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勇者の親友はつらいよ  作者: シール
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プロローグ

勇者と魔王ものが書きたかったので挑戦してみました。夢が膨らみますよね!

ゆる~く読んでいただけるとよいかと。

どうぞよろしくです。m(_ _)m

たぶん不定期投稿です。


 そこは業火で囲まれた遺跡の地。

 もとは雄大な光景があったのだろうそこは、一カ所を残してほとんどが炎の中に消えている。

 その残っている一カ所では二人の男が剣を手に戦っていた。


 まるで劇の舞台のように表面に複雑に文様が掘られた大きな円盤の上で、彼らは対峙していた。

 円盤の外周には力尽きて倒れている人が何人もいる。彼らは数人を除いてほぼ同じ格好をしており、組織だった雰囲気を感じる。戦っている者へ顔を向けることもなく、全員が意識を失っていた。

 円盤と倒れた人々から5メートルほど離れた先は、全方向が炎に包まれている。その炎も青黒く、それ以上の広がりを見せないことから普通の火ではないのが明確にわかる。

 その中で、戦闘を続けている両者はいまだ倒れる様子はない。


「ハァッ、ハァッ…………ああッ!」


 苦しそうな呼吸を繰り返しながら、金髪の男は相手へ斬撃を繰り出す。もう片方の茶髪の男はそれをかわしきれないと判断したか、剣を盾に最小限のダメージだけを受けて凌いだ。


「ぐうっ………まだだ! まだ……っ……」


 正面から受け止めたせいで腕に浅くない裂傷を受けるも、依然茶髪の男の戦意は消えない。

 その様子に金髪の男のほうが苦しげな表情を見せた。


「これ以上、犠牲をだすなっ! 俺はお前と戦いたくなんかない!」


「ぁ……ハアッ………ハアッ、そ、れは……俺だって同じだ!」


 互いにもう戦いたくないと思っているのに、身体は正反対に何度も攻撃を繰り返し互いに互いを傷つけている。

 剣と剣。蹴り。拳がぶつかる音。

 体のすべてを使って攻撃しあう二人。

 凡人には対応できないような速度で何度も、何度も、両者は傷つけあった。


「もう止めろ! こんなことする必要ないだろ!」


 金髪の男が攻撃が止まった隙に必死に説得を繰り返す。その体は傷だらけで、剣を構えて立っているだけでも辛そうなのに、その表情は自分のことを気にしておらず、ただ相手に伝わってほしいと願うものだ。


(なんで、なんでこんなことに……っ。こんなはずじゃ…………俺のせいで………!!)


 悲劇に嘆く資格はないとわかっていても、友を巻き込み、こんな事態にしてしまったことに金髪の男は嘆かずにおれない。

 そしてそれは相手も同じだった。


「うるさい! こんな……こんな理不尽があってたまるかよっ!! お前らが黙ってたせいで、俺が守ってやれなかったせいで……あいつは…っ!!」


 悲しみに支配された涙を流して茶髪の男はギッと相手を睨んだ。悲しみと憎しみと後悔に苛まれてしまっている彼は、ぶつけどころを見つけ感情の丈を金髪の男へ向ける。

 同時に放った攻撃を今度は金髪の男が受け止める。

 至近距離でにらみ合う両者に、和解の言葉はもうない。

 一度距離をとって相手の隙をうかがう両者。

 目を離せないような状況にも関わらず、茶髪の男はふとひとつの方向に視線を投げた。

 視線の先では円盤から少し離れて設置された、石で造られた祭壇がある。

 業火が周囲を囲み、誰も助からないような空間にあるというのに、その祭壇の上ではまだあどけない幼い少女が静かに寝ていた。

 手を組んで仰向けに寝ているその姿は何かの儀式でも行っているような神聖さがある。

 なんの感情も出さない静かに眠っているその姿に、茶髪の男はふ、と優しい微笑を浮かべた。


「大丈夫さ………待ってろ、今迎えに行くから………」


 優しく、しかし強い決意を込めて、聞こえぬはずの少女へ呟く。

 そして自分たちが立っている円盤の中央部へ進み、丸くくぼんだ穴の側に立って今までの攻防でできた傷口から滴る血を腕を伝わせて穴へと落とした。

 同時に紡ぐ呪文。

 途端、地響きが始まった。

 それは絶望の合図で、希望の始まりで。

 一人の執念が生む、願いの結果を出すための現象。

 茶髪の男はそれを喜ばしげに笑う。


「やめろーーーーっ!!!」


 しかし金髪の男はそれを喜ぶことはない。

 必死の形相で、残る力を振りしぼって踏み込み、飛ぶ勢いで中心にいる相手へと突っ込んだ。

 彼にとってはこの現象は起こしてはいけないものだ。そのために向けたくもない相手にずっと剣を向けていたのだから。

 たとえ相手を殺すことになっても、それだけはやらせてはいけない。

 技術もへったくれもない、ぶん投げるように振り回しただけの無様な攻撃を、金髪の男は相手の心臓めがけて振り下ろす。

 その剣は――-------



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