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第1話—目覚めたらメイドさんがいました—

遅くなりましたがようやく物語が開始しました!

 小鳥のさえずりや遠くからする会話が聞こえ目を覚ますと知らない天井がそこにあった、何処だここ?そう思いつつ身体を起こした。

 寝起きで思考がぼんやりしてたのでとりあえず周りを見渡すことにした、ぱっと見て教室一個分の広さがありそうな部屋、正面には大きなテーブルがありそのテーブルを挟むようにいかにも高級そうな二つのソファーがあり、右を向けば中世時代にありそうな窓が一面にありそこから噴水やベンチが置いてある大きい庭らしき所が見えた。えっほんと何処ここ?と記憶に無い場所にいる不安で眠気がどんどん消えてきた。

 確か昨日は賢吾の付き添いで秋葉原に行って…と記憶を順を追って思い出しつつ左を向くとメイド服を着ている人がお辞儀をしていた、それはもう綺麗な姿勢でありもしマネキンと言われても何の疑いもしない程だった。俺の視線に気づいたのかメイド服を着た人が顔を上げてこう言った。


 「おはようございますハルアキ様、食堂にて朝食の準備ができておりますのでご案内いたしますがご準備はよろしいですか?」


 そう言い返答を伺うように琥珀色の瞳で俺の目をジッと見つめてくる、あっやっぱりメイドさんなんだ、暗めの青髪をしたポニーテールで容姿は雑誌とか見るモデルみたいに綺麗なスタイルをしていた。年齢的には俺と同年代ぐらいかなぁなんて失礼なことを予想していると、流石にメイドさんを見ながら何も返答しない俺に「どうなさいました?ご気分でも優れませんか?」と少し心配そうに聞かれたので状況整理するために少し会話できないか試みる事にした。


 「いや、ジロジロ見てしまってすいません、どうも朝に弱くていつもぼーっとしてしまうんですよ、少しすれば目も覚めてくると思うのでその間いくつか質問してもいいですか?」

 「そうなんですか、では少しでしたらお時間に余裕があるので私が答えられる範囲であればお答えいたします」


 えぇ…咄嗟に思いつかず適当に言った言い訳をすんなり信じちゃったよこのメイドさん…


 「あ、ありがとうございます、ではまず最初にここはもしかして魔王さんのお城ですか?」

 「はい、ここは魔王ラインハルト様がお住みになられておりますバルート城でございます」


 やっぱり魔王さんのお城だったか…今のやりとりで昨日の出来事が鮮明に思い出してきた。


 昨日魔王さんから半強制的に連れてこられて俺が唖然としてると魔王さんが自慢げに両手を広げた。


 「どうだ、驚いたか?ここが俺が納める魔国バルートだ!」

 「魔国…本当に魔王だったんですね…」

 「最初から俺はそう言っていただろ、まさか信じていなかったのか?」

 「普通は信じませんよそんなこと言われても、ただの痛い人だと思ってましたもん」


 そう言うと魔王さんが「痛い人だと…?」と少し唖然としている、あっヤバい怒らせちゃったか?俺ここで殺されるんか?と不安になってきた。


 「お前は俺が魔王と知っても言葉に容赦がないな、普通は怯えて言葉を控えてしまうんだがな…だがその豪胆さは俺は決して嫌いではないし秋葉原を案内してもらったから特別に許すか」

 「ふぁ~あ、なら俺ら今日から親友ってことですね」

 「なっ…」


 なんか急に眠気が襲ってきて反射的に言った瞬間魔王さんの顔が固まった。俺今とんでもないこと言っちゃった気がするんだが…


 「お前人間と敵対する王と友になりたいとか正気か?」

 「まぁ…正気ですね」

 「ハルアキお前は本当に面白い人間だな、よし!では俺と大親友であることを許可しよう!」


 そう言い少し嬉しそうに笑っている、なんか友人のつもりが勝手に大親友に格上げされてるんだが本人がそう言ってるならそれでいいか…ていうかこのままだと立ったまま寝れてしまうほど眠気が襲ってきているので何処か寝れる所に案内してもらおう。


 「それで魔王さん早速で悪いんですがどこか寝れる所ないですかね?」

 「ん?なんだ眠いのだったら客室に案内するぞ、詳しい話は明日朝食をしながらすればよいからな」


 そう言い屋上から城内に移動し客室に魔王さんが案内してくれた、その後の記憶が全く無いのでおそらくそのまま寝てしまったのだろう。


 そして今に至るわけか…今思うとめちゃくちゃな会話してたなあの時の俺…。


 「バルート城…なるほど国と同じ名前なんですね」

 「はい、ちなみにこのお城はラインハルト様が命名されたお城です」

 「え?じゃあもしかして魔王さんが初代魔王なんですか?」

 「はいその通りです」


 まさか魔王さんが初代だったのかよ!てことはこの国も創られてそんなに経っていないのか、まぁ詳しいことは魔王さん本人にでも聞くとして次に気になっていたことを質問してみた。


