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第5話—姉、豹変しました—

 しばらく彼女は泣いていたがしばらくすると徐々に落ち着いてきていた。


 「ありがとう…魔眼の力を目の前で見ても傍に来てくれて私凄く嬉しかった」

 「それは今日からとはいえもう家族ですから、家族が苦しんでるなら手を差し出すのは当たり前ですよ」


 そう言うとセルシアさんが「当たり前、なんだ…」と嬉しそうに小さく呟きながら俺の胸に顔をうずめてきた。急に顔をうずめてきて、すんごいドキドキているが表に出ないよう必死に隠すので精いっぱいでした。


 「と、とりあえずお互い雨で服びしょびしょですから風邪引かないように早く屋敷に戻りますかセルシアさん」

 「えー、もう少しこのままでいさせてよー」


 なんか急に甘えだしてきたぞこの人…しかしこのままだといろんな意味でヤバくなりそうだから何とかして引き離して屋敷に戻らねば!


 「お、俺雨で身体冷えてきたので早くお風呂入って温まりたいんですが…」

 「ならこうして、抱きしめて私の体温で温めてあげるー!」


 逆効果ーーー!余計にくっ付いてきて柔らかい実り2つはっきり感じとれてしまう!


 「そ、それに!セルシアさんだって返り血で体も服も汚れてるんですから綺麗にしましょうよ、ね?」

 「………」

 「あ、あのーセルシアさん?」


 急に黙ったかと思ったら抱きつきながら顔を上げ何か不満そうな顔をしていた、俺もしかして女性の地雷でも踏んだ?やらかした?そんな不安に駆られていると。


 「んー、他人行儀すぎ…」

 「へ?セ、セルシアさんどうしたんですか急に」

 「それ!なんで姉弟なのに敬語で名前呼びなの!」


 急にそんなことを言われてしまった、何でって言われても流石に一日でそこまで踏み込むのは早すぎるだろ、せめて二~三週間ぐらい経ってからその段階にいくべきだと思うんだが。


 「…さっき私が泣いていた時は敬語じゃなかった、それにオーク達と対面してた時はセルシア姉さんって呼んでくれてたのに…!」

 「い、いやあの時は無我夢中でつい呼んじゃって、敬語のも無意識だったので…」

 「じゃあ今から敬語なしでお姉ちゃん呼びして!言わないと離さないままここに居るからね」

 「えぇ…」


 なんかここにきてクールでカッコいいイメージだったセルシアさんだったが、一気に崩れ去って扱いが面倒な姉へと塗り替えられた気がする。言わなければ本気でずっとここから動かなそうなので諦めて従うことした、まぁ敬語を使わなくていいなら気が楽だからありがたいんだが。


 「わかったよセルシア姉さん、これでいいだろ?」

 「うーん、ホントはお姉ちゃんって呼んで欲しかったけど、まぁ今回は我慢してあげる」


 そう言いながら俺から離れてくれた、やっと解放された~色々とギリギリでホント危なかった~、なんて思っていると遠くからいくつもの足音が近づいてくる音が聞こえてきた。まだ仲間でもいるのか!と身構えるとセルシア姉さんが「大丈夫、警備兵だから安心して」と言ってきたのでもう一度よく見てみるとさっきの布の服のオーク達と違い、鎧を着たオーガ達がこちらへ来ていた。こわっ!デカいし目で獲物を殺しそうな目つきがすごい怖い…。


 「し、失礼します!セルシア殿の屋敷に反魔軍の者が侵入したと報告があり参りました!」

 「それならそっちに転がっている塊たちがそうなので後処理をお願いするわ」

 「そっち?…ヒッ!!直ちに処理いたします!!」

 「よろしく頼むわ」


 さっきとは打って変わって静かな声でオーガ達に後処理を頼むセルシア姉さんに俺はさっきまでのやり取りは幻だったのではないか、と思ってしまう程だった。一方オーガ達はオークの無惨な姿を見ると小さく悲鳴を上げ、震えながら一人が背負っていたリュックから木製の簡易担架を組み立て、もう一人が占いに使いそうな水晶に向かって「死体を運ぶから人を寄こしてくれ!」と少し声を震わせながら連絡していた。

