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勇者の親友はつらいよ  作者: シール
13/19

魔力覚醒

 

 ―― ―――― ――――――――



 ルークへ。

 二人の前では言いづらいからこうして手紙で伝えるな。

 フレッサちゃんのことで、ジュビアさんには伝えてないことがあるんだ。

『魔王の種』に標的にされるほどの魔力量を持った彼女だけど、小さいこともあってまだ魔力という認識も曖昧で制御なんてもってのほか、な状態なんだ。

 だからひょっとしたら何かの拍子に魔力が解放されてしまう可能性がある。

 それでお前も怪我すっかもしれないけど頑張ってくれ!

 俺たちもロズから聞いていろいろ対策は考えたんだけど、魔力が発揮されてからじゃないとできないことが多くて、すぐには対処してないんだ。

 だからすこしでも魔力が目覚めてるような兆候があったら知らせてくれ。

 その時は何が何でも駆けつけるよ。


 じゃ、よろしく。


 親友! アランより。


 ―― ―――― ――――――――



 グシャッ………


 開けた手紙の内容に、無意識に手に力が入り手紙をしわだらけにしていた。


「……の、野郎が」


 それ以上言葉にできないことにも苛立ち、目の前のテーブルをひっくり返したい衝動に駆られる。

 いろいろ雑すぎる。

 なんで魔法なんてものに関わったことのない自分に危なそうなものを押し付けるのだ、それになんでいつも情報を後出しにするのか。

 そもそも、この情報を隠す意味がわからない。手紙を見る限り隠す意味がない気がするのだが。

 いらつく。

 説明が足りないことにも、向こうの隠す考えにも、アランにも、まったくもってイラつく。

 そんな気持ちでいっぱいすぎて、自分が今どんな顔になっているかわからない。

 こっちは言われないと気づけないのにこう後出しされるとこルークしても困るのだ。

 手紙を読み忘れていたのは自分が悪いが、それでもこういうことは口でさっさと言ってほしかったとぶつけどころのない不満にイライラする。


「ど、どうしたんですかルークさん、顔が怖いことになってますよ」


 キッチンから戻って来たジュビアが引き気味に尋ねたことで我に返ったルークは謝罪した。


「すいません、ちょっとムカつくことがあって………あ、いえ、なんでもないです」


「ひょっとして勇者様からの手紙ですか?」


「ええ、まあ……よくわかりましたね」


 ズバリ言い当てられてルークは気不味い心地になる。それにジュビアはふふ、と笑みをこぼして返した。


「ルークさんて基本は優しいし怒ったりしないので。勇者様といるとわりと不機嫌な顔になっているのでそれで」


 え、とルークは言われて初めて気づいた。


「あいつといるとそんなに怒ってましたか?」


「怒るというか、注意散漫な子供に言い聞かせているような、世話焼きな親のような……私にはそんな風にみえました。あ、勇者様には不敬な例えですね、すみません」


「いやいや、あいつにそんなかしこまらなくたっていいですよ。勇者って言ったって中身はガキの頃と変わらないような男ですし、見た目が立派でも中身はただのバカです」


「あら、とても周りを気遣う方でしたよ。あの子は苦手なようですけど、私にも親切にしていただいてありがたい限りでしたし。ああ、だから勇者様も遠慮なくふざけられるのでしょうね」


「だから?」


 今の会話のどこからそう繋がったのかわからないルークが首をひねる。


「遠慮も気遣いも何も必要なくても迎え入れてくれるルークさんだから気が抜けて何か忘れたり、ふざけたりできるんだと思います。家の外と中じゃ安心感が違うような、そんな感じなんじゃないかなって」


「………、俺は損な役回りってわけか。先が思いやられるな」


 笑うジュビアにルークはやれやれといった様子で息を吐く。

 安心するからというのは嬉しいが、だからといって何もかも忘れんぼになられてはとても困る。やっと会えて嬉しいのはルークだって同じだ、でもだからって頼り過ぎじゃないだろうか。忘れそうになるがアランは勇者だ、何でもできるような地位についていて、世界の有名人だ。一国民であるルークより何倍もすごい存在なのだ。