 「では次にメイドさんの名前はなんて言うんですか?」

 「私の名前ですか?私はマリーナと申しますがどうして私の名前なんてお聞きになられたのですか?」

 「え?だって名前知らないと今後なにか聞きたいことあった時に不便ですし、それに…」

 「それに?」

 「ただ俺が単純に名前を知りたかっただけです」


 だってこんな綺麗なメイドさんの名前知っておきたいじゃん!それに今後もしかしたら何か起きるかもしれないし!そんな邪な考えを仕方ないと言い聞かせていた、一方のマリーナさんは小首を傾げながら「はぁ…変わった人ですね」とこちらが聞こえない位の小声で言っていたが昔から耳が良いので残念だが聞こえてしまった、ちょっとショックを受けたので聞こえなかった事にしておこう…。

 その後も二~三つ質問し、大体この世界の大まかな事を教えてもらった。簡潔に言うとこの世界には魔法があり、人間の他にも多種族が存在しており、社会階級が俺の過ごしていた世界より濃いというラノベやゲームでよくあるファンタジー世界であることが分かった。

 

 「ではハルアキ様、お時間も頃合いなので食堂へご案内します」

 「ありがとうございますマリーナさん、おかげでこの世界の事大まかに知ることができました、それにマリーナさんとお話しできて楽しかったです」


 部屋を出てマリーナさんに食堂へと案内されながら感謝を述べた、もちろん楽しかったことも事実だ、マリーナさんは基本必要なことしか喋らないがその内容はとても分かりやすく教えてくれるのでとても助かった、それにこの世界にも甘いお菓子とかあるのか聞いた時、明らかに反応し何処のお店のケーキが美味しいとか細かく説明してくれた、クールな感じのマリーナさんでも甘い物好きなんだと意外な少女みたいな一面を知れたのでそれだけで十分楽しめた。


 「私は質問に答えただけなのに楽しかったんですか…?」

 「はい楽しかったですよ、また今度時間あったら色々教えてください、特に美味しいスイーツのお店とか」

 「…ッ!?し、食堂に着きましたので私はこれで失礼いたします!!」


 明らかに顔を赤くしながらお辞儀をしそそくさと行ってしまった…流石に初対面の人を茶化しすぎたか、と反省しながら目の前の大きな扉を開けると、わおでっかいシャンデリア!更にメイドや執事達が部屋の両隅でお辞儀して待機してる!…非常に入りづらいよこれ。

 そんなことを思っていると横長テーブルの右端に座って先に食事をしていた魔王さんが「どうした、そんな所にいないで早く座るがいい」と持っているフォークを反対側に用意されている椅子へ向け促しているので覚悟を決めて椅子へ向かい座った。するとすかさず執事が俺の前にパンやスープなどいろんな料理を運んできてくれた。魔王さんが「美味いから遠慮せず食べてくれ」と俺が食べるのをジッと見てくるので「いただきます」と言い、肉をフォークで刺し恐る恐る口へ入れると…なんと想像以上に普通の味だった!家庭に出てくるベーコンとそんなに変わりはしない、スープも飲んでみることした。うん、お湯で溶かすコーンスープと同じ味でザ・フツウ!この美味しいけど慣れ親しんだ味に安心するような少し残念なような複雑な気分になりつつ食べる。


 「どうだ、美味いか?美味いだろ??」

 「そうですねとても安心する味です」

 「そうか安心する美味さか、それは良かった!」


 とてもじゃないが「普通ですね」なんて言えるわけないので誤魔化したのだが勝手に美味い判定になっていたのでそういうことにした、そして互いに黙々と朝食を食べその周りに執事とメイドが並んで一言も喋らずに待機しているという気まずさの地獄の空間が出来上がってしまった。

 気まずくて食いづらいよぉ…と弱気になりかけていた時だった。


 「そういえばハルアキに一つ言わねばならん事があった」

 「はい何ですか?」


 やっと気まずい沈黙から解放された!そう心の中で喜びながらサラダを口に運び魔王さんの言葉を待った。


 「すまんディメンションゲートが壊れてお前を元の世界に帰せなくなってしまった」

 「…へ?」

 「先に言っておくがお前の世界にあった書物みたいに他の方法で元の世界に帰れるとか無いから残念だが諦めてくれ」

 「…んへ?」


 あれ、サラダってこんなに味無い食べ物だっけ?あと人って予想以上の事言われると変な声しか出なくなるんだな…。

 

 異世界最初の食事は味は普通、でもとても衝撃的でドストレートなパンチの効いた食事でした。



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