スキル『バカって言うほうがバカ』を利用して世界征服を目指すバカ
バカな話でもいいよって方はお読みください。
「お〜い、リーナ!今日こそは負けないからな!」
お昼ご飯のすぐあと、バカみたいに毎日同じ時間に彼はやってくる。
「あんた毎日そう言ってるじゃない。いいかげんあんなアホなこと諦めたら?」
「うっせー、今日のは自信あるから覚悟しとけよ〜?」
彼と私は勝負・・・と言っていいのかどうか分からないが、毎日とある言い合いをしている。彼は案を述べ、私がそれを否定する。ずいぶん長いこと続けているが、一度も私は負けたことはない。
だって彼はバカだから。直接言いはしないけどね。いや、言えはしないの方が正しいかな、この場合。
彼はあるスキルを持っている。
『バカって言う方がバカ』
これが彼のスキルだ。効果はその名の通り、彼にバカと言った相手を彼よりバカにしてしまう。アホなスキルのように思えるかもしれないが、バカの彼だからこそ恐ろしいスキルになりうる。頭の良い人が持ってもたいした効果はないが、バカよりバカになればある意味致命的だ。
まあ、結局バカだからスキルを有効活用できないので、あまり怖くはないけれども。スキルも、相手がバカと言ったのを彼が直接耳にしないと発動しないのであまり使い勝手がいいものではないし。
それでも彼はスキルを使ってあることをしようと企んでいる。
世界征服。
うーん、これぞ The バカの考える夢って感じだ。
一応、万が一、深い理由がなきにしもあらずってこともありうるかと思い理由を聞いてみたが、「男のロマンだろ!」と返された。
聞いた私がバカだった。
彼が言うには、皆が自分よりバカになれば自然と自分が世界のトップになれるとのこと。うーん、この国のトップのこと知らないのかな?頭がいい人ならもうちょっとマシな政治してると思うけどね。
というか、世界がバカだけになったら世界征服どころか人類滅亡エンドしか見えないんだけれど。
さて、世界征服(笑)を目指す彼がなぜ毎日私の所に来るかだが、これにもスキルが関係している。とは言っても、彼ではなく私のスキルの方だ。
『スキル看破』
効果は単純、相手のスキルを見破るだけだ。これによって全人類をバカにするという彼の壮大な計画は始まる前に終わった。幼馴染の私にバレてるんだから。
ただ、王都にでも行かれて無差別バカテロでも起こされても困るので、私は彼にチャンスをあげた。私を納得させるような世界征服の方法を考えれば、彼に向かってバカって言ってあげると。
ご褒美がバカと言われることなど、明らかに変態だが彼はその条件を喜んで引き受けた。だってバカだから。
以来彼は毎日私に世界征服の案を告げてくる。今日もまた懲りずに。
「街中で裸で踊る!」
「捕まって終わりよ。」
「お金を渡してバカって言ってもらう!」
「全人類を買収できるお金があるなら世界征服意味ないでしょ。」
「バカって名前に改名して皆と友達になる!」
「改名できるわけないし、征服対象と友達になってどうすんのよ。」
「半日考えた俺の計画が・・・」
「ふふん、今日も私の勝ちね。」
「少しくらい手を抜いてくれたって・・・」
「嫌よ、私絶対負けないからね。また考えていらっしゃい。」
「くっそ〜、明日こそ勝つ。待ってろよ、逃げんじゃねーぞ!」
そう言って彼は走り去っていく。私は彼の背中が見えなくなるまで、ずっと彼を見つめた。きっと明日もまた来るのだろう。
「逃げるわけないじゃない。なんのために私と勝負するよう仕向けたと思ってるのよ。どうして毎日負かしてると思ってるのよ。いいかげん私の気持ちに気づきなさいよ、バーカ!」
これは、世界征服を目指すバカな男の子と、そんな男の子に恋をしてしまった素直になれないバカな女の子の、ちょっとバカげたお話。
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評価しだいで続き書くかもです。