第十一話 魔法は使えるのかな
「腕試しで村から出てきたわけなんですがとにかく情報がほしい状況ですかね。誰これ構わず喧嘩を売るわけにもいきませんし」
「そりゃそうだ」
晩ごはん後、一服をしながらミラと話をした。
「話を聞く限り魔法と体術をあわせた戦闘法なのかな」
「はい、そうです」
「良ければ魔法を教えてもらえないか。まず魔法を使えるかどうかわからない状態なんだけどね」
「いいですけど」
チラリとエマの方を見る。
「私は魔法を使えないの」
「まあ、色々あってね。秘密にしておいてもらえるか」
「わかりました」
「色々と必要なものがありますね。明日街に行って買い揃えましょう」
「わかった」
一夜明け街へ。買い物を終わらせエマのところへ戻る。
昼食後、ミラが魔法を教えてくれた。
「まずは魔力を持っているかどうか見てみましょう」
「わかった」
魔力とは魔法を使う上で必要な力、いわば車におけるガソリンのような存在だ。これを持っていなければ魔法が使えない。
ミラは道具袋から小さな宝石を取り出した。
「この白い宝石を一分間握ってください。魔力があるなら黒色に変化します」
「握るだけでいいんだな?」
「はい」
宝石を受け取り握る。緊張の一瞬。ここで全てが決まるわけだ。
一分後手を開いた。
「おお、黒くなってますね。おめでとうございます。魔法が使えます」
「ふむ」
喜び走り出したいところであるがエマの手前、冷静に対処した。
「この後はどの系統の魔法が使えるか探ることになりますね」
「魔法の種類ですが元素魔法、炎・水・雷・土の4つ。神聖魔法、暗黒魔法。他はユニーク魔法と呼ばれる特殊なもの」
「ふむふむ」
「まずは元素魔法かどうかを見ましょう」
道具袋から紙とお茶の葉っぱみたいなものを取り出した。
「これに火をつけてっと。煙を吸ってもらってそれをはきます。その時の煙の色でついでにどの属性、炎等かわかります」
タバコみたいなものか。紙から煙を吸ってはいた。
「白、無色ですね。元素魔法ではないようです」
「ゴホッゴホッ」
「はい、お水」
「ありがとうエマ」
「次は神聖魔法。この板を割ってみてください」
「オリャー! バキン!」
「次は暗黒魔法。この木材ををお尻で叩き折ってください」
「フン! ペキン!」
「どちらも違いますね」
割り箸お尻折りみたいなやつだった。暗黒魔法じゃなくてよかった気がする。
「となるとユニーク魔法かなぁ」
「なにか問題でも?」
「ええ、ちょっと判別法に問題がありまして」
「?」
「かといって判別しておかないとユニークは特殊な魔法なので発現せず一生使えないってこともあります」
「そっかぁ、せっかく魔法が使えるのにそうなっちゃうとザンネンだな」
「オホン。仕方ないわね、ここは私が」
なんだか嬉しそうに名乗り出るエマ。
「だったんですが、最近簡単な方法が見つかったんですよ」
「そうか」
「ちなみに今までの方法は乙女とキ……」
「コホン、ま、まあいいんじゃないかな、古い情報は。それより新しい判別方法ってのを聞きたいわね」
「そうですね。では準備を」
「タイカンさんの足にロープを。逆さ吊りに」
指示通り木に吊るし、逆さ吊りに。
「その状態で目をつむり、心の中で「ヨイデハナイカヨイデハナイカ」という言葉、呪文を繰り返し唱えてください。そうすると頭の中に自分の持っている魔法が文字でふんわり浮かんでくるそうです」
「やってみよう」
(ヨイデハナイカヨイデハナイカ)
「これってどうやって見つけたんだろう?」
「さあ、ただ開発部門は魔境だから近づかないようにっていわれてました」
「……ヤバそうね」
10分後。
(ヨイデハナイカヨイデハナイカ)
(…送……陣)
(お! もう少しか!)
(ヨイデハナイカヨイデハナイカ)
(転送……陣)
(ヨイデハナイカヨイデハナイカ!)
(転送魔法陣)
「わかった、転送魔法陣だと。降ろしてくれ」
木から降ろしてもらった。
「魔法陣ですか、どんなやつかな。とりあえず手を前にかざしてその魔法陣が出るか試してみてください」
「やってみよう」
手をかざしてみた。
「お? なんか出たぞ!」
「魔方陣が出ましたね。成功です」
「二つあるな。よく見ると文字が書いてある、IN、OUT。INから入れるとOUTから出るのかな。試してみよう」
落ちている木の枝を拾って魔法陣に突っ込んでみた。
「あれ通らないな」
今度は手を。
「おお! 通って出口から出ているな! あれ? でも服が通らない」
「もしかしたらタイカンさんだけしか通れないのかも」
「ふむ、全裸で試してみるか。ちょっとむこう向いてて」