行く日。ついでに買い物を頼んだ。
「特に問題なーし、布買ってきたよ」
「ありがと」
それらを縫い合わせ袋状にする。そしてその中に抜けた毛を入れた。
大きさ1メートル位の球状のクッション椅子が出来上がった。
「完成だ、どれどれ」
「ズボーン!」
「なにぃ!」
体がクッションに吸い込まれるように沈む。それでいて適度な反発。
「ホォゥ、フォースほどではないがこれはいいな」
「へぇ、それは高く売れそうね」
「これを売るなんて」
「わかったわかった」
こうしてまた新しくモフリ? グッズを手に入れた。
更に一週間後。
情報収集のために街を訪れたが、避難を始めている人たちが多数。何かあったのか聞いてみた。
「盗賊共がこの街へ攻め込むって話が出てきたんだ。あんたら旅の人かい? 悪いことは言わない、さっさと街から出ることだ」
荷車を引き町の外へ。
「大変な状況のようですね」
「うーん、もう少し情報が欲しいな」
とりあえずギルドへ向かう。
「盗賊と山賊たちが手を結びこちらへ攻めくる可能性が出てきた、これを排除」
ギルドの掲示板にデカデカとそう書かれた依頼書が貼ってある。
テーブルに座っている人が良さそうな冒険者に何があったか聞いてみた。
「盗賊たちが合併した1団、「シケミン」がこの街に降伏勧告を突きつけてきたんだ」
「お国の方は?」
「魔獣が大量発生してな。そちらに手を焼いてこちらにはほぼ人を出せない状況だ」
「後、この街は要塞に近い、堅固な街だ。もしここが奪われると後々厄介になるんだがまあ、人手が足りなくてどうしようもない」
「なるほど、それが狙いか」
「これじゃあ街の人達は逃げるしかない。俺たち冒険者もな」
「ですねぇ」
「ちなみにどのくらいいます?」
「300人はいるだろうって話だ」
「そいつらがいる場所は?」
「ここから北東にある昔村があった場所にいるそうだ」
「情報ありがとうございます」
ギルドを出る。
「どうします?」
「退治してしまおう。その前に今キャンプしているところも危ないかもしれない。ちょっとこの地域から離れてもらおうかな」
キャンプしている場所に戻ってエマに話をした。
「わかった」
「ミラはエマたちの護衛を頼む。もしかしたらフラフラとそのへんに出てくる可能性もあるからな」
「わかりました」
「じゃあ行ってくる」
街から少し行った北東にある廃村に到着。冒険者の話通り、ここに盗賊たちが集まっていた。
さてこんな時は忍術が役に立つ。真っ昼間で大量に盗賊がいようがお構いなし。
家々の中を見て回り豪華な椅子に座ったボスっぽいやつをみつけた。それが二人、山賊のボスと盗賊のボスかな? 何やら話している。
「おう、兄弟。これを足がかりとして天下を取ろうぞ」
「もちろんだ。それに他の兄弟たちにも連絡を送った。もうじき援軍が来るはずだ」
「ハッハッハ、すげえな兄弟。まあ、アンタから一緒に国を取らねえかと話を聞いた時は頭がいかれた野郎かと思ってたがよ」
「ハッハッハ。同じ立場なら俺もそう考えるだろうな。だがどうだ? 今じゃ要塞が陥落寸前、それにまだまだ仲間も増える」
「マジでこの国が取れそうだな。そいや国のやつ共が相手してる魔獣もかなり強いって話だったな」
「ああ、アイツはやべえだろうな。そっちを無視するとそれはそれで国が滅ぶ」
「あの街をとってもすぐには動かん。国か魔獣か、勝った方と戦うまでよ」
「それがいい」
「無理そうなら逃げるがな」
「ダーッハッハ、それでいい」
ほぉ、結構頭が回るやつが頭をはっていたか。しかも援軍が来てまだ増えるとはな。
が、残念。お前たちの野望はここまでだ。