 セルシア姉さんの言う通りみんな目に見えて怯えているのが分かる、俺が思っている以上に深刻だったんだな…。そんなこと思っているともう追加の警備兵が着いていて亡骸を運び始めていた。

 指揮していたオーガが俺に気が付き「そちらの者はセルシア殿の客人ですか?」とセルシア姉さんに聞いてきて「いえ、今日から私の弟になったハルアキよ」と言うとそのオーガが俺の方にきて「ハルアキ殿か、まぁ運がなかったと思って頑張ってくれよ」と言い、哀れそうに俺の肩をポンポンと叩いてきた。それを聞いたセルシア姉さんは表情には出さないが悲しそうに少し俯いているのを見て肩を叩いてきたオーガに俺はなんかイラっとした。


 「いえ、こんな綺麗で素敵な姉に出会えて俺はとても幸せですから頑張るつもりはありませんよ」

 「…噂はすでに知っているだろ、それを聞いてあの力を間近で見てもそう言えるのか?」

 「はい、力を使おうと俺の大切な家族に変わりはありませんし、これっぽっちも姉の力に恐怖も嫌悪も感じてないので心配はご無用ですよ」

 「…姉も姉だが、お前も狂ってるな」

 「お褒めの言葉として受け取っておきます」


 そう言うと警備リーダーのオーガが俺を睨み、セルシア姉さんに「では我々はこれで失礼します」と敬礼をし屋敷を後にしていった。

 さっきのオーガの言葉でまた元気なくしてるだろうなぁとセルシア姉さんの方を見ると顔は俯いたままだがニヤニヤしてるのが見えていた。


 「…なんだよセルシア姉さん」

 「いや~?何でもないわよ~」

 「絶対にさっきの警備兵とのやり取りの事だろ」


 と言うと「さぁね~」と言いながら顔を上げ屋敷の方へと体をクルッと回転させた。その回転の時、少し顔が見え、その頬には雫が一粒流れていた。「さぁ早く屋敷に戻ってお風呂入りましょ」そう言いながら屋敷へ向かうセルシア姉さんの後ろ姿はとても幸せそうだった。


 その後、屋敷へ戻りそのままの足で脱衣所へと向かい風呂に入ることにした、当然だが男女別の仕様になっているのでよくあるお約束の混浴はなかった。セルシア姉さんの事だから途中乱入してくるかと身構えていたが最後まで何も起きなかった、流石にそこまではしないか~と思いながら浴場から脱衣所へ出ると籠の中に俺の着替えと手紙が置いてあった。眼鏡はそのまま籠の中にあったので眼鏡をかけて見てみると、

 『ハル君へ、お姉ちゃんこれから陛下へさっきの反魔軍の件を報告しに行くので食堂に簡単なご飯で申し訳ないけど置いときました。多分帰るの遅くなるので先に食べて私を待たないで寝ていいよ。 弟を愛するセルシアより』と書かれていた。

 ハル君ってなんか恥ずかしいからやめて欲しいんだが…でもこんな短時間でご飯用意して手紙まで書けるとか普通に凄いな。

 置いてあった服に着替え食堂に行くと広いテーブルにポツンとサンドイッチが五個並んで乗っている皿が一つ置いてあった、まぁ遅いって書いてあったから先に食べて寝れるかわからんがベッドに入るかと思いながらハムのサンドイッチを口へ運んで一口齧った。うん普通の味だぁ、でも今はこの味が一番求めていたのでありがたかった。

 サンドイッチを食べつつ誰もいないから暇なのでさっきの手紙を読み返そうとして気づいた、手紙の裏面にもなんか書いてあったのだ。『今日は私を守ってくれてありがとう』そう一言だけ書いてあった。俺今日セルシア姉さんのこと守ったっけ?逆に俺が守られた気がするんだが…。そう考えながら残りのサンドイッチを食べ自室へ戻ったが、そのあと特にやることないからベッドに横になって今頃元の世界での俺の扱いどうなってるんだろうなぁ、と考えているうちに自然と瞼が重くなっていき意識が途切れた。


これにてセルシア姉さん編はひとまず終わります!

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