『せいぶつ。』
『せいぶつ。』
人は何気なく生きている。
人は何気なく考える。
ふと考える。
自己の存在、他者の存在、関係性…
ふと、わたしは考える。
わたしは「せいぶつ」であると。
世界を俯瞰して見る力はなく、自己の視野からでしか物事を測れない。
わたしの感じる色はわたしにしか分からない。
わたしの感じる色の美しさはわたしだけのもの。
わたしの感じる音色はわたしにしか分からない。
わたしの感じる音色の美しさはわたしだけのもの。
他者への共有は不可能とされる。
ふと、わたしは考えた。
わたしの共有を可能にする方法。
そして技術は進歩した。
技術の進歩により、わたしは死んだ。
わたしのわたしが技術によって殺された。
そして社会は後悔した。
ふと、わたしは考えた。
わたしは太陽神であるということを。
わたしの力が殺されたわたしを生き返らせることを。
これは、近代社会における一筋の光である。
それは、天道である。
つまり、わたしである。
ふとわたしは考えた。
わたしは誰だ。
わたしはてんとう虫である。