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第十話 水が飲みたかった

 道を歩いていると道の反対側から一人の少女がフラフラと歩いてくるのが見えた。


「ちょっと、大丈夫かしらあの子」


「み、水。パタン」


「あ、倒れた」


「行き倒れかな。助けよう」


「キャンプができそうな場所まで移動しましょ」


 女の子を荷台に乗せ、キャンプが可能なところまで移動した。


「夕飯も近いしそっちの準備もするわね」


「頼む」


 女の子をテントの中に入れる。


「ふぅ、田舎から出てきた子ってところかな」


「そんな感じね」


 しばらくして料理ができあがり、それと同時くらいに女の子が目を覚ました。


「コホッコホッ。ここは?」


「はい、お水。のどが渇いてるんでしょ?」


「あ、ありがとうございます!」


 ゴクゴクと喉を鳴らしながら水を飲む女の子。

 人族で歳は16くらいかな? ツインテールが特徴的だ。


「プハー! 生き返りました!」


「なにがあったんだい?」


「はい、田舎から出てきたんですが右も左もわからず、手持ちのお金も尽きて、そのままフラフラしているうちにこのような状態に」


「予想は当たりかな」


「そうね」


「?」


「ハハハ、俺も村から出てきた時は似たような状態だったからな。旅の目的は?」


 この世界では小さな村出生、ということにしてある。異世界人とは言えないからね。


「はい。世界最強となるために旅をしています」


「ほ、ほう?」


「もしくは世界最強の人を村に連れ帰るのが目的です」


「え、ええ」


(なかなか突拍子もない事を言う子ね)


(一応俺の目的も世界最強です)


(そ、そうね)


 その後詳しく話を聞かせてくれた。


「いやはや、いきなり魔法会館が終了するところでしたよ」


「なるほどね。そういうことならまずは冒険者になることをオススメするよ。カードが色々便利だし、お金も稼げるし」


「ほうほうほう!」


 道具袋から地図を取り出し開く。


「ここから近い街はココかな。近いし一緒に行くかい?」


「はい! ぜひお供させてください!」


「今日はもう遅いから明日ね」


「俺の名はタイカン。短い間だがよろしくな」


「私はエマ。よろしくね」


「ミラです。よろしくおねがいします!」


「テントは私のやつをつかって」


「見張りはいつも通り俺とエマでいいか」


「ええ」 


「俺が見張りの時は俺のテントを使うといい、エマ」


「そうする」


「あ、一応聞いておかないと」


「お二人は、その、ご夫婦ですか?」


「いや、旅仲間さ」


「そ、そう。旅仲間よ」


「そうですか」


 皆で夕食。


「おいしいです!」


「そう? 褒めてもらえると嬉しいわ」


「エマは料理が上手なんだ」


「ですねぇ」


 一夜明け出発。

 街の近くまで来た。


「そうね、一人じゃ心配だからタイカンもついていってあげたら」


「そうだな、そうしようか」


「おねがいします!」


 ふとタラトンさんのことを思い出していた。元気でやっているだろうか。

 特に問題なく冒険者手続きが進む。初心者講習は時間がかかり付添の俺は暇になるので適当に買い物にでかけた。

 ブラブラとお店をウインドーショピングした後、ギルドへ戻った。


「あ、おかえりなさい」


「手続き終わった?」


「はい、終わりました」


「そうか。それじゃココでお別れかな」


「あ、そのことなんですが。是非お二人について行かせてもらいたいんです」


「ふーむ」


「基本的に旅をしながら見聞を広めたいんです」


「んんー。エマも含めて話し合おうか」


 街から出てエマの元へ。


「私はいいけど、タイカンは?」


「俺もいい。ただ人族、魔族、聖獣と少々厄介な構成だから他の人達と旅をしたほうがいいんじゃないかなと俺は思う」


「そうね。気軽に街には泊まれないわ」


「問題ありません。それに助けてもらったらちゃんと恩を返せと父から言われています」


「ハッハッハ。気にしなくてもいいよ、当然のことをしたまでだ」


「それにお二人は優しそうな人なので!」


「そ、そうか」


 ふむ、これは殺し文句だ。直接こう言われて嫌な気がする人間はいない。しかも裏のない言葉だ。


「わかった、これから一緒に旅をしようか」


「はい!」


「あ、フォースは大丈夫か?」


「フォス」


 少し緊張しているようだ。やはりエマと俺は特別なのだろうか。


「あ、ダメそうですね……」


「フォスフォス!」


 ブンブンと首を振るフォース。大丈夫だ。少し緊張しているだけだ。ちょっとモフる? と言っているように聞こえた。モフりたい。


「いいってよ」


「そうですか!」


「それと年も近いし敬語じゃなくていいぞ」


「普段からこんな感じなんで。歳上の人が多かったことが原因だと思いますけど」


「ならいいけど」


「それとエマさん」


「なに?」


「私にお料理を教えて下さい!」


「ふふ、いいわよ」


 こうして旅仲間が一人増えた。

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