 親友というだけで、あっちがなにか買いかぶりすぎている気がしてならないルークだった。

 ルークは用意された茶を啜り、話題を変える。


「だいぶ慣れたみたいですが、何か困ったこととか起きてないですか? 物が足りないとか」


「はい、とくには。皆さんよくしてくれますし、村より大分環境もいいです。この町の生活に心地よさも感じてきました」


「それはよかったです、この町は良い人たちばかりだからこれからもっと気に入りますよ。フレッサのことが解決したらこっちに移住したっていいわけですし、どうせなら存分に満喫してください」


 金銭面はアランがカバーしてくれるのだ、たまの贅沢や二人が望んだものに少し金をかけたって怒られまい。なによりルークは二人との生活でよっぽど苦しくならない限り金を惜しむ気はない。

 遠慮なく注文をつけてくれという言葉にジュビアは慌てる。


「そんな、娘が大変なのに満喫なんて」


「大変といえばそうですけど、かといって家に閉じ込めてずっと監視しているわけにもいかないでしょう。なら普通にさせていた方がいいし、楽しんだ方が気分も沈まない」


 今だって最近できた近所の友達と遊ぶため外へと出ている。

 子供らしくそんなにたたないうちに近所の子といつのまにやら打ち解けていた。

 まだ幼い少女を不安で押さえつけてしまうよりは元気に走り回っていてくれたほうがいい。護衛しなければいけないが、さすがに大人と同じようにずっとついて回られたら嫌だろう。

 自分の子供時代が少し暗かったこともあって、フレッサが重い事情を背負いながらも元気にしている姿にそのままであってくれと自然に願っていた。


「子供は元気が一番です。難しいことは大人が考えてやればいい、今はまだ、ただの子供として過ごさせてやりましょう」


「………、そうですね。ありがとうございます」


 にっこりと笑って言うルークの言葉に一瞬喉を詰まらせて頷くジュビア。娘をここまで想ってくれる彼に感謝ばかりが浮かぶ。


「それで、娘さんのことでまたひとつ考えなければならないことがあって…………」


 茶のお替りを注いでから別の話題に移り、その中でルークはジュビアへ手紙の内容を打ち明けた。


「魔力の覚醒、ですか」


「ええ、いつ起こるかわからないから出たら教えてほしいっていう手紙だったんですよ。でも俺は魔法なんて見たのはロズのものだけだし、知識がなにもないんで気づきようがないんですよね。ジュビアさんはフレッサがそれっぽいことしたこととか覚えてますか?」


「私もこれと言っては…………まずどんな現象なのかがわからないですし」


「そうなんですよね~…………」


 お互いにそこまで魔法に関して詳しくないので、変化がないかよく見ておくことくらいしかできることがない。

 ちなみにルークはあれか?と検討は付いていたが口には出さしていなかった。

 謎の森でのフレッサが起こした現象、あれがそうなのだろうか。とするとかなり目立つが、あれは突発的だろうからあまり判断基準にならないと思っていた。

 素人たちの相談の末、気になったことがあったらささいなことでも話し合うようにすると決めてこの話は終わらせた。

 丁度そこに飛び込んできた者がいた。

 この町の唯一の医者の息子であるライという少年だった。今はフレッサと遊んでいるはずだが、息を切らして挨拶もなくライはルークへ大変だと叫んだ。


「どうしたライ、フレッサは……」


「あいつ、フレッサ‼ 変なんだよっ、いきなり光って、コイルのやつ吹っ飛んで!」


 支離滅裂な説明に戸惑うが、嫌な予感がしたルークは最後まで聞く前にライを連れて家を飛び出した。


「ジュビアさんはここにいてください、確認してきますっ!」


「あの!?」


 返事も待たずに駆けだしてライの指示する方角へと走る。


(言った側からこれか!! たくっ!)


