第十六話 日本刀
それから一週間。
今日はエマが魔族側の街へ行って情報収集を。
「ただいまー」
「おかえり。どうだった?」
「特にナシね。平和だったわ」
「平和なのはいいことだ」
だいたい週に一回、近くの街で情報収集を。その際人族側、魔族側を交代交代で。
「おなか空いたろ、ご飯にしようか」
「うん」
一週間経過。今度は人間側の街へ。
「ここには鉱山があってな。鍛冶がとても盛んだ」
「そうですか!」
鍛冶屋が盛ん情報に喜ぶ俺。
「どうしたんですか?」
「うむ、欲しい剣があったんだけどなかなかみつからなかったんだ。だけどここならあるいは」
「ですねー、盛んって話ですし」
他の町の鍛冶屋や武器屋でもそれっぽい武器を探したり聞き込みをしてきたが結局日本刀の情報は得られなかった。
鍛冶情報は一旦置いておいてギルドで他の情報を収集。
「特にめぼしい情報はなさそうですね」
「ふむ、武器を探すことにするよ。それじゃ悪いけど先に帰ってエマに今日は遅くなるって言っておいてもらえるかな」
「わかりました」
去りゆくミラの背中を見ながら、どこから攻めるか考えていた。
「さーて、情報収集情報収集!」
気合を入れて動き出す俺。いくぜ! そして5時間後、結果!
「日本刀、どこにも売ってないし、その物の情報すらないな」
一人肩を落とし公園でぽつんと座っていた。
「まあ、仕方がない。予想はできていたことよ。一旦戻るか」
街から出た。
「どうだった?」
丁度晩ご飯。エマは話をしながらスープを手渡してきた。
「欲しい武器はなかった。だから作る」
「ふむ」
「大体二週間くらいかかる」
「わかった」
今回作るのは日本刀。主に刀身、柄、鞘を作る。
「まずは、鍛冶場の確保かな」
数件まわって一件、大きな鍛冶場で貸してやってもいいというところがあった。そこで作成することにした。
次に素材。当然日本刀の素材玉鋼はなし。普通の鋼はあるためそれを使う。そして他もやはりないものが多い。そこは適当にかわりとなるものを用意。道具も同様に。ここまでで一日が過ぎた。
「さてはじめるか」
一週間後、3つの刀身を作った。打刀、70㎝くらいの長さの日本刀、脇差、45㎝くらいの長さの日本刀、鎧通し、その名の通り、組み打ちで敵を鎧の隙間から刺すことに特化した短刀。
次は柄と鞘。これらを作るのも一週間かかった。
「ふー、出来た」
打刀用には鞘を二つ作った。一つは普通の鞘でもう一つは特殊な仕掛けがついた鞘。ただ、特殊ゆえ、普段はこちらを使わない。
「スッ」
刀を鞘から抜く。
「うんうん、色々アドリブを入れた割にはいい出来だ」
「へー、変わった剣だな」
この場を仕切っている人が話しかけてきた。
「ああ、特殊ですね。本来なら対人戦特化。サーベルに似ているかな」
「確かにそんな感じだな」
「あっちはもっと細身だけど」
「シャキン」
鞘にしまった。
「場所の提供、ありがとうございました。終わったから帰ります」
「ああ、おつかれさん」
街を出てキャンプ地へ。
「おかえりなさい。出来上がったのね」
「ああ」
3つの刀を見せる。
「本当はこの長いやつだけ作る予定だったんだけど、欲が出まして」
「フフ、いいんじゃない。それにしても変わった武器ね」
「見たことありませんね」
二人に見せながら軽く説明。とはいえ説明が難しいな、そもそもこの世界の剣じゃないし。
そーだなぁ、そろそろ俺の正体、異世界の人間ってのを彼女たちにさらしても大丈夫かな? いつまでも隠しておくのもアレだし、魔法とか色々ある世界だから異世界転生してくる人間がいても別に不思議ではないよね。当然秘密にはしてもらうけど。
「実は――」
「ああ、そんな感じはしてた。普通じゃないとは思ってた」
「なるほど。その強さは異世界の人間だからかなんですね」
「いや、強さ自体は鍛えたからだな。元いた世界の人間と、ここの人族は全くと言っていいほど差異はないね」
「鍛えすぎてこうなったのさ」
「ああ、そう……」
「まあ、タイカンらしいというか」
「そうですね、タイカンさんなら何でもありですからね」
正体をばらした後、日本刀についてもう一度説明。ああ、言いたいこと言えるっていいね、とてもスッキリする。
「グルルッ……」
説明中魔獣が襲いかかってきた。早速刀を試す。
「スッ」
居合斬りの要領で刀を解き放つ。
「バタン」
音もなく斬れ、絶命した魔獣の体が下に落ちた。
「ふー、すごい切れ味ね」
「やっぱ日本刀はいいわ」
あまりにも嬉しかったため、今日は3本の日本刀を抱きしめながら寝た。
諸事情により急遽本日2話掲載とさせていただきます
次回投稿は3日となります