透き通るような・・・
彼女の透き通るような凄まじい表情。携帯を手にしたままツムラ氏は凍りついた。
「でもそれはさがしていたからなんよ。あなたを。みつかったからよかった。わかったから、よかった。でも、残念な結果でした・・・それで、もうおしまい」
「何をいってるんだ!おしまいじゃない!」
ツムラ氏は百十九番をプッシュし、携帯を耳にあてた。
と、急に彼女はツムラ氏の体をはねのけた。予想外の事態、ツムラ氏は腰をぬかしてそこに座り込んだ。そして彼女を見上げた。彼女は身をかがめて腹部を手でおさえ、苦痛に顔を歪め、
「ごめんなさい・・・本当のこと・・・教えるわ」
本当のこと?
「マイよ。私は西田舞」
彼女はつづける、
「25年前の世界からやってきたのよ・・・信じられる?ツムラさん・・・学生のときと・・・あまり変わってないわ。・・・ツムラさんこそ、これからよ。きっと、すてきな人と、結婚できるわ・・・じゃあね・・・」
最後は少し元気に手を振って、でもお腹をおさえながら、よろよろと、彼女は闇の中へ去ろうとした。
「無茶をするもんじゃない!」
ツムラ氏は彼女の後を追おうとした。そのとき、また銃声がした。
「!」
肩口に激痛。ツムラ氏はそこに倒れた。倒れる直前、ツムラ氏の視界のなかで、ナナは二級河川「柏尾川」の川辺の荒んだプロムナードの闇の方へとみるみる消えていった。まるで本当に、闇の中に、かき消されてしまうかのように。
ツムラ氏の意識はとぎれた。