 子供の速度では大人に敵わないので途中からライをおぶさり走りながら尋ねた。


「今どこにいる?」


「広場のとこ。そこで遊んでたから」


「よし。それで? フレッサがどうしたって?」


「う、うん。遊んでたら、コイルたちが来て、よそ者ってフレッサのこといじめてきたんだ。言うこと聞かなかったから怒って、あいつのことひっぱたいて……」


「誰も止めなかったのか?」


「止めたよ! 俺も庇ったけど、ふっとばされちゃって………そしたらフレッサのやつ怒って、んで光り出したんだ。そしたらコイルたちが壁までふっとんで…、んで、なんかずっとキラキラしたままあいつ泣いてんの、みんな怖がってて」


「そうか、わかった。知らせてくれてありがとうな」


「あいつどうしたの? 止められる?」


 不安そうなライに、ルークはさあなと返した。


「わからんが、検討はついてる。努力はする」


 検討はついているが、解決策など全くうかんでなかった。相談したすぐに事態が動くなんて思わなかったのだ。

 努力はすると言いつつも、その努力が実るかは正直わからなかった。


(まったく、なんでこう次々と…っ!)


 トラブルは重なることが多いというが、こうもタイミングがいいと誰か計算しているのか?なんて疑問がうかんでくる。


「ルーク! あれ!!」


 ライの声にハッと先を見れば、異様な光が見えた。

 広場の中央に位置するそこでうずくまっているのはフレッサだ。話通り体が光ったままで泣いていた。髪に隠れて表情が見えなくともポロポロと落ちる涙が泣いているとわからせた。

 周りには誰もおらず、ライが言っていたいじめっ子だろう子供が一人壁際で倒れているだけだった。

 ルークはライを下ろしてそれらを観察し状況を把握しようと努める。


(体が光ってる、のはあの時と同じか。ということはあれが魔力なのか? あれはどんな状態なんだ? まず普通じゃないよな。だとしたらいつまでもここに居させるのは危険か…)


「ライ、お前は出来るだけ離れ……いや、帰れ。いいな?」


「ルークは? それにコイルが……」


「俺が助ける。たぶん気絶してるだけだ、安全な所に移そう」


「フレッサは? あいつどうしちゃったの?」


「大丈夫。ちょっとすごい癇癪ってだけだ。さあ行け」


 もたもたと引き返すライを見送ってからフレッサを振り返り、未だ泣いている少女にまずは呼びかけた。


「フレッサ! フレッサ!!」


「……、……っ……」


(ダメか…)


 声に反応もしない様子にルークは呼びかけを諦める。

 動く様子がないので、距離をとったままいったん倒れている少年の方へ寄り、容態を確認した。

 気絶しているだけで怪我などもなかった。抱き上げて離れた建物の陰に移動させる。

 そうして不安要素を取り除いてから、再びフレッサへと視線を向ける。

 泣き止む様子のない少女はいまだ輝きを宿したままでいる。それどころかたまに聞こえる嗚咽に合わせて少女の周囲に風の渦が発生し始め、ヒュン、ヒュン、と謎の風切り音を出していた。


「おいおい……」


 自分の中で警戒心が上がってくるのを感じる。何か危ないものがあると、長年の勘が訴えていた。

 これがアラン達の言っていた魔力の覚醒だとして、ルークにはどう止めればいいのかわからない。

 手紙を書こうにも家にあるため一旦戻る必要があるが、離れている間にフレッサに変化があったら気づけない。


(ああもうっ、なんでこう面倒くさいことばっかり!!)


 内心盛大に愚痴って、とにかくフレッサを落ち着かせようと少女の再びそばへ行くのだった。


毎度話がごちゃついてないか心配になります。

もっと国語力欲しい